GSキラー:track28[アゲハ蝶]
投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/ 8/16)
少女は何の抵抗もなく吹き飛ばされた、不自然なほど自然に、激流にさらわれるように。が、
ヒラ、ズダダンッ
「……失敗しまちた……お腹をちょっとすりむいちまいまちたぁ!」
「アホ!紙一重じゃ駄目だっていっといたろーが!!」
「え?え!?なにがどうなったんです?」
自分の腹部に唾をつけるパピリオ、頭を押えてかぶりを振るヤーム、パニくるおキヌ。
「つまりな、胡蝶神剣の元々の目的は防御を主眼に置いた剣術なんだよ。あのクソガキは
生れつき戦闘能力がずば抜けてる事が災いしてか、自信過剰で短気な性分の所為で、
防御がまるでスカだからな。そこで、胡蝶神剣の真髄、静の太刀の出番ってな。」
「はい、解説お願いします。」
おキヌがヤームの言葉を促すと、ヤームはやおら無意味にポージングしながら語りだす。
ビシッ
「オウ!段取りとしては最初に自分のみに作用するように毒リン粉を調合する。効果は
精神安定。こうして自分の闘気を断つ。普通、敵に向けて剣構えながら闘気を完全に
無くすことなどどんな達人にも不可能。そこで、この方法で自らの気配を断った状態なら
どんな相手の気配も鮮明に把握でき、同時に無駄な力を一切省いた「牙剣」の要領で
敵の攻撃に対抗せず受け流す。この奥義を用いた剣士は、さながら舞い散る木の葉…いや、
風に舞う羽毛の如く捉え難く、捉えたところで手応えは決してない。」
「…どこで憶えてきたんです?」
「うん…まぁ…小竜姫様からの聞きかじりだな…」
ポーズのまま硬直して、おキヌの疑問に答えるヤームの背中に哀愁が見え隠れした。
ビュゴウッ、ヒラ
「…っとぉ!……それにしたって受けてばっかじゃ勝てまちぇん……離れなちゃい!!」
「…あのウマシカチョウ…禁術かますつもりか………聞いての通りだ、行こうぜ。」
「そう言えば、私、地下牢を目指してたんだわ。」
「そ、そーゆー事なら任せるんだな。」
走り去る三人を気配で確認したパピリオは、その成り行きと、何より自分の「気取り」の
絶好調ぶりに満足すると剣を構え直し、気持ちを引き締めた。
チャキッ
「胡蝶神剣・外法『揚羽』面倒臭いから一気に片づけまちゅよ!」
ザァァァァァァァァッ
パピリオの眷族達。その集団の外観たるや、極彩色の洪水と銘打っても足りぬほどである。
それらが戦場を蹂躙した。と、いうよりも、蹂躙しかしなかったというほうが的確である。
それらはひとしきりその姿を見せつけ、舞い遊ぶように飛び回って通り過ぎた。
ガチン
リン紛の為、未だ視界は濁ったままの空間に、パピリオが剣と鉄ごしらえの鞘を
打ち合せる音が響いた。彼女はそのまま呼吸を整える為に一拍ほど間を置いてから跳んだ。
「『揚羽』の壱、「流星」」
ギャリリリリリリリリリリリィィィィィィィィィィィッ、ドグオォォォォォオオン
粉塵爆発。はっきりいってしまえばこれが禁術になった理由は広範囲無差別破壊のみで、
神族レベルからすれば、特別どう強力だとかそういう類の技ではない、ここまでは。
「弐、「陽炎」」
ザグッ、ザシュッ、ドシュッ、ズギャッ
熱量をエネルギーとし、妖毒から逆走査され、彼女の「質量ある残像」が生まれる。
「参、「星屑」」
パキィィィン、バキピシピキ、バギョオッ
熱量が空気中から急激に減少し、燃焼時に発生した水分が凝結する。
「死、「黒揚羽」」
斬ッ
熱疲労を起こして脆くなっている敵に、今まで抑制していた全ての殺気を込めて、
主が放つ瘴気に飲まれて虚無色となった昏い刀身が刺し込まれた。舞が途切れた。
ドグシャァァァッ
ゴーレムの巨体が、細切れになって地に伏した。彼女の口から言葉が漏れる。
「パピリオに裏技まで使わせるなんて…大した奴でちゅ。…っちゅーか、あんなに死ヌル
思いまでして習得した胡蝶神剣がこんな相手に全貌を晒す羽目になったのが問題でちゅ
…パピリオがこーやって地上の面倒事を片づけてれば、近いうちに逢えるよね。…ちゃん」
【エクストラステージ・パピリオのトライアル:成長したパピリオ、圧勝】
つづく
今までの
コメント:
- 今回やたら短くまとめちゃったな。ほんとは三人が離れるところはもう少し引っ張る
つもりだったんですけど、内心の葛藤とか表現しようとしたら下手すぎて
カットしたんですよ。(俺って所詮ドカーンって暴れてオリャーって決着つけるしか
能がないのか)やっぱ一話に一人づつじゃ遅すぎるかな。あと…野郎が好評っぽいので、
決着編は男・女・男……ってローテーションにしようかと模索中。あと、この話以外で
長編のネタが大分溜まってきました。これ一本を集中すべきか、早く皆さんにお目に
かけるか微妙なところ。タイトルは「もう一度だけストレンジャー・ザン・パラダイス」
あるいは「北の国から「もののけ姫」」それか「栄光の魂(ソウル・オブ・グローリー)」
ヘタな鉄砲も数うちゃ当るか?(数撃ってっと死んでしまうわ) (ダテ・ザ・キラー)
- パピちゃん語可愛いです・・・うっとり(はぁと)
長編のネタですか〜、すごいですね〜!(うっとり・・・)
しかも題名からなんか楽しげなものを感じる・・・(どきどきっ)
・・・がんばってください!!(←握り拳をつくりつつ) (sauer)
- 戦闘シーンが上手いの一言。
上手いですよねぇ。(粉塵爆発・・・?←いえ、何でも)
なんだかんだと言いつつも大して苦戦せず勝利するパピちゃんが素敵です。次回も期待。 (sig)
- 戦闘シーンはもちろんですが、それ以上にパピリオの最後の一言が・・・凄く良かったです・・・面白かったです。 (AS)
- 粉塵爆発って言うんじゃなかったっけ……またでた!漫画のうけうりで話考えちまって、
…それよか説明不足なのは「陽炎」ですな。つまり、リン紛の妖毒は三姉妹が元々
一つだった証。そこへ炎をぶち込んで原初の姿へ返す。(世界の始まりは炎に
包まれていた)そこから再構築し、ルシオラの幻術を、光を炎で代用して再現。
その炎の元となってるリン紛はパピリオの妖気を帯びてるので物理的には有り得ない
質量が生まれ…(実はガンダムF91にインスパイアされてるんですよ)……る…。
「陽炎」は必要な設定でしたが、質量の話はさておいて幻術を選んだのには思わくが…
この続きはベスパパートの方で…多分…。
(今まで言わなかったのは語るべきか迷ったから。)
まぁ、「黒揚羽」が禁術になる理由は言うまでもなく邪なる力だからです。 (ダテ・ザ・キラー)
- 粉塵爆発についての概要は以下あたりを参考に。
http://www.hosokawamicron.co.jp/line-up/index3/contents/132/main.htm
(粉塵爆発対策について/ホソカワミクロン株式会社)
……最早剣術の域を超えているような気がする。まあ格好良いからいいか。 (Iholi)
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