ザ・グレート・展開予測ショー

狼牙(七)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 7/27)




 ー狼牙ー



 ー神無ー

 彼女がそう名乗ってから、しばらくの時が流れた。

 半ば予期していた事だったが、『刀』との闘いは雪之丞に深刻な被害をもたらしていた。まず頬の傷、しかしこれは彼にとってそれほどには気にならない事と言える。あの後すぐ神無が覚えたてのヒーリングを施してくれた事もあり、この事は些事として、彼の頭の中で処理された。
 問題は・・・
「無ぇ!くそ!無い無い無いっ!!!どこだーー!!!」

 絶叫。何かを必死で探す彼の耳に、二つの声が届く。

『・・・何をやっているのだ・・・あれは・・・?』
「・・・・・・さぁ・・・」

 ー彼は、叫んだー

『て・め・え・ら・も!一緒に捜せ!俺の財布!あれが無いとこの服のクリーニングどころか、俺の生命に関わるんだ!!!』

 ー宙に浮く刀は微動だにしなかったがー

「はぁ・・・解りました・・・」
 一つため息を洩らし、神無は捜索隊に加わった。
(・・・何で、こうなってしまったんだろう・・・)
 ー胸中で、そう呟くー
 神無はじっ・・・と見つめた。今この瞬間も必死に生命に関わる『モノ』を捜し続ける『彼』を。そう・・・

『あれが・・・霊刀狼牙の主・・・運命とは何と非情・・・』

『・・・・・・何か言ったか?』

 ー彼女は無視したー

 そうして、思い出す・・・先の出来事を・・・


『そうか・・・我が役目も終わる・・・そう申すのