ザ・グレート・展開予測ショー

横島クンは神になれるのか?〜その35〜


投稿者名:sauer
投稿日時:(01/ 8/17)

 ……のどかな風景だな…コレが仕事じゃなけりゃ、いい息抜きになったんだろうが……
 俺は美神さんの後について、のんびりとそんなことを考えていた。
今回の仕事は、とある『森』(…と言うよりは『山』と言ったほうが正しいか?)の中に、
最近突然出現するようになったという『悪霊』の除霊だそうだ。
「…この景色見る限りでは、別に『そんなもの』が居るようには見えないんだけどな…」
俺は思わずポツリと呟いた。おキヌちゃんがこっちを見て、ちょっと不思議そうにした。
軽く笑って『何でもない』ということを伝えると、俺は再びこの景色に目をやった。
別に、それほど美しいという景色でもない。けど、何て言うか…
この、森に囲まれた小さな村が、ものすごくいいんだ。上手く言えないけど…
 気のせいだろうか?最近、どうもこういう自然が残っている風景を見ると、ひどく心が落ち着く様な気がする。
そう思いながら、今回の仕事の依頼人である、この村の『村長さん』の家へと続く道を進んでいく。
この道も、アスファルトなどの地面とは違い、普通の砂利道だ。
そして道の外側は畑になっており、ちょっと向こうには田んぼも見える。
また、道と田んぼに挟まれる様に流れている、溝(多分、田に水を引く為の物だったのだろう)。
その中には、タニシやカエル…もっとよく観察すれば、沢蟹やドジョウなども見つけられることだろう。
…懐かしい感じがする…昔は結構よく見かけたんだけどな…街に住むようになってからは、一寸見てないからな…
そういや…昔こういうトコに、銀ちゃんと一緒にザリガニ取りに行ったことがあったっけ…帰る途中で夏子に会って…
『うちを連れて行かへんっちゅ〜のは、ど〜ゆ〜事やぁ…?』
…って言いながら、俺だけボコボコにされて…懐かしいなぁ………
 俺が一人で勝手に物思いにふけっていると、いつの間にか周りに居たはずのみんなが居なくなっていた。
「横島――っ!置いていくわよー?」
「こらっ!!タマモ!置いていくなんて薄情な事を言うなッ!!……せんせ〜っ♪はやく〜!」
…おっと、置いてかれちゃ〜困るよな。
「悪い悪い、待ってくれよ…!」


 …横島さん、大丈夫かしら…?
私は、いつもなら彼が持っている荷物を背負いながら、しきりにそればかりを考えていた。
先程から、彼の霊気が更に高まっているのを感じる…このままでは、本当に後二日もつかどうか…
私は、この消えることの無い不安を、今のところは何とか押し殺しているけれど…
最悪の場合、私は横島さんの霊基が完全に暴発(あまり適切な言い方ではないわね…)する前に、
神界へと連れて行って、彼の肉体と魂から、ほぼ霊基のみの身体にするための『仕事』を済ませなければならない。
「(だけど………)」
私は、後ろにいる横島さんに目をやった。
彼は、今とても生き生きとしている。…とてもじゃないけど、今連れて行くわけには…行きそうも無い。
………はぁ、と溜息をつく。…けど、すんなりと『神』になるより、こっちの方が…
何か、ギリギリまでトラブルに巻き込まれたりしている方が、横島さんらしい………
そう思うと、はぁ、ともう一度溜息をつく。しかし今度は 先程のそれと違い、微笑が加わっている。
「(・・・あ〜あ、こんな風に考えてしまうとは…竜神族の一員としては、失格ですね・・・)」
そんな事を考えていると、はっ、と『ある事』を忘れていた事に気がついた。
半ば慌てて横島さんの方に歩み寄る。
「横島さん、大切な事を忘れていました」
「…は、小竜姫様…。何です?大切な事とは…」
突然話し掛けた所為か、横島さんは一瞬だけピクン、と大きめな反応をすると、ゆっくりとこちらを向いた。
「…えぇ、実は…貴方の今現在の霊力についてなんですが…」
「…はぁ…異常に高まってますけど……?」
「えぇ、それはわかっているんです。今、わたしが言いたいのはそう言う事ではなく、もっと具体的なことです」
「具体的?」
横島さんが、先程よりやや真剣みの増した表情で応じる。私は彼の反応に十分に満足し、続けた。
「そうです。…そうですね、はっきり言えば…このお仕事に『文殊』は使わない方が良いですね」
「えっ!?何故?」
「『文殊』は…一つ生み出すだけでも、大変霊力を消耗します。しかし、今の貴方なら、そんな事を気にする必要はありません…
 なぜなら、霊気は十分満ち足りていますし、全体的な霊能力もかなり上昇しています。ただ…」
私はそこまで言うと、ちょっと横島さんの表情をうかがった。…無言で続きを促している。私は肯くと、更に続けた。
「…ただ、貴方の霊力は、今のところは大変不安定な状態にあります。たとえ『文殊』を生み出したとしても、
 全く役に立たない物が出来上がるか…あるいは、とてつもない威力を秘めた物が出来上がるかのどちらかです。
 それらを考慮すると…『文殊』は、今回の仕事では使わない方が良いでしょう……危険ですから。
 …あ、『霊波刀』や『栄光の手』なら、おそらく大丈夫だと思いますよ。
 あれは制御が比較的簡単だから………(…それでも、普通はかなりの才能を必要とするけど…)」
とりあえず、私の言っておかなくてはならない事は彼に伝えた。
「………要するに…『文殊』は使わないほうが良い、そういうことですね?」
「はしょれば、そういうことです」
「…はぁ…わかりました、きつそうだけど…御忠告、感謝します、小竜姫様…」
彼はそう言うと、ちょっと髪の毛をくすぐりながら、苦笑した。
「いえ、これくらいは当然の事ですから…」
私はそう言って横島さんを見つめた。
・・・今の私の言葉は、正確には老師に言われた通りのことを言ったまで…しかし…
 横島さんの『文殊』を、この極限まで増幅した霊気から作り出せば、どれほどの威力があるのか…?
 興味深い事ではあるけど…それは、彼が『神族』としての修行を始めて、自分の霊力を
 使いこなす事が出来るようになってから、じっくりと見せてもらえばいいか・・・
一瞬そんな事が脳裏をよぎり、私は軽く頭を振ると、横島さんを後ろから追いかけた…



―――戦闘シーンの予定だったけど、コレが何となく書きたくなったので、プラン変更しました(←この嘘つき!)
 …あぅ…ど〜でした?(どきどき…)それから、今回一寸だけあった『夏子』さんは、
 hazukiおねぇちゃんの設定を使わせていただきました。おねぇちゃん、許可ありがとう!
 で、今回戦闘シーンを期待された方、ホンット〜に申し訳ありませんっ!!(ぺこぺこ…)
 ヘタしたら、次の次くらいになります、戦闘シーン………(滝汗)
 とっ、とにかくっ!(誤魔化し)今回も読んでくださった方、ありがとうございましたっ!

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa