ザ・グレート・展開予測ショー

GSキラー:track26[DIVISIONS「始闘編<妖しき妃断罪の章>」]


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/ 8/ 9)

女が一人、廊下を歩いていた。決して無個性ではない。だが、どんな女か察する事が出来ない。
影をひきずった風でもあり、同時に輝くような雰囲気も備えている。ただ、掛け値なし。
ありとあらゆる両極端なオーラを携える彼女を見て、唯一確定する第一印象は、彼女が
掛け値無しの美女という事に尽きた。清楚にして妖艶、俗っぽくも高尚、可憐でいて気高い。
そんな女性が、階下の爆音を無視してハイヒールでリズムを刻んでいた。服装は一目で
秘書と知れる、そんな格好だ。しかし、その姿はパリコレにもとけこめるほど優雅だった。
唐突に、その女性の足が止まる。目的の部屋の前に着いたのだ。
コンコンッ
「入ります。」
「どうぞ。」
女性がノックと共に声を響かせると、中から男の声が応えた。女性はドアノブを掴む。と、
ガチャリッ
内側からノブを回され、ドアがこちらに迫ってきた。ドアを開けた人物は黒髪の女性で、
歩いてきた女性と同様の格好をしていた。勿論、黒髪の彼女はドアの向こうに人がいると
知ってて開けたのだろうが、敵意があってやった様子ではなかった。黒髪の女はうめいた。
「ス…スイマセン…たまたまドアの横にいたものですから…良かれと思って…その…」
「いいえ、助かったわ、ありがとう。…本当に…」
美女は入室しながら、黒髪の女性にそう言って微笑みかけた。僅かの間見つめ合う。
「早速だが、ロボットを相手にしてる部隊の旗色が、やや悪い。増援を手配したまえ。」
先刻入室を促した声と同じものを発した男性は、奥のデスクに居を構えていた。
「この部屋に近い敵は捜査官と人狼なのですが、そちらはよろしいんですか?」
奥にはもう一人、三人目の秘書姿の女性であった。彼女の問いに、男は頷きつつ答える。
「西条君なら3階で大事な女(ひと)が戦ってると教えてやれば、とってかえすだろう。
アマンティーヌの決闘は、ヘタに水を差せば3流悪役よろしく裏切られかねん。
なにより、私はアレが忌わしい妖怪と知ってなお、スカウトした。丁度いいじゃないか。」
「丁度いい…ですか?」
「私は妖怪を、自制できぬ程嫌悪している。まして、強大な力を秘めたアレは、何時私に
牙を剥くかも知れん。しかし、結局のところ、アレの能力は他の何者よりも頼りになる。
奴と一対一で闘っている以上、人狼が此処へ辿り着く事は決して有り得ん。さもなくば、
私が奴をスカウトした意味が無い。意味が無ければ当然殺処分だ。増援は要るまい。」
聞き返した秘書は、男の答えを聞いて、思わず目を伏せた。要は試しているのだ、彼女を。
ティナが勝利すれば、彼女に戦力としての利用価値がある証明になる。だが、勝てないなら
彼女がいる区画ごと『円卓の騎士』に内蔵させた80mmキャノン砲などで敵を葬るだろう。
「ところで今入ってきた君、名前は…えぇと…まぁ、どうせ妖怪がすり替ってるんだろう?」
男と年長の秘書がいる、奥まで歩いてきた美女に、男は唐突に言い放った。美女が応える。
「何故、そう思われるのでしょう?」
「君がアマンティーヌの話題にあまりにも無関心過ぎたからさ。人狼と親しいんだろう?
それを隠し通す為に無感情を装ったんだろうが、私は、自分がかなり残酷な事を言ってる
自覚がある。何の反応も示さないのは、マトモな人間じゃない証拠さ。」
男の言葉の後、室内に緊張が張り詰めた。まるで、一瞬とも永遠ともつかない、時間の牢獄。
――時計の針は確かに時を刻んでいるのだから、この錯覚は陳腐としか言いようが無い。
シュッ
それは正しく刹那の動きだった。美人秘書は隣で緊張に縛られていた年長秘書を引き寄せた
「勉強不足だったわね。青ざめたりすりゃよかったわ。」
「無駄な真似はやめろ。私は妖怪を駆除できるなら部下の命など惜しくないんだ。
さもなきゃ、西条君を投獄したりせんよ。それに私が所持している44口径の銃には
オリハルコンの銃弾を込めている。君には残念だろうが、人間の肉体を貫通した銃弾でも
銀を数倍上回る霊波影響度は君の身体を削り取る。ゲームオーバーだ。」
男は言いながら、ゆっくりと銃を引き抜いた。
「つまんないハッタリだわ。それなら喋らないですぐに撃てばいいじゃない。」
「妖怪などという下衆な存在はそうするのだろうが、私は違う。貴様のようなおぞましい
生物は、絶望に打ちひしがれながら死するべきなのだ。わけもわからないまま
死ぬとゆうのは、捉えようによっては安楽な死ではないかね?私は貴様に裁きを与える。
それを理解した上で死んでもらいたいのだよ。貴様は罪人、私がジャッジ。解るかね?」
「罪?身分詐称とか不法侵入で極刑だっての?」
「妖怪は桁違いの寿命その他の能力により、自然界から独立した存在だ。それが罪だ。」
「なるほど、あんたの言い分じゃ、あたしらは生まれながらに罪人なのね。」
「承知したかね?」
「自分が殺されるのを?冗談はよしてよ。」
「そうか、結構な事だ。君の今の状況を理不尽に思ってもらえれば、私の心も満たされる。」
「クズ野郎…本気であたしをコイツごと殺すのね。」
「君を生かしておけば、どの道この場の全員の命が危険にさらされる。とても不安だ。
人間は安心を得る為にはなんだって出来るんだ。人間の全ての欲求は終始そこに辿り着く。
憶えておくといい。君が死ぬまでの僅かの間だがね。」
「なら、あんたもタマモって名前を憶えとくといいわ。」
「ほう、君の名か?」
「えぇ。相手の名前を呼べないと、命乞いする時に不便でしょ?」
ドンッドンッドンッドンッ
二人の秘書に、男は四発の銃弾を撃ち込んだ。もう一人、黒髪の秘書が同僚の姿に嗚咽する。
「ひぃ…!?うぅ……」
「不愉快な!これだから妖怪とは解りあえんというのだ……死体の処理は任せる。」
二つの死体の片方は放電のように光を弾けさせ、やがて小さな石になった。


