ザ・グレート・展開予測ショー

もっと「守ってあげたい」<今日から俺は!!Ver.2>


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/ 8/22)

「シロ!ほら、お昼寝は後になさい。あんたらの部屋ぐらい、自分で掃除すんのよ!!」
美神令子に揺り起こされたシロは、しばらくボーっとしていた様子だったが、
「なんだか久しぶりに昼寝した気がするでござる。」
やはりボーっとしながら呟いた。起きたてで、感触に違和感を感じる手をしげしげ眺める。
「なんでもいいけど、あんた達は居候なんだから、掃除サボんないでよね!
おキヌちゃんに余計な負担をかけさせて、過労で倒れたりしたら誰が家事すんのよ!?」
一番家事を放棄してる人間らしい発言だったが、この女に逆らうだけ時間の無駄だ。
「昨日サボったのはタマモでござる。だから今日はアイツで……」
「そのタマモが、「シロの奴に代わりにやってもらって」って出てっちゃったのよ。」
顔や全身をふにゃふにゃさせながらシロは事情を説明したが、美神は取り合わない。
「えー?聞いてないでござる!」
「そんな事私に言ってもしょうがないじゃない。終わらせなきゃ部屋から出さないわよ。」
シロが勇敢にもブーたれると、美神はいつも通りか、はたまた稀有か、正論を言う。
そうして、シロは渋々掃除を始めた。美神は真下の部屋なので、互いに気配がよくわかる。
(あ〜あ、そろそろ先生の学校が終わる時間でござる。散歩行きたいなー。)
「くぅ、なんで拙者、大人しく言いなりになってるでござる?元々タマモが悪いのに。」
さりとて、元来生真面目な性分のシロは掃除はさほど苦手ではない。手早く片付けてしまう。
「まぁったく、クソ女狐の所為で遅刻しそうでござる。……あんにゃろう!!」
ドガッ
衝動的になって、あらぬ方向に蹴りを入れたつもりだったが、屑篭を蹴飛ばしてしまった。
「私が汚れたから言うわけでない事は承知してもらいたいのですが、感心しませんな。」
「……すまぬでござる、人工幽霊一号殿。」
人工幽霊一号は自分から口出しする事を好まない性格だったが、彼の人格形成は古く、
説教を始めると簡単には黙らなかった。実に掃除の3倍は時間を浪費したに違いなかった。
(全力疾走しかない!今日はいつもの散歩とはわけが違うんでござる。それなのにぃ!)
シロは昨日、師と交わした約束の事で頭が一杯だった。きっかけは――

「ふとしたきっかけから思うんだがな……シロ、お前の散歩の事なんだが…」
そう、きっかけは師がこんな話をしてきた事だった。シロは尻尾をぶんぶか振って聞き返す。
「散歩?なんでござる?1日3回ぐらいに増やしてくれるんでござるか?」
「イキナリ7倍か、おい!ってか四六時中散歩するつもりか?…そーゆーんじゃなくてだな、
お前はさ、生きがいだから良いだろうよ。けどな、俺には損こそあれ、得は一切無い。」
師、横島忠夫の言葉を受けて、シロはショックのあまり、目に涙をためつつうめく。
「うぅ、散歩に乗り気じゃないのは解ってたけど、それはあんまりでござる。
可愛い弟子と一緒にいるのは損なのでござるか?う、うううううぅぅぅ…さめざめ…」
「嘘泣きなぞ2度も通じん。まぁ聞けよ。今までの散歩は全部お前の好きなように
させてきた。当然だな、俺の希望を考慮すると帰る事になるから。だが、それじゃ俺に
不満が残る。そこで、お前の希望通りに行くんなら、お前の散歩に対する気概を確かめたい。
今度の散歩、お前が俺より先にスタンバッてなかったら今後散歩は全面禁止だ。」
横島はようするに賭けを持ちかけてきたわけだ。シロは急に張り切りだして言い放つ。
「そんなことなら!校門前まで迎えにいくでござる。」
横島はその光景に賭けの不利を悟るが、別に負けても失う物は何も無い。軽い口調で返した
「ほー、大きくでたな。楽しみにしとくぞ。」

肝心な日に限ってウトウトしてしまったのがそもそもケチのつきはじめだが、彼女の怒りは
とりあえず、ルームメイトの妖弧に向けられていた。その方が感情の処理が容易だからだ。
(おんのれタマモ!明日必ず成敗してくれる!!)
だが、疾駆する彼女の耳に、自分の内なる叫びと大差ない内容の会話が飛び込んできた。
「この辺で調子に乗ってた女弧な、どうやら四天刀の連中に捕まったらしいぜ。」
「馬鹿だねぇ。あいつらのグループに手ぇ出したら一匹じゃ歯が立たねぇのによ。」
(タマモの奴、人間に干渉してない野良妖怪相手に暴れてるのでござるか…)
シロはその会話が気になって走るのをやめ、歩きつつ、話し込んでる2匹の妖怪を観察した。
「なんだ、テメーは?」
「いや、別に。何でもないでござる。」
訝しがって訊いてきた片割れの妖怪に返事をしながら、視線は逸らさず2匹の横を通る。
「さっきっからなんなんだよ、いったい!?」
下等妖怪は精神構造が単純なのですぐに興奮してしまう。言葉と共にシロにつかみかかる。
「なんでもないって言ってるでござろうが!!」
バシュッ
「グギャァァッ!」
一方、高次な妖怪は相手に話が通じるか否か見極めが早かった。シロの輝く秘剣が妖を断つ。
「聞きたくなかったのに関ってしまったでござる。おい、そっちのお主!さっき女狐が
どうとか言っておったでござるな。その女狐って、タマモの事でござるか?」
シロは、相方を秒殺されて呆然と立ち尽くしているもう一匹に問い掛けた。
「タマモ?いや、名前は知らねぇ。つい最近ふらっと現れて好き放題騒いでた奴で…」
「そいつは、こーんな底意地悪そうな目つきで…」
と、言いながら、自分の目尻を指で引っ張って自分を睨むタマモを表現する。
「こーんな爆発なんだかなんなんだか解んない髪型……の若い狐でござるか?」
シロはタマモの例の九連ポニーテールを真似しようとして失敗しながら尋ねた。
「あぁ、確かにそんな感じだった。」
「ふぅん。そいつはタマモって言うアホでござる。
で、そのタマモが、いや、むしろアホがどうしたんでござる?」
「勝手な事ばっかやってやがって、昨日とうとうこの辺シメてる四天刀って連中の子分を
張り倒しちまって、半日ぐれぇ行方をくらましてたんだけど…さっき急に捕まったって…」
シロには全て合点がいった。昨日掃除をサボってそんなことをしていたのか。
事務所の結界内は招かれざる妖怪には捜索不能だ。
だが、美神に知られるとまずいので自ら決着をつけに行ったのだろう。
「まぁ、喧嘩なんて誰が悪いわけじゃねぇが、気の毒によ。四天刀と言や、頭の紅染百式を
はじめ、四人全員が刀のツクモガミで、全員揃ってる時は魔族より性質悪いらしいぜ。
ペインって潰れたパブにいるが、助けに行くつもりなら単独で乗り込むのは分が悪ぃ。」
そこまで聞いて、シロはのろのろとその場を立ち去った。胸中で呟く。
(知らん、でござる。そもそもあいつが蒔いた種でござる。自分で何とかするでござろう。
あいつだってそのつもりで拙者に掃除を押し付けたのだ。今日だけは……ダメでござる。)

「シロの奴、おらんじゃないか。……なんか忘れもんあったかな?」
「横島さん、帰らないんですか?」
「おぉ、ピート。そうかも知れん、先に帰ってくれ。」
「はぁ?」
「横島サン!帰り道に新しく出来たクレープ屋のバイトの子ナンパするンジャー!!」
「う!?ぐぎぎぎぎ……ほ…補習があるんだ。先に帰れぇぇぇぇぇぇ!!」
『ち……血の涙!?』
つづく

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