ザ・グレート・展開予測ショー

サイコダイバー(その5)


投稿者名:ボヘミアン
投稿日時:(98/ 6/14)

長すぎたため二つに分けた後半です。


一方、その頃令子はイライラしていた。

ルシオラの探索をする令子だったが、成果は芳しくなかった。視覚化された横島の深層意識の形状がめまぐるしく変わり、これに合わせて霊波レーダーのスポット径、レンジ、方向を切り替えてゆく。まるで、砂漠を超低空で飛ぶスーパーセイバー(だったっけ?)のパイロット、風間真のような心境だった。
「だぁー! 一体どこにいるのよあの女!!!」
こらえ性のない令子にはこの辺が限界だったようだ。
「こらー! 横島!!!」
矛先は横島へ向かう。
「あんたいいかげんにしなさいよ。なんであたしがあんたの女を助けなきゃならないのよ!」
令子の八つ当たりの精神波が横島の深層意識にこだました。



アシュタロスに弾き飛ばされたルシオラが、彼から大きく距離を取ると体制を立て直す。かなり切迫した状況だ。起死回生の策でもない限りは逆転は有り得ない。その時ルシオラの目に横島の成長の元となっている卵が飛び込んできた。ルシオラの位置からアシュタロスを挟んでちょうど反対側に位置する。ルシオラは最後の奇策に打って出ることにした。
ルシオラは太刀を正眼に構えるとアシュタロスに向かって跳躍する。アシュタロスに向けて突きの姿勢を取るとそのまま加速をつけて突っ込んだ。だが、ルシオラと同等の機敏性とはるかに凌ぐパワーを持つアシュとロスは、まるで闘牛士のように身を捻って余裕でかわす。ルシオラがあれだけの勢いで通り過ぎれば、連続した攻撃は繰り出せない。
「とうとうヤケになったか。」
アシュタロスが余裕で振り返ると、そこには卵の殻を壁代わりに、岡ひろみが練習でする壁打ちのボールのように、両足で反動をつけアシュタロスに向かって飛び出そうとするルシオラがいた。
「まずい!」
「ルシオラ・山○線パーンチ!」
パンチでもないのになぜかこう叫んでしまうルシオラである。この攻撃、相手の意表と突くという点で確かにアイデアは悪くないとは思うが、反転する際に足場とするものがしっかりしていないと無残な結果になる。この時ルシオラが蹴った卵は運悪く台座に固定されていなかった。

ズベッ!

卵はルシオラと反対方向に蹴り出されるが、ルシオラには当初予定したほどスピードはつかなかった。
「へっ?」
ルシオラはアシュタロスまでは届かず、まぬけにも顔から落下してしまった。
「い、いたひ。」
ルシオラは鼻を押さえてうずくまる。アシュタロスにとって絶好の機会であるはずだが、彼はそれどころではなかったようだ。
「バ、バカモノー!!!」
アシュタロスは必死の形相で卵の落下地点に滑り込むと卵をキャッチした。
「はぁ〜。」
アシュタロスが安堵のため息を漏らす。だが、ルシオラにももう反撃の力は残っていないだろう。もはや時間の問題だった。

「こらー! 横島!!!」

アシュタロスが勝利を確信した時、横島の深層意識全体に令子の声が響く。横島の心が脅えたように震えた。

「あんたいいかげんにしなさいよ。なんであたしがあんたの女を助けなきゃならないのよ!」

再び令子の怒鳴り声が響く。今度は地震となって横島の心の底の二人を襲う。ついでにあちこちで小爆発が起きていた。
「この男、心底、美神令子に支配されているな。」
「ヨコシマァァァー!」
アシュタロスの言葉を聞いたルシオラが鼻を押さえたまま怒りの声を上げる。だが、ルシオラには怒りを持続させれるだけのエネルギーはなく、横島の意識騒乱が沈静化するとともに静かになった。
「これで終わったな。」
アシュタロスがつぶやくとルシオラを見る。ルシオラは鼻を押さえてうずくまったままだ。彼女の体が透けて向こう側がみえる。タイムリミットだ。アシュタロスは卵を持って立ち上がろうとした。その時、アシュタロスは気づかなかったが最後の小爆発が卵の台座の根元で起きた。アシュタロスの顔を影が横切る。
「ん?」
それはゆっくりとアシュタロスに向けて倒れてくる卵の台座だった。

ペチッ

台座は卵にぷち当たると卵にひびが入る。もともと光が漏れ出るような構造であり、決して密封されたものではないがアシュタロスの顔色を変えるのには十分だったようだ。
「し、しまったぁ・・・」
ペキペキと亀裂が広がってゆき、漏れ出る光の量が増えてゆく。ルシオラも異変に気づいて振り返った。

パシュ!

