ザ・グレート・展開予測ショー

GSキラー:track27[A・piece・of・myself]


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/ 8/11)

―何時からだろうか、死地でこそ、自分が輝くと感じるようになったのは?―恐らく、
自分は今、気絶してる。漠然とそう思う。先程まで自分と殴り合っていた巨人の姿が無い。
(気絶…だと助かるな。最悪、もう死んでんのかも知れねぇ。…大して違わねぇか…。)
敵に敗北し、抵抗できない状態。どの道このまま死ぬ以外、自分に未来は残っていない。
(誰かに負けて死ぬなんざ考えた事も無かったな…誰よりも強くありたかった…だから)
自分以外何も無い暗闇に、あの決断をしたときの音が、瑞々しく甦ってくる。

「ぐぁぁぁっ!?」
ビシビシビシ
「じーさん!」
「じっとしてなさい雪乃丞!あんたがいってもどうにもなんないわよ!!」
「ふざけんな!気にいらねぇジジィだったが、アイツは俺たちを庇ってやられたんだぞ!?
あんなモン見せられて、だまってられるような奴は男じゃねぇ!!離せ、勘九郎!!」
「フフ、人の身でこれほどの憎悪を叩き込んでくる奴はそうはいないわ…見どころアリね」
「ナメてんじゃねぇ!ブッ殺してやる!!」
「『殺す』?ボウヤねぇ…そんな臆病者の台詞を吐いてるうちは、なめられて当然よ。」
「!」
「なんなら試してあげましょうか?私は何も抵抗しないから、殺してごらん。」
「挑発に乗っては駄目よ。罠に決まってるんだから。」
「勘九郎、奴の眷族に邪魔させないでくれ。」
シュバッ
「な!あたしが雪之丞にこんなあっさり振りほどかれるなんて?」
「死ね!」
ゴスッ
「な?…てめぇ…!」
ドカァンッ
「テストはクリアーよ。見縊って悪かったわね。」
「汚いわ!抵抗しない筈じゃ…」
「信じちゃいなかったでしょう?もっとも、あの時は本気だったわ。『殺す』なんて口で
言うような奴に実行する度胸は無い。でも…この子はそうじゃなかった。気に入ったわ。」

「…で、なんでテメーは大人しく弟子入りしてんだよ?」
「あたしに何を期待してたのよ?あんたはノビてるし、陰念は道場の隅で腰抜かしてるし
今いる三人が殺されずに済んだのは、全部あたしの決断のおかげなのよ?」
「あの女の下で修行しても、あの女より強くはなれねぇじゃねぇか。それじゃ駄目だ。」
「雪之丞、あんた現実を見なさいよ。あの時、あんたを倒したあの方の動き、見えてた?」
「いや、全然。端から見てたお前なら…」
「見えなかったわよ、これっぽっちも。まるで時間でも止められたみたいよ?」
「つくづく化物だな…けど…それでも俺は…」
「私を殺す?」
『うどわぁぁぁぁ!?』
「まぁったく、呆れた単細胞ね。人じゃどうあがいても神魔クラスには対抗できないわよ。」
「ほざいてやがれ!今までテメーら相手にあがいた人間がどんだけヘタレだったか
しらねぇが、俺は負けっ放しにしたことはねぇ。必ずテメーより強くなってみせる!!」
「それが無理だってのよ。魂魄には定められたキャパがあるんだから、人間が、その
肉体と霊体をどれほど鍛えても、霊圧100マイト手前で頭打ちよ。特殊な武装をするか、
霊波を加工、蓄積でもすれば話は変ってくるけど、アテはあるの?」
「……クッ!」
「今のは霊力の話だけど、肉体の方はそれこそ八方塞よ?大体、人間ってのは肉の器だから
そんなに脆弱なのさ。そんな足枷かかった状態で私に勝とうなんざ千年早いよ。
そして、私はその枷の外し方を教えてやれる…授業料は頼み事さ、それもごくたまにだけ。」
「踏み倒してやるよ。いつかテメーを越えて、のこのこ取り立てに来たテメーを倒す!」
「気に入った。忠実な道具も悪くないが、退屈しのぎの危険な花火も一興さね。」
「俺は火傷じゃ済まねぇぞ?一瞬で燃え尽きたりもしねぇ。」
「私らにとっちゃ人間の寿命自体一瞬さ。火傷以上の方は…期待しないで期待しとくよ。」

―何時からだろうか、孤独こそ自分の居場所と実感するようになったのは?―
(なのによ…結局、テメーと決着つけることは出来なかった。テメーは俺より
弱かったから先に死んだ、そう思っとくことにしたぜ。…イヤ、やっぱ納得いかねぇ。
けどよ…俺も大したことねぇ奴に負けちまいそうなんだよ。魔装術を封じられて…)

