狼牙(十一)後編
投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 8/ 9)
ー狼牙ー
「タイガァ!決着をつけてやるぜ!」
その声の直後。
連鎖的に『虎』にとって予想外の事が起きた。
まずは霊刀を構えた青年が、その身を包んでいた『鎧』を解除した事。例えそのままでも『虎』の精神感応波からは逃れる事は出来ないとはいえ、やはりその行動は・・・自ら左腕を斬りつけた事と併せてタイガーの予想を越えていた。しかし青年の行動はそこで終わったわけでは無い。
フォン!
一閃、横薙ぎ。
左腕に今なお喰いつく精神獣に振るったわけでも無く、かといって眼に映らぬ筈のタイガーにも距離的に届く事は無い。タイガーは雪之丞の行動を只の奇行と判断した。瞬間。
ピッ!
何かがタイガーのジャケットに付着した。それが雪之丞が振るった刃からの赤い雫だと気付いた時、彼は既に行動していた。
ドンッ!
地を蹴る音。
もはや彼は幻惑する『世界』に居る囚人では無かった。
精神獣はタイガーの無意識・・・そして攻撃性が具現化した自らの本能で動く獣。その獣に右肩を喰い破られた時、雪之丞の眼には二つの月が在った。
ベキィッ!
左腕が持っていかれる。しかし構ってはいられない。
(偽りでなら!構いやしねぇ!)
二つの月。タイガーがこちらに『送った』映像と、精神獣が喰いついたと思わせる為に『新たに送った』映像の誤差。感応波の影響する範囲の違い。それらが雪之丞の脳に二つの映像を送る事となった。
(目に見える自分の身体が本物で無い以上、無茶は出来なかったが!現実と差が無い、喰いつかれた時の映像でなら!)
誤って自ら腕を斬り落とす懸念を、相手の能力を利して避け、鎧を脱ぎ捨て霊力を聴覚を取り戻す事にのみ集中させる。視覚等より聴覚が恐らく最も取り戻すのがたやすいと判断した事だが、危険な賭けである事は間違い無い。そして。
「!」
視えている世界が消える。風に届けられる匂いも、左肩の先から来る激痛までも、消えてゆく。
自分が真っ直ぐに向かう先。その先に『虎』は居た。位置を見破られた事から全ての霊力で雪之丞を迎え撃とうとする。
しかし!
「遅いっ!」
全ての賭けに勝った男がー叫ぶ!
再び全身を鎧が覆い、雪之丞のスピードが爆発的に上がる。子供を盾に取った化物を反応させる事無く打ち砕いた加速、雪之丞の切り札。タイガーの体勢が整うよりも早く、雪之丞は間合いに踏み込んだ!狼の牙が吠える!
ガガァッッ!!!
『グワアアアッッッ!!!』
虎の断末魔が響く!
「ハァ・・・ハァ!」
ゆっくりと・・・虎が崩れ落ちるのを背に、狼も地に膝を着いた。無意識に鎧は消え、滝の様に汗が、草を濡らす。
「・・・・・・」
後ろを振り返る。そこには完全に気を失っている虎の姿があった。疲労を堪えて口を開く。
「タイガー・・・俺の・・・」
右手の相棒、狼牙をギュッ!と握りしめる。
『俺達の・・・勝ちだ!』
ー勝敗は、決したー
今までの
コメント:
- 「続き・・・凄い不安です。考えたつもりですが、細かなところが矛盾していたら・・・すみません・・・」 (AS)
- 決まりましたか!?
勝ったのは・・・雪之丞君、しかし良かったのは、
>『俺達の・・・勝ちだ!』
でした!!このセリフは、かなりカッコいいですねぇ・・・次回も期待です。 (sig)
- 戦闘シーンがカッコいい!!カッコイイってばっ♪
とうとう、決着がついたようです!雪之丞君、そしてタイガー君!
両者共に、かっこ良くって・・・!!(←興奮気味)次回が気になりますっ!! (sauer)
- いやはや、今回も実に気合いが入っていましたね! それ自体はやや抽象的にされた殺陣の描写が、人外の力の打付かり合いを力強く表現しています。それと主語の個人名や代名詞はこの位の頻度が読み易いですね。
それにしても良かったな雪の字、相棒が出来て……人間じゃないけど(薄らと涙)。こう云った処、横島と大差無いかも。 (Iholi)
- sigさん、いつも感想有難うございます。
決まりました・・・雪之丞、苦心の勝利・・・何とか書ききれて一安心、です。台詞に関しても、嬉しいです。凄く。
今回もお付き合いして貰えて、感謝です。 (AS)
- sauerさん、いつも感想有難うございます。
カッコいい・・・凄く嬉しいです。書いて良かった、そう思えます。
今回も読んで頂けて、本当嬉しいです。 (AS)
- Iholiさん、いつも感想有難うございます。
殺陣の、アクションの描写は、タイガーの能力から考えて、格闘的には出来なかったんです・・・どうしても。
個人名や代名詞の頻度・・・に関しても、そう言って頂けて、嬉しいです。
今回も読んで貰えて、感謝、です。 (AS)
- 票を入れて下さってる方・・・素直に嬉しいですが、誰だろう・・・? (AS)
- は。コメントを入れるのを忘れてた(自爆)
すごく良かったです♪
最期の台詞が好きです
「俺の」じゃなくて「俺たちの」ってとこが (hazuki)
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