ザ・グレート・展開予測ショー

地獄裁判 4


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 8/ 7)

さて、美神GS事務所には、
「・・こんなに集まるとはのぉ・・・」
カオスが少なからず驚嘆の感を隠し得ない。
「おねえちゃん、大丈夫だっぺよな」
機械に変かが生じた度、コートを掴んで聞いているのは氷室早苗ちゃんである。
「大丈夫じゃよ」
ふぅと、溜息に近い呼吸を出した。
カオスとしても祈る気持ちもあるだろう。
(地獄・・か)
太陽が昇ったようだ。
地獄では時間の感覚はどうなっているのだろうか、カオスの脳をよぎった。
当然時間の感覚は無い。その無限の責めたてが地獄が地獄たる所以であるが。
車は水陸両用に加工した物なので、遠泳の罰は免れている。
地上の水と変らずチャプチャプと水音がするが、暗いのだから不気味の一言である。
「どぉ?人工幽霊1号。向うは見えた?」
美神が尋ねるのも無理は無い。
とにかく三途の川はケタはずれに広いのだ。
《私の探査能力でも、川又川で御座います》
「ガソリン持つっすかね?」
《最悪の事態は回避したいと思いますが、自信は御座いません》
なんとも頼りない返答である。
『おい、嬢ちゃんこのメーターって奴がひかりはじめたぞ』
ガソリン残量がもう空を示している。
「ど、どうしやすか!」
《乗客の皆様、衝撃に耐える様お願い致します》
目玉の親父が何だと言う前に床下からガチャと音がなった時、
座席が吹き飛んだ。
「みかみさーーーんーーーー」
なんちゅーしかけやぁーーという悲鳴まで自由飛行していたが、
「これ、横島とやら、お主吸血鬼のマントを着とるだろうが!」
目玉の親父の叱咤が飛ぶと、そうだったと、腕を伸ばすと、
「うっわったたー。って俺飛んでるぜ!」
最初は危なっかしい飛行法であったが、しばらくすると、なかなかに楽しいらしい。
美神ははなから巧く飛行していて
「こら、飛ぶのも霊力を使うのよ。あまり遊ばないで」
大人しくへーい、と答えると、その横から、
『スーパーマンドッグ、ここに参上!っと』
歳を忘れて心から楽しんでいるマーロウであった。
小1時間上空散歩をしていると、ようやく対岸が目に入った。
《こちらでーす!》
対岸に何者かがいる。誰だと誰何すると、
《私です。人工幽霊1号です》
味方がいるので、先ずはその場に着陸する。
「いてっ」
やっぱり初心者の横島は失敗したようだ。
「人工幽霊1号?あんたどうやって?」
《オーナー美神。私は仮にも幽霊で御座います。途中乗車で三文にまけてもらいました》
三途の先頭に乗せてもらった所、ものの1分で対岸についたそうである。
《装備品もごらんの通り、水に濡らさず持ってまいりました》
そういう人工幽霊1号の格好はダブルボタンのコートに白手、つば帽子を目深に被っている。
《さる漫画の真似で御座います》
「車掌さんって呼びたくなるわね」
まさにその格好であった。
「おぉ!ここまで来れば閻魔庁までひとふんばりじゃ」
目玉の親父が言うまでも無く、北京は紫禁城を一回りも大きくしたような建物が見える。
「横島君。痛みは引いた?」
しおらしく美神が尋ねる。
「えぇ大丈夫っすよ。ほんじゃあっ」
と、足を動かそうとした時、もう慣れた殺気を感じる。
「この忙しい時に・・この殺気は!」
「あ、あいつか?」
マーロウ、目玉の親父、そして人口幽霊1号はしらないが、美神、横島にとっては忘れられない邪竜の物だ。
「くくく。まさかこんな所で横島にあえるとはねぇ〜」
意味も無く舌なめずりする音がする。
「メドゥーサ!あんた極楽にいったんじゃないの!」
美神が叫ぶようにしていう。
「さぁ、あたいにもどうなっているか判らないわ、でもこうやって」
三叉の槍を横島に向けて、
「こうやって横島、貴様に会えたんだ。殺してやる」
ぎんとにらみを効かせる。
「メドゥーサ、今度こそ極楽に!」
神通棍をマントの下から取り出すと、同時に閻魔庁から除夜の鐘に似た音が響く。
「しもうた!裁判がはじまるぞい!」
親父が報告する。
「おんや?閻魔庁に用があったのかい。でもどうでもいいね!」
ぴょんと岩場から飛び降りて、目に見えぬ速度を見せる、
「人工幽霊1号!」
横島が声を出して、
「いそいで、閻魔庁へみんなを連れてってくれ!ここは俺が!」
美神が反対意見を述べようとするが、
《オーナー美神。ここは横島様の御意見を、急がなければなりません!》
有無を言わさず、美神を連れていこうとする。
『俺も賛成だ。お嬢ちゃんは裁判に向かえ!、加勢するぜ、ぼうや!』
美智恵の神通棍を口に咥え横島の右に倣う。
『さぁ、いっちょやろうぜ』
「おう」
横島はすでに『速』と書かれた文殊をマーロウに手渡していた。
火柱が立った。
その様子は美神の背中にある。
「急ぐのじゃ!生有る者が閻魔王に彼女の、オキヌちゃんの生存の異議を唱えるのじゃ」
美神の方で大声を出している目玉の親父であった。
オキヌちゃんは、既に閻魔王の前にいる。
「おぬしが、オキヌ、これより裁判を始める。神にならず、現世に漂った罪、か」
閻魔王が事前に渡された書類を眺めている。
オキヌちゃんは何も言えない。
「取りあえず、何か着せるか、これでよかろう」
魂だけの存在。洋服等は一切纏っていなかった。
閻魔王が指先を向けると、中華風の少々ケバイととりかねない服を着ていた。
「ふむ・・そういう事か。倶生神(閻魔王の記録官)よ、これは難しい」
これは閻魔王だけでは決められないかな、と言った時、
「ちょっと、おまちくだされ、閻魔王様!」
「その声は・・親父か?」
直径1メートルを越す目が動く。
「はっ。お久しゅう御座います。閻魔王様。この件に関して、そこのオキヌなる娘の弁護人をおつれしました」
オキヌちゃんも驚きを隠せない。
「美神さん!」
はっとこっちを振り向くが、
「・・なんちゅー格好をしてるの?オキヌちゃん」
少々唖然としている。
「ふむ。成るほど。生有る者、本来は地獄に来る事は許されておらぬが、この際は致し方無しだな」
不問に付すと伝えてから、
「そうじゃな。このケース、大変難しい。十王を呼ぶ必要があるな」
さて、十王とは何者であろうか。
それは次号で。

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