「肉体の外に霊体を出して、それで肉体を覆う鎧を練る、…か。簡単に言ってくれるぜ。」
「確かに。霊波を特定の形状に固定するのって修行してどうにかなるもんじゃないのよね。霊波刀でさえ天性の資質無しじゃできっこないって聞くのに、全身を覆うんですものね。」
「そう言うお前は大分出来るようになったんだろ?…霊波の総量もお前のが上か…」
「忘れたの?魔装術は悪魔と契約した者のみが操れる術。あの方の波動を近くで浴びれば、
それだけ霊波が空気中に具現し易くなるのに、あんた極力近づかないようにしてるでしょ」
「嫌いなんだよ。仕方ねぇだろ、嫌いなモンは。」
「それじゃ人参食べれなくて大きくなれない子供じゃない。」
「人参じゃなくて蛇だろ、蛇でしかも年増女。喰えるか、普通?」
「うーん…って論点をすりかえてないで、陰念も最近はあの方に近づくようになったのよ?
いくら自主トレしたって今のままじゃあんた、遠からず落ちこぼれるわよ?」
「だったらなおさら自主トレしなきゃならん。無駄話終了。」
「それこそ無駄だってのよ。霊気は元来、虚ろなモンなのにどうやって形にするのよ?」
「どりゃーっ!だああぁぁりゃーーー!!」
「要領が悪いのよね。白龍ん時も師匠が気に入らないからって稽古サボって自主トレ。
そんで白龍抜けた今頃ンなって師匠の教え通りの一人稽古。ひねくれてると言うか…」
「なるほど…要領悪いわね。」
『また出たぁぁぁ!?』
「しかし、ひねくれモンもイクとこまでいけば力になるわ。
結局、霊体を具現するのは意志の力なんだから。自分の強さを信じなさい。
強い自分をイメージすれば、霊体は応えてくれる。望むままの自分を象ってくれるのよ。」
「望むままに…最強のイメージ…最強の俺…」
「イメージを根ざす為に自分を鍛えるのも道の一つよ。その汗臭い努力も無駄じゃなくて
良かったわね?憶えといで、魔装術は、肉体の限界を超えた自分本来の力を引き出す術。
お前達の中に、普通に鍛えてたら腐るしかない限界以上の力が眠ってる事が前提の術さ。」
「俺は元々強いって事か?知ってるぜ、それくらい。それにもっともっと強くなる。」
「そ、安心したわ。この術は霊体が露出するんでネクロマンシーを初めとする
サイコ・ハッキング能力や封印の類に弱いから、コイツに馬鹿の一つ覚えみたく頼んないで
欲しかったのよ。敵の能力や状況にあわせて臨機応変に対応なさい。強ければ出来るわね?」
「陰念には無理そうね。ねぇ、雪之丞?」
「知るかよ。けど、俺は魔装術なんかに頼んなくても勝てるさ。便利な術っつっても、
たかが1年足らずの修練が俺の全てじゃねぇ。いけすかねぇジジィにもしごかれたしな。」
(そうか……そういや…そうだったっけ………………………………)――。


「う……うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「!」
ゴーレムの巨体が、僅かに床から離れた。雪之丞は相手の頭部に左手、腰に右手をあてがい
その全重量をその身に受けていた。タイガーより更に二まわりほどある金属塊の巨躯を。
「ずえりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!やっっっってやるぜぇぇぇぇぇ!!」
ドッガァァァァァァン
雪之丞はゴーレムを、盛大な音を立てて頭から床に叩きつけた…イヤ、突っ込んだ。
「はぁっ…はぁっ…立ったまんま気絶してたのか、俺?…痛!?今ので背骨やっちまったか?」
(…にしても…連中、夢枕に立ってまで俺の命を助けてくれるなんて…冷てぇなぁ。
よっぽど俺と顔合わせたくねぇんだな。ま、ママがいなかったから良しとすっか。)
自身の背中を撫でながら苦笑する雪之丞の眼前で、ゴーレムが悠然と立ち上がった。
「こいよ、オラ。テメーのその馬鹿の一つ覚えの、うすのろパンチでかかってきな。」
ゴーレムはリクエストに応えてパンチを放とうとしたのだろうか?右手を振りかぶり、
シュッ
ゴーレムの腕が後ろに下がりきったその瞬間、雪之丞が弾かれたように飛び出して腕を掴む
「テメーがどんなに頑丈だろうと、人間みたく動くには人間みたいな関節が必要で、人間
そっくりな関節は人間そっくりに急所になるんだ!人形ごとき相手に魔装術は必要ねぇ!!」
ゴキンッ
ゴーレムの右腕を肩から捻じりもぎ取り、雪之丞はゴーレムから飛び退いた。
「お前の考えてる事、当ててやろうか?
『片腕持ってったぐらいで勝った気になってんじゃねぇ』
それとも、もう気づいたか?俺が、テメーの身体と同等の強度の武器を手に入れた事に。」
タッ、ズギャンッ
雪之丞はゴーレムに向かって再度飛び掛り、手に持った「腕の形をなした武器」で猛打した
(「臨機応変」ね…。「相手の武器をパクれ」って事じゃあねぇだろーけどな。)
「で?次はどーするよ、片腕の大将。まさか、もう降参か?」
「……………………………」
ピシィッ
突如として、ゴーレムの頭頂部から真下へと亀裂が走り、その胴体が観音開きと化し、
中から小柄で細身の、鈍い光沢を放つゴーレムが現れた。彼はおもむろに口を開いた。
「<オリハルコンは原子核から、人間の脳が使う電気信号に極めて近いパルスを常に
放射し、霊波と同調、中和している。従って私は、念波を遮断する性質を持つ神鉄により
核を保護する事によって、オリハルコンの装甲を持つゴーレムを作成する事に成功した>
カオスの書、最強の量産兵器に関する考察の第二項目、対魔防御における最強論ヨリ抜粋。」
「は…あぁ?そんじゃテメーらは、全員こんな風な二層式になってやがんのか?」
シュッ、ズギャッ
雪之丞が問いかけた瞬間、ゴーレムの姿が掻き消え、雪之丞は宙空に吹き飛ばされていた。
「ぐぁ…!疾ぇ?」
シャッ、バシィッ
「チィ…!イキがってんじゃねぇ!!」
バシュゥゥゥゥゥゥッ
2撃目を受けた後の間隙を縫って、雪之丞は緋色のイメージを具現化した。
「オラァァァッ!」
ガシィッ
雪之丞とゴーレムは、互いの拳を打ち合わせて一時静止し、再び跳んだ。
つづく

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