ザ・グレート・展開予測ショー

GSキラー:track29[shakin’edges&smokin’barrels]


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/ 8/17)

西条輝彦は廊下を歩いていた。一刻を争う事態に巻き込まれながら、走らずに歩いていた
理由はさほど大した事ではない。要するに、これから戦闘が想定できていた為、疲労を極力
避けようと考えた結果であった。「急がば回れ」自分に出来る範疇で最善を尽くす為には、
冷静になる事と先を見据えて余力を蓄えておく事は必要最低限の条件だ。そこへふと、
「!?」
シャッ、ザギギギギギギィィィン
「逃がすものかよ…潰してくれたワシの目の分、償わせて償わせて償わせてから
殺してくれる。簡単には死なせん。心臓が止まっても無理矢理動かしてまた殺してくれる。」
背後からの襲撃を気取り、横に跳んだ西条が見たものは、先ほどの剣のゴーレムだった。
「しつこいね。僕の経験に基づく忠告をお聞かせしよう。諦めが悪いのとしつこいのとは
微妙にニュアンスが違う。月並みで恐縮だが、しつこいとガールフレンドができないよ?」
「わざわざ必要ないと答える事の方が、必要無さそうだな。せいぜい……苦しめ!」
ガッギャギギギギィィン
痩躯のゴーレムの腕が不気味な輝きを見せた一瞬の後、西条の剣が疾り、何かを絡めとる。
「苦しめ?遠慮させてもらうよ!なるほど、目にも止まらぬ高速で撃ち出す鎖状に
連結した刃…ん?そうか、(鎖)チェーン・(刃)ソー。肘のソレを撃ち出してたのか。」
「人間の分際で見切るとは、な。だが、見切ったからどうだというのだ?ワシの腕は二本だ」
ビュウオンッ
「僕もさ!」
ジャコッ、ドンッ
振り上げられたゴーレムの右の刀、いや腕を、西条は左手で引き抜いた愛用のハンドガンで
撃ち弾いた。大切なのは冷静に対処する事だ。慌てればそれは焦りに、焦りはミスに繋がる。
「愚かな…銀の銃弾などではワシのボディは傷一つつかん。残弾が貴様の寿命だ。」
「へぇ?僕のほうは、あと二発で君を仕留めるつもりだ。僕の方が長生きだね。」
「ほざけ!やれるものなら……」
ドンッ
「その台詞はナンセンスだよ?」
ゴーレムの右肘の内側に、銀の銃弾が深く大きく食い込んだ。関節を狙えば弾かれない。
「…考えた事については評価してやってもいい…だが、ダメージには全く足りん。」
ヒュウッ
再度、ゴーレムの右腕が振り翳された。その瞬間、西条は剣を滑らせるようにして、
ゴーレムの左腕を弾き飛ばした。ゴーレムは構う事無く、右手で西条を刻むべく動いた。
ゴウッ、ドンッ、バキィィィィン
「な!?ワシの…ワシの、この地上でこれに勝る剣など無い筈の無敵の腕が……?」
西条が予告した銃弾で、千切り飛ばされた自分の右腕を、ゴーレムは見つめるしかなかった
ザシュゥゥゥゥゥゥゥゥッ
「確かに君には、霊能力が通用しないし、地上最硬の存在だ。それは認める。だが、それに
頼り切っている。僕の武装は対人戦闘にも耐える。Drカオスのマリアならもっとだ。それと、
最も致命的なのは君が、創造されたばかりで世俗に疎い事だ。常人には知名度の高い
曲射だった筈だよ。ピンホイールショットといってね、食い込んだ銃弾の尻めがけて次弾を
撃ち込んで押し込んだんだ。言った筈だ、「死にたくなければ僕とは戦うな。」」
ゴーレムを一刀の元に切り捨てながら、西条は淡々と語った。しかし、まだ終わらなかった。
「やれやれ、熱烈な歓迎を受ける事になったものだな。トータルで4人とは、ね。」
(いくら僕が横島君より強くても、3対1ってのは了承し難いね…どうしたものか…)
ヒュガッ、ズガァァァァァン
先に仕掛けたのは、意外な事に西条だった。今しがた倒したゴーレムの腕を投げつけた。
その鋭利な腕は3体のうち1体、唯一の巨漢ゴーレムの胴を貫通し、一撃の下、爆裂四散した。
パチリ
この隙に西条は電灯のスイッチを探し当て、歩み寄って即刻オフにした。数の暴力に
武力で対抗するにはゲリラ戦法が最も妥当だと判断した為である。しかし、西条の計算には
大きな見落としがあった。即ち、先程の復讐者が盲目になりながらも自分を追跡できた謎。
彼らは五行を形作る星の一欠けら、「金」の頂点に立つ存在。同じ金属という属性を持つ
西条の霊剣ジャスティスを探知する事が可能なのだ。勿論、人間である西条には呼吸音、
心臓の鼓動音というハンデもある。皮肉な事に、暗闇は西条にのみ牙を剥いたのだ。
彼の首めがけて痩身のゴーレム達がその腕を振り下ろした。
ヒュォンッ、シュパンッ、ザグンッ、ドシュッ、チャキッ……パチッ
再び明かりがつくと、そこに現れたのは愛刀を鞘に収める西条の姿と、その足元に転がる
無数の白銀の欠片。全て西条の読み通りだったのだ。敵は(どういった方法でか不明だが)
視覚に頼らずにこちらの居場所を突き止めることが出来る。だが、こちらもまた、敵の
斬撃が空を裂く音によって、敵の居場所がある程度把握できる。無論、僅かに遅れて。されど
西条は2対1でも自分の方が圧倒的に剣速が迅いと確信し、敵が防御などせずに、油断して
無策に攻撃してくるようにわざと不利な戦場で戦う方が、2対1で泥仕合になるよりも
勝算があると悟った。結果は前述の通りとなった。表情が多少引きつりつつも西条は言う。
「だから……硬いと言ってるんだ、さっきっから!硬過ぎる!!う…腕がぁぁぁぁぁ!!」
びりびりびり
【最警戒区画の戦いNo.1:一か八かも冷静な計算の結果。西条・勝利】
つづく

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