卵のからが消失、それと同時に台座も消え去る。柔らかい光が溢れ出ていた。中から現れたそれは背中に生えた白い羽を除けばほぼ人間と同じ形をしていた。傍らに立つアシュタロスは唖然とつぶやく。
「ばかな、殻の中でも成長していたとゆうのか・・・。」
アシュタロスとルシオラに見つめられながら、光に包まれたそれは真っ白な羽を広げるとゆっくりと舞い上がった。周りに光が広がってゆく。どんよりと薄暗かった意識の底が光で満たされた。
「今回は私の負けのようだな。仕方がない、もう一度出直すとしよう・・・」
アシュタロスはまるで砂で出来た人形のように崩れてゆく。ルシオラは朦朧とした意識の中でそれを、自分のよく知る人物に似たそれを見つめる。ルシオラはアシュタロスが光りに負けるように消えてゆくのも、自分の頬を涙が止めど無く流れてゆくのも気づかなかった。

「あれは・・・ わた・・・し・・・・・・?」

ルシオラははるか上空をゆっくりと上昇してゆくそれに向かって、まるで星をつかもうとする子どものように手を伸ばす。と、誰かがその手をがっちりとつかんだ。
「えっ?」
ルシオラが見上げると、涙でかすむ目にヨコシマの顔が飛び込んでくる。
「ヨコシマ・・・」
ルシオラは気を失った。



ルシオラが目を覚ますと知らない天井が目に入る。
「知らない天井だわ・・・」
ルシオラは見覚えのない部屋に寝かされていた。ベッドから起き上がるとため息を吐く。
「なんか随分寝てたみたい。」
「ああ、ルシオラさん気がつきました?」
そこへおキヌちゃんが入ってくる。
「ここは?」
「都庁の地下です。霊的治療にはここが最適だってことで。ルシオラさん、随分と消耗していますからしばらく安静が必要だそうです。ゆっくり休んでくださいね。」
ボーとおキヌちゃんの顔を見つめていたルシオラは、しばらくすると我にかえる。
「ヨコシマは?」
「無事ですよ。ルシオラさんよりも先に一度起きたんですけど、いま、事務所の方で寝ています。横島さんも安静が必要ですから。」
「そうなの・・・」
ルシオラはちょっと残念そうだ。おキヌちゃんの良心がキリキリと痛む。実際は、ルシオラの気力と体力が回復するまでは横島と会わせたくないと考えた令子が、「あんたは寝ているルシオラに変なことしかねないからね。」と横島を椅子に縛り付けたためここに来ていないのだ。疲れ果てて気弱になっているルシオラとあの横島では、間違いが必ず起こると令子の霊感が告げていた。
「と、とにかく、ゆっくり休んでくださいね。」
おキヌちゃんはルシオラの布団をかけ直すと、あたふたと部屋を出ていった。誰もいなくなった部屋でルシオラは上半身を起こすと膝を抱え込んだ。
「ヨコシマ、あたしね・・・」
そうつぶやくとルシオラは膝に頬をあてる。それっきりルシオラは何も言わなかったが、彼女の顔は幸せそうだった。



「う〜ん。」
西条が振動に目を覚ますとそこはタクシーの中だった。それにしても道が悪い。乗り心地は最悪だ。頭がクラクラする。
「お客さん、着きましたよ。」
黒いテンガロンハットに赤いセーターを着た運転手が声をかける。
「ああ。」
西条はそう答えるとまるで背中を押されたように車から出た。そこはどこかの海岸だった。遠くに戦国時代に建設されたような日本の城が見える。
「ここは・・・?」
「寛永十四年、西暦1637年の島原藩、原城近くです。」
「島原の乱・・・?」
ハッとした西条が振り返るとタクシーが消えてゆくところであった。西条はあわててタクシーに駆け寄るがタクシーは消えてしまう。虚空に運転手の声だけが響く。
「これはゲームですよ。十日後に迎えに来ます。その時まであなたが生きていれば元の世界に戻してあげます。だが、それまでにあなたが死んでしまえば、あなたの魂は私のものです。」

アハッハッハッ・・・・・・

運転手の笑い声が消えると同時に、反対側から時代劇の登場人物のような人々が現れた。
「おぬし、一体何者だっ!」
「なぜ、僕がこんな目に・・・」
西条はつぶやくが、君はそういうキャラクターなんだってば。
「答えれんところをみると、おぬし、キリシタンだな!」
答える間もなく相手はバラバラと刀を抜いた。
「だぁー! なぜ僕がこんな目に!」
だからそういうキャラクターなんだってば。

ビュン!

西条の鼻先を刀がかすめる。あわてて西条は切りかかる侍からダッシュで逃げ出すが、やつらも猛スピードで追ってくる。
「なぜだぁー!!!」
澄んだ空に西条の心の叫びが響いた。



つ、疲れました。これで「サイコダイバー」も最後ですが、ただ単にパクッているだけなのに、文章を書くことがこれほど労力を有することとは知りませんでした。プロ・アマを問わず、ストーリーを創作している方々、およびパクらせていただいた先生方々に敬意を表します。ルシオラ/アシュタロスはボケ役にはなりづらいキャラクターですね。ついでに風呂敷きは自分の能力外のところまで広げると後が厄介だというのが教訓です。本当に疲れた。最後に、こんな話に最後までお付き合いいただきましたみなさま、本当にありがとうございました。

書きかけた話に対する義理も果たしたし、よし、みんなから文句をいわれる前に・・・
「自爆っ!!!」

ちゅどーん!

「・・・今の爆発でごまかせたとは思えんが・・・」
おあとがよろしいようで・・・


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