ザ・グレート・展開予測ショー

NERVOUS BREAK DOWN!!(7)


投稿者名:ブタクリア
投稿日時:(01/ 8/12)

風も無いほど静かな夜は、耳鳴りの音がやけに気になり逆にうるさいモノだ。
雪之丞は昼間破れた一張羅より、数段良い生地のスーツに
情けなさを感じながらも中庭で周りの気配に、文字通り気を配っていた。
(・・・フンッ)
眠気覚ましに缶コーヒーを買ったものの、昼間の出来事で精神が興奮状態にあるのか、必要ない程目が冴えている。
(チッ・・・ヒマだ)
この男の性格上、こういった役まわりは確かにヒマを感じるだろうが、興奮状態と相まって、ハタから見ると、まるで終業チャイム10分前の学生のようだ。
(ん?)
誰かがくる。
『・・・雪之丞さん』
胡紅が縁側に姿を見せた。
『眠れねぇのか?』
『・・・はい』
(無理もねぇか、ダンナがあんなことになったんだもんな)
『アンタ、コーヒー好きだったよな?』
『あ、ありがとうございます』
雪之丞は手渡してから「眠れなくて困ってる人間にコーヒーはなかったな」と思った。
カ゜シュ
静かな闇に缶コーヒーを開ける音が消えてゆく。

夜の闇というのは人間の心に様々な変化をもたらす。
時として、安心、安堵といった柔らかな感情も。
静寂の闇での、柔らかな空気、これは2人にとって心地よい空間であった。
『あ!すみません、私ばかり飲んでしまって・・・』
胡紅は飲みかけの缶コーヒーを手渡す。
『いいのか?』
間接キスなど意識するほど青くはないが、胡紅をからかうように雪之丞が聞いた。
『あ、別に・・・病気ぐらい・・・』
(うつってもかまわないってか? 俺が病気持ちだとでも? フンッ笑えねぇジョークだ)
口にグイと流し込む。
『・・・うつってもかまいませんよね?』
ブーーーーーーーーーーッ!!!!
雪之丞は思わず口の中のコーヒーを噴霧した。
『あっ!すみません!ほんの冗談のつもりで・・・』
『か、顔に似合わず なかなかのブラックジョークを言うじゃねぇか』
『あ、はあ、すみません・・・』
『・・・フンッ』
少しの静寂。
『ゆ、雪之丞さん』
突然胡紅が身を寄せる。
『私、恐くて・・・』
雪之丞はどうしたら良いものか解らず、胡紅の顔を見る。
『雪之・・・』
夜の闇がそうさせたのか、胡紅が唇を重ねてきたので、雪之丞はどうしら良いのか解らなかったが、2人は、溶けかけのチョコのようなキスをした。



『・・・フンッ』
胡紅も自室に戻り、また1人。
月明かりに照らされながら雪之丞は、親指で唇をぬぐい、
ペッとツバを吐いた。

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