「……銃声?ロードの身になにかあったか?」
「こンの…ドロンパ野郎!こっちを見ろ!!」
如何に窮地といえど、ティナの油断の隙を突いての勝利などは、シロにとっても
本意ではない。一声怒鳴りつけて、相手が向き直ったのを確認し、再び突っかかる。が、
シロの霊波刀は虚しく空を裂くばかり。逆に、相手の攻撃は防ぎようが無い。
「ぐうぅ、こんなのインチキでござる!見えるとついつい反応してしまうでござる。
こうなったら、目を瞑って霊波をたどって…」
「無理だ。霊波も匂い同様残り香がある。ワーウルフである私の技に、そんな弱点はない。」
ティナにあっさり否定されてしまったシロの策だが、見てる限り泥沼なのにかわりはない。
(コイツの口振りでは、人狼の追跡術では捉えられぬでござる。ならば、かくなる上は…)
シュッ
目を閉ざした状態のシロは、自分に迫るティナの斬撃を紙一重でかわした。
「かくなる上は、ちょいと癪だが女狐みたく勘で勝負でござる!」
かつて、主観の入り込む余地の大きい心霊操作は、情報を与え過ぎるのはまずいと言った
男がいた。シロはそれを聞いてたわけでもないだろうが、本能でそれを悟ったのだ。
「どおぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ!」
ガキィン
「ク…?」
鍔迫り合い、ティナがうめき、シロはそこから更に力を込め、一気に相手を吹き飛ばした。
ドカァッ
「闘牛ってのはこーゆーもんでござる!はん!お主なんか猫よか弱いでござる」
「…種の存続も危うい脆弱な一族と聞いたが…タフだな。それに発想にも野性を感じる。
強敵と認めた証として、次の魔力を使うが、師の教えに従い、先に能力を明かしておく。
『エクスプロージョン・ダイバー』斬った存在を例外なく粉微塵に爆破する魔剣。貴殿も、
霊波刀さえもだ。大概の猛者は、この魔剣を使えば二太刀で終わった。貴殿はどうかな?」
言い終えるなり、ティナは魔剣を振るった。しかし、その太刀筋は極端に下段狙いだった。
(二太刀目で決める?要は受ける事も出来ぬ魔剣で跳ばせて仕留めるのでござるな?甘い!)
シロは確かに跳んだ。地にかすめるほど低空で、後方に。これなら次撃に対応できる。
ザンッ、バグォォンッ
魔剣が地をかすめ、切り口から爆圧が噴き上がる。廊下の爆砕は真っ直ぐ道なりに突き進む。
「げ!爆発が追いかけてくる?」
タンッ
シロは右に跳んで「直進する爆発」を回避する。が、直進に数秒遅れて周囲も吹き飛ぶ。
「うわぁ!?」
「斬撃であり爆撃なんだ…指向性も持ち、且つ破壊を撒き散らす。」
火を噴く足場から跳び上がるシロ。一旦は離れた間合いを再び詰めて魔剣を振るうティナ。
バッ、シュパッ
「何!空中で身体の位置をずらした?」
常識的な筋力やボディバランスで出来る芸当ではない。だが、シロの危機は去ってはいない。
ドグォォンッ
「がぁぁ!?」
「『空を裂いた』この魔剣に空振りは無い。紙一重では撒き散らされる爆炎に飲まれる。
とは言え、正直こちらは必殺のつもりの一撃をかわされた。本当に強いな、貴殿は。」
左半身に被爆して苦しむシロに、ティナは抑揚の無い声で静かに伝えた。
(こんな調子で七つも魔剣を喰らってたら身がもたんでござる。攻めなくては…)


ドカァンッ、シュピィンッ
雨の中の市街戦。巨躯のゴーレムは、時速300kmで絶えず走り回るインダラに跨る標的に、
近接戦闘は挑めない事を悟り、自らの肘を切開して内蔵された大砲による砲撃を
繰り返していた。が、砲弾までがオリハルコン製というわけではなく、今のように、
アンチラの斬撃に弾かれてしまう。しかし、冥子にしてみても、オリハルコンのボディに
有効な攻撃手段を持ち合わせていない。完全な膠着状態にある。しかし、彼女の瞳が輝いた。
「い〜〜事考えたわ〜〜!アジラちゃんに倒してもらうわ〜〜!!」
宣言して、影からアジラと運搬役のシンダラを呼び出し、真上に飛ばした。えてして、
女性が自分の思いつきでこうやって楽しそうにしてる場合、ろくな事にはならない。
つづく

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