ザ・グレート・展開予測ショー

傷。


投稿者名:hazuki
投稿日時:(01/ 8/ 3)

その日月は青かった。
星は一つも見えないのに、何故かその青い満月だけははっきりと見える。
夜だと言うのにむせかえるような熱気と湿度。
アスファルトに覆われコンクリートの建物が所狭しと立ち並ぶこの場所に涼しさを求めても仕方が無い。
時折吹く風のかすかな冷たさが辛うじて暑さをやわらげているといった感じだ。
なのにこの場所から見える蒼い月は凍えるかと錯覚を起こしそうな程冷たく見えた。
それは単なる感傷にしか過ぎない。
頭をニ・三度左右に振りそんな考えを頭から振り払う。
「久しぶりなワケ」
声の持ち主が言う。
女性にしては幾分低いだが、よく通る声だ。
浅黒い肌に漆黒の髪の美しい女である。
「ああ…」
そしてこちらの声はもうずいぶんとしわがれた声。
声自体は若さがあるかもしれないが、いかんせんその声にハリというものが無い。
その姿も女性と対照的に青白い肌でやせがれており、一歩間違うとホームレスと間違われそうな身なりをした男である。
「何年振り……そうね、もう五年になるワケ?」
「五年…か…」
絞りだすように男。
その声は苦渋に満ちている。
「五年…その間にオマエは一流のGSになり、俺はこんな格好になったわけか…」
「……同情はしないワケ。一歩間違えれば、アタシがそうなってたワケだから」
「そう、後一歩だったんだっ!!師匠は、オマエが現れるまでは俺を後継者にすると…」
「だけど、それはもう昔のことのワケ。第一アタシが後継者となっても、アンタにも呪術自体は教えられた。違うのは、あの悪魔のことだけなワケ。」
「違うっ」
「……」
「オマエさえオマエさえ居なければ、今ごろ俺がオマエの立場に居たはずなんだっ!!」
きらり。
月の光を受けて男の出したナイフが蒼く光った。
「…それで何をシタイワケ?」
「決まってるだろ…オマエの存在を俺の中から消すんだよ。」
いっそ穏やかとすら言える声音で男。
「オマエに俺の気持ちがわかるかっ!十年だ!十年師匠の下で、血反吐を吐くような修行をしてやっと…やっと認めてもらえると思った時に、オマエが現れたっ。たった14・5歳のガキに、俺の…俺の…求めてきたものを奪われるなんてっ!!」
「……だから」
「なんだと?」
「だから何なワケ?」
うっすらと口元を歪め女。
「!!!!」
「をおおおっ!!」
と吼えるように男。
ナイフを両手で持ち体ごと女へと向かう。
だが、そのナイフが女へと届く事はなかった。
寸前で交されそしてブーメランを首筋に押し当てていたのだ。
「大人しく刺されると思ったワケ?」
「何故だっ!オマエは俺の人生をぼろぼろにしたんだっ。オマエは俺によって消されるべきなんだっ」
「だから大人しく殺されろってワケ?たく冗談じゃナイワケ」
「一つ言っとくけど、あんたの人生をぼろぼろにしたのもアタシの人生を成功させたもの自分力以外なんでもないワケ。あんたは、アタシのせいにしてるけど、それはただ単にあんたの力がなかった言い訳にしかされてないワケ」
「そんなことはないっオマエさえ居なければっ!!」
「…そう、ならいいけど、今度アタシに襲い掛かる時には容赦しないワケ。自分は被害者だから何をしてもいいなんて思わないように。くれぐれもそれなりの行動をしたからには、それなりの報復が帰ってくることを肝に命じてほしいワケ…」
「………」
そして優しいといえる動作でナイフを奪い取り、女はその場から立ち去った。
背を向けた途端涙が頬を伝った。


「エミしゃん…なんであんな男に会いにいったんじゃ?」
一部始終を見ていたタイガーが、不思議そうに問う。
「初恋だったワケ…」
アタシに初めて両親以外に優しくしてくれたわけ。
といってエミはふわりと少女のように笑った。

時は移る
人も変わる。
そして自分も。
その中を
いきていく。
いきていく。
いきていく。
変わらないなにかを抱えながら見つけながら。
おわり

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