ザ・グレート・展開予測ショー

手紙。


投稿者名:hazuki
投稿日時:(01/ 8/ 5)

大好きな
好きな場所がある。
地中海の水面に映る月が見える場所。
遠い遠い昔から変わることの無かったところ。

夜でもないだが夕方とも言いがたい時間。
東の空はもう闇にそまっているのに西の空はまだかすかに太陽が残していった光が西の空のふちをオレンジ色に彩っていた。
それはとても、幻想的な、だがどこか寂しさを感じる光景。
「今日は十六夜かあ…」
穏やかにそんな事をいうのは、ピートである。
学校の委員会の(もちろん除霊委員会)仕事の為帰りが遅くなっていた。
通学路にある家の灯りが灯っていく様に顔を綻ばせながら歩いている。
ピートはこの少しもの寂しさを感じさせる光景が好きなのだ。
少しずつ伸びてく影。
どこからともなく聞こえてくる子供の声や夕食の香り。
ひとつひとつの家に灯ってゆく灯り。
外の光景が少しずつ寂しさを増していくなかひとつひとつの家の中に温かい灯りが灯ってゆく…

寂しくて、優しい時間。

こんな光景を見ると思い出す。
故郷のあの場所を。
誰も知らない自分だけの場所を。
水面に映る月と潮の香りのする風、
変わらない大切な場所。
緩やか過ぎる時の流れ。
穏やかで優しい仲間。
とおさんもかあさんもいなくて泣いていた自分を大切に慈しんでくれた場所。
温かい。
と思う。
この世界を。
こう思うことのできる自分を。

「手紙でも書こうかな」
ふとそんなことを思う。
届くのは遅いだろうし、近況以外とりたて書くこともないが
とりとめのない事を書くことも、いいだろうと。

大切な仲間たちへと。

「あれ?」
かたん
と教会へと着き、ポストを探ってみると一通の手紙。
差出人は村の仲間たち。
手紙というのは少々分厚すぎるそれ。
あまりのタイミングに、思わず笑いがこみ上げる。
中では神父が夕食の用意をして待っているはずだ。
食事をしたら、いっしょに手紙を読もう。
そしてこの厚さに負けないくらいの返事をー

そうしてピートは温かい光の灯るひとつの教会の中へと、姿を消した。

空は晴れ。
十六夜の月に、天の川がよく見える。
おわりです

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