ザ・グレート・展開予測ショー

狼牙(八)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 7/29)




 ー狼牙ー



 既に闇が辺りを覆ったー時ーその空間は、支配されていた。

 ザンッーーー!!!

 しなやかに、速く・・・それでいて重い・・・決まれば一気に
勝負を決める事すら不可能では無い渾身の一撃。その一撃は寸分の狂いも無く相手の急所を捉えたーにも関わらず空を切った。

 ザザザザッッ!!!

「ーーーちいぃっ!!」

 その一撃は確かに標的を捉えた。その『姿』を。しかし彼の顔には一片の歓喜も無く、代わりに焦燥が在るのみ。焦りを隠し崩れた体勢を立て直す。
 ウオオオォーーーー!!!!
 聴いたモノの動きを、心臓すら凍りつかせる吠え声が響く。
「・・・っ!」
 体勢はすぐさま整えた。次いで周囲を見回す・・・が、そんな事にどれ程の意味があるのか・・・彼は焦りを胸にしたまま、近づいて来ている筈の『虎』の姿を探す。しかし・・・
『グアアーーーー!!!!』
 その声と共に、右肩に激痛が走る。見ると何かに喰いちぎられた様に、右肩が大きくえぐられていた。『彼』は無駄と知りつつも肩に手をやり、荒くなった呼吸を整えはじめる。

 ーその時ー重々しい声が鼓膜を震わせたー

『あきらめるんじゃ・・・雪之丞・・・』

 衰えた闘志が、甦る。肩の痛みを無視し・・・右手にした霊刀に月の光を煌かせ、言い放った男に向かい、翔ぶー


 再度・・・二人の姿が重なりー・・・

 ー空を切る音がしたー


 ー数時間前ー


「・・・人としての、限界?」
 刀が身を震わせて、それに答えた。
『うむ・・・お主は八房という妖刀を知っておるか?』
 それを聞いて、考え込む。
 彼は今、狼牙についての教えを受けていた。
 とりあえず財布を見つける事も出来て、一人の女性の描いていた『出会い』・・・その出会う為の理由を完膚無きまでに叩き潰してしまった事など露知らずー・・・はしゃぎ続ける雪之丞。
 そんな歓喜の中、刀が彼に話しかける。
『・・・良かったな・・・ではそろそろこちらの・・・』
「やったーーーーーー!!!!これで!一週間パンの耳なんて悲惨な・・・」
「ーーーでやぁぁぁっっ!!!」
 ドギャア!
 刀の話を聞かせる為・・・ついでに無念をちょっぴり込めての
ー上段回し蹴りーが、雪之丞の首に直撃した。
「はぁ・・・はぁ・・・は、話を聞いて下さい・・・」
『・・・完ぺきに気絶しているぞ・・・』

 ー雪之丞は白い目をしていたー

「・・・・・・」
 とりあえず、気がついた雪之丞に正面から話を聞く様言うとー・・・意外にもあっさりと承諾してくれた。何でも気絶中に母親に逢って、人の話をちゃんと聞く様に、と言われたらしいのだが・・・それはともかく、彼は今大人しく話を聞いてくれている。その様を少し離れたところから、(・・・微かにため息をつきながら・・・)神無は見守っていた。
 ーともかく、説明は続くー
『八房・・・人狼を無敵とし、狼王とする恐るべき妖刀・・・この狼牙はある意味それとは逆の能力を持つのだ・・・』
 今度は雪之丞が口を開けた。
「八房の話は聞いた事あるぜ・・・随分前にそれを持った奴が、俺を除く連中を一まとめに蹴散らしたらしーが・・・この刀もそんな凄ぇ力を持ってるってのか?」
 刀はしばし黙り込み・・・先程より身を震わせてー・・・ゆっくりと語る。
『うむ・・・狼牙の力・・・それは・・・』

 
 
 またも、狼牙は空を切った。
「・・・つくづく懲りない男ジャノ・・・」
「ああ・・・自慢じゃ無いが肩こりにはなった事無いぜ!」
 そう言い放ち・・・雪之丞は右手に一層、力を込めた。
(悪いが相棒・・・俺はお前に頼らず、こいつに勝つ!)


 ー心中での密やかな、その言葉に応えるかの様に、刀身が僅かに煌いたー



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