ザ・グレート・展開予測ショー

酔っぱらいの約束。


投稿者名:K2
投稿日時:(01/ 8/ 7)

満月の晧々と哭く、夜。
仄暗い都市の夜景の中から現れる一組の男女、ふらり、ふらりと千鳥足。
昼間の暑さを忘れたアスファルトが、靴底に擦れて乾いた音を立てる。
壊れた街燈が二度、三度点滅して、消えた。

―空には月、地には風。
酔いを醒ますには、善い夜だ。

男が、虚空を見上げる。
月を指差して、女の耳に囁く。
女が、虚空を見上げる。

まるで、手が届きそうな月ね。
行った事、あるけれど。

女の唇が、微笑みを象る。
男の唇が、僅かに震える。

零れ落ちる、笑い。
地面に崩れ落ちて、お互いの肩を叩き合って。
昼間の暑さを忘れたアスファルトの上で。

―空には月、地には風。
酔いを醒ますには、善い夜だ。

ねぇ、美神さん。
なに?

笑いの余韻の残る声で、男が問う。
笑いの余韻の残る声で、女が応える。

ねぇ、美神さん。
なァに?

困ったように、男が下を向く。
焦れたように、女が見上げる。

ねぇ...。
だからァ、何よぅ、早く言いなさいよ。

云って、女は気付く。
明るい月光の下、何時もと違う男の顔。

あの......。
......なに?

云って、男は気付く。
明るい月光の下、何時もと違う女の顔。

どちらから共無く、顔を逸らす。

―空には月、地には風。
酔いを醒ますには、善い夜だ。

壊れた街燈が二度、三度点滅して、点いた。
2人を月光の中、更に明るく照らし出した。スポットライトの、様に。
思わず2人は顔を見合わせる。
そして。
零れ落ちる、笑い。
地面に崩れ落ちて、お互いの肩を叩き合って。
昼間の暑さを忘れたアスファルトの上で。

ねぇ、美神さん。
なァに?

巫戯けた何時もの調子で、男が云う。
虚空を指差して、男が云う。

今見えてる月と同じくらいの大きさのダイヤをプレゼントしたら、ケッコンしてくれます?

虚空を見上げて、女が微笑(わら)う。
巫戯けた何時もの調子で、女が微笑(わら)う。

...そうね、明日忘れて無かったらね。

でも、給料賃上げしないから。
...でしょーね。
男が立ち上がり、女に手を差し出す。
男の其の手を取り、女が立ち上がる。

満月の晧々と哭く、夜。
仄暗い都市の夜景の中から現れる一組の男女、ふらり、ふらりと千鳥足。
昼間の暑さを忘れたアスファルトが、靴底に擦れて乾いた音を立てる。

―空には月、地には風。
酔いを醒ますには、善い夜だ。

歩き始めた男の頬に、女の影が重なる。

なるべく早く、ね?

虚空には5カラットのダイヤモンド。
壊れた街燈が二度、三度点滅して、消えた。

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