ザ・グレート・展開予測ショー

GSキラー:track30[カノン〜Rimix「WILD・ARMS」〜]


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/ 8/18)

ゴーレムは自分と対峙している悪魔を観察していた。余裕のなせる技、本来なら
切羽詰った時にこそ必要な行動であったが、実際に窮地に立っても出来る者は少ない。
「単発式の携行ロケット砲…そんなモノでワシに張り合えるつもりか?」
「コイツを抜くからには張り合う気なんざ無いよ。一発で決めなきゃヤバイ。」
そう、2発撃つとなるとただでは済まない。自分も、周囲も。胸中で唱えるように思い出す。
≪零号装備はな、言ってしまえば究極の魔体が用いた火器のミニチュアだ。≫
≪んじゃ、威力もスケールダウンしてるんだな…なんでみんなビビッてんだよ?≫
≪こいつの正式名称は「アルバ・ローズ・マシンナリー・カノン」≫
≪「ARM」!キワモン揃いの<奈落(アビス)>でも持て余したキ印魔学者ローズの作?≫
≪確かに小型化に伴ってコンバーターも小規模の物だし、使い手の霊力の差も歴然だが≫
≪<奈落>を叩き出されるようなアホのこと…どんなオマケをつけてることやら…か≫
≪任務が任務だからな「アーム・カノン」の使用を許可するが、極力使うな≫
≪撃てば撃つだけ危険度が増すもんな…ったく、はた迷惑な奴だ。≫
≪あぁ、パッヘル・ベル・アルバ・ローズ…生まれついてのテロリスト。お前と同類だ。≫
その時の会話は、この言葉に自分が絶句して終わった。そう、この引き金を引けば、十中八九
破壊を撒くと同義である。確かに、自分は生産的な性分ではない。それはよく解ってる。
(だからって、いきなり街一つ消せる火力+αを無駄撃ちする気なんて起こんないよ。)
無論の事ながら、自分自身にかかる負担も相応となる筈だ。撃つならそれは即時決着。
「勝つにしろ、そうでないにしろ…ね。西部劇風に言うなら、「カウント3で早撃ちだ」」
「ほう?……興味深いな、その勝負受けよう。正々堂々だかなんだかで、な。」
悪魔ベスパは、自分に言い聞かせるつもりで呟いたが、ゴーレムは色よく返事をした。
『3!』

――指先を空に翳し西の風を頼りに歪んでる地平線越えて行こうよ
「あの時までは、私達は永遠を信じていられたんだ。1年の寿命も、10コマンドもあった。
でも、そんな狭い意味なんかじゃなくて、私達は一つの魂から生まれた三つの心だから、
私達のカタチが朽ちても、私達は永遠に一緒だと、なんとなく……信じてた。」
其の時其の場所に戦う意味在るなら無くす事恐れずに飛び出して行く――。

『2!』
ガキン
ベスパがセーフティを外し、それを音で確認したゴーレムは深く身を屈めた。

――幾千の赫い影達斬りつけたこの腕で戦う気持ち抱きしめ始まる未来、その鼓動感じて
「でも本当はそうじゃなかった。そうじゃなくなった。一匹の人間が現れた。
人間にしては弱くない…けど、私達に比べたら…比べようも無いくらい小さなそいつが、
砂粒みたいな小者が、規則正しく回っていた私達の運命の歯車に紛れ込んだ。砂を噛んだ
歯車は、二度と正常に噛合わなかった。私以外の二人の歯車は迷走した。」
誰だって本当は誰の事も傷つけたくないと思っているけど――。

ベスパは体中で霊基構造がざわつくのを感じる。ゼロの宣言に備え、トリガーに指をかける
『1!』
ドギャッ、ジャギギギギギギィン、ブワァァァァッ
ゴーレムは0コールを待たずに飛び出し、左手から鎖を撃ち出して地面を掬うように薙いだ
「クックックック、屈辱だろうて?こんな嘘や目晦ましを使う相手に敗北するのは!」
ABMランチャーの爆撃が生んだ足元の砂塵が舞上り、互いの姿は影でしか捉えられない。
ザギッ、ジャグッ、ズギャッ、ドギャッ
「どうだどうだどうだどうだぁぁ?決闘?勝負?甘っちょろい事言ってんじゃないぞぉぉ!」

――守りたい大切なモノ、あるなら自分にさえ抗うのだろう生きてる今其の全てで
「私は狂っちゃいない。私は暴走したフリをしてただけ。私だけ大丈夫だった。…嘘。
本当は誰も狂っちゃいない。ただ、立ち止まってちゃいけなかっただけ。前に進んだだけ。
それぞれの居場所が天地魔界に散らばったって仕方ない。私達は同じ処から生まれても、
心は三つ。行きたい場所も、欲しい未来もみんな違う。希望を運ぶ西の風を求め…」――。

「ファハハハハハハッ!倒れる間も無くくたばったか!?さもありなん!!なにしろ…」
「0!!そろそろこっちからもいくよ。気は済んだかい?」
サアアアア
砂塵が吹き散らされ、ゴーレムの哄笑をせき止めた声の主、ベスパが無傷で姿を見せた。
「バ…馬鹿な!有り得ない!!ワシは確かに手応えを感じたのに!?」
言いながら、ゴーレムはその五指を束ねた切っ先でベスパに挑みかかった。白銀が舞う。
ガキィィィィン、ピシビキパキ
「解んない奴だね。用も無いのに借りたりするもんか。
敵の攻撃を…片っ端っから払い除ける為に必要だったんだよ!!」
砂塵に飲まれている間に、左手に移し持っていた白銀のバイザー。これが、ゴーレムの斬撃を
悉く受け止め、最後の一太刀に至っては、ゴーレムの掌を砕いて弾いた。ベスパは構える。
「な…!ワシの手が、そんなちゃちな髪飾りなどに?」
ズギョギュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッドッゴォォォォァァァァァァァァァッ
「クイーンは12番で妖蜂は十体。一人足りないだろう?最後の切り札は此処さ。コイツを
斬ろうったって無駄さね。私ら姉妹で、一番頭が固かったんだか……らぁ?」
ドサッ
敵が完全に滅却したのを確認し、ベスパはその場に座り込んでしまった。想像以上の疲労だ
【エクストラステージ・ベスパの待機命令:待機ポイントに帰還不能によりベスパ・失敗】
――「後ろを振り向く必要は無いんだ。私達、死別は永遠じゃないから。姉さんは近い
うちに帰ってくるから。振り返ってたら希望(まえ)を見失ってしまうから。」――。
「大丈夫。もう、独りにはなんないよ。」
つづく

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa