ザ・グレート・展開予測ショー

FORCES(3)


投稿者名:二エー
投稿日時:(01/ 8/21)

そいつの両腕を掴んでいたGメン二人が切り刻まれて床に転がる。血しぶきの中でそいつは本性をあらわした。その姿は・・・そう、このあたりでも夏になると大量発生する昆虫の虻そっくりだった。ただ違うのはそのデカさと、眼にあたる部分が無表情な昆虫のものでははなく、邪な意思をもった人間の眼球という点だろう。Gメン二人を切り刻み赤く染まった羽根を震わせている。西条達はそれを見てもうこいつの逮捕は不可能と判断したのだろう、散開、包囲して一斉射撃をはじめた。虻野郎の体から血が吹き出る。・・・効いてないのか?昆虫の顔で笑ってやがる。気色悪ぃ。だがこの室内+銃弾の雨の中では虻野郎も自由に飛んで回ることはできないはずだ。このまま弱らせて俺の文殊「滅」で・・・そういえばさっきやられた二人は?俺は虻野郎と俺達の間に倒れている二人を見る・・・まだ息がある!

「西条!銃撃を止めさせろ!あの二人にも当っちまう!」俺は今回のために用意した4個の文殊のうち2つに「治」の文字をこめながら叫んだ。

「駄目だ!今攻撃の手を緩めればヤツが逃げる!そうすればもっと多くの人が死ぬ。あきらめろ横島君!彼らも自分の職務は解っている筈だ!」

俺の頭の中であの時の光景がフラッシュバックする・・「私一人のために仲間と世界・・
すべてを犠牲になんてできないでしょ。」彼女はそう言っていた。またその理論か、もううんざりだ。

「西条・・やっぱりてめえとは一生仲良くなれそうにねえな。」

「なにをこんな時に・・・はっ、やめろ横島君!」

みなまで聞かず俺は二人の所まで駆け出す。走りながら3つ目の文殊に「盾」の文字をこめる。背後の銃声が止む気配は無い。さすが西条クン。良い判断力だ。俺は左手に文殊で作ったエネルギー状の盾を後ろにかざし、滑り込みの要領で多量の出血で痙攣している二人の傍にたどり着き文殊「治」を押し当てる。結果的に虻野郎を銃弾から庇う形になったが知った事か。後は最後の文殊であの虻野郎を・・・と、瞬間虻野郎が飛び掛かってきた!ものすごい力で手足を押さえつけられる。目の前では血を吸うときに使うあの長いのこぎり状の口がきしり合って耳障りな音を立てている。

「ふふふふべんだな。そそういうりょりょ良心をもももったにに人間というもものは?」

しゃべりやがった。その口の形で器用な野郎だ。そのまま4本の手足で俺を持ち上げ盾にする。コイツこんな姿になっても知性はそのままらしい。さすがに銃撃が止む。ひょっとしたらGメン二人を殺さず虫の息にしたのもわざと・・・?

こんな状況に陥ったとき警察はどうするんだっけ・・・そうだ、質問その他で時間を稼ぐんだったな。

「ア、アンタも人間じゃないのかよ?それとも本人と入れ替わった化け物か何かかよ?」
パクつきながらもどうにか言葉が出る。

「わわわしはわしだよ。ほほほんにんとにい入れ替わったったやつがななんでかかいしゃいんなんかやるひひひつようがある?」

まったくだ。だけどそれならコイツは元はどこにでもいる普通のオッサンのはずだ。一体どうやってこんな姿の化け物に?奥さんや子供は父の変化に気付かなかったのだろうか?ん・・奥さんや子供?

「じゃ、じゃあ何処でそんな人間を魔族にしちまうような力を?奥さんや子供はどうしたんだよ?まさか・・」

「つつつまにこどもか。わわしもまえはそそんなきずなや部下へのににくしみをも持ったああわれな人間だった。だだがああのかたたちにであってわわしはにに人間をこえたのだ。ももう過去や今を愁うことのないこ心とかか体をわわしは授かったのだよ!」

「てめえっっ答えになって無えぞ!奥さんや子供はどうしたって聞いてんだよ!」
いつのまにか俺は叫んでいた。

「ささ『捧げた』のだよ、わわしが神の1員になるにはべべへりっつっとと合わせてひ必要なことだったのだよ。」

捧げた?べ・・何?ともかくろくでも無い事だというのは直感で解った。だがそれ以上にこの時の俺は目の前の虻野郎に対する正体不明の憎しみで一杯だった。右手首は・・良し、動く。手の中の最後の文殊に「爆」の文字を込める。

「もういい、てめえと話をするだけ時間の無駄だ。」

そう言うなり俺は右手首を虻野郎に向け「栄光の手」を先の尖った筒状にして発動させ野郎の腹に突き刺す!―やはり効いていない。銃弾のような「点」を貫く攻撃では効果が無いのだろう。また笑いやがった。だが―これならどうだ?

「その顔で笑うとキショいんだよ、オッサン。」

右手の文殊を「栄光の手」で作った筒の中へと転がす。遺物が入ったのがわかったのだろう。俺を押さえつけていた四肢が一瞬緩む。俺は全身のバネを使い、野郎の体を蹴る。同時に自由になった左腕の「盾」を全開にする。

ズドウウウウッ

虻野郎の腹の中で文殊が発動する!爆炎で目の前が赤一色に染まる。Gメンの二人は・・大丈夫。盾の守備範囲の中だ。やがて炎が収まる。奴は・・消し飛んじまったらしい。元が解らない炭状のものだけが残っていた。それと・・なんだこりゃあ?アクセサリーか?

あの高温の中でも燃えずに残っていたそれは緑色のタマゴの形をしたものに目、口、鼻がいびつな形でついている―不気味なものだった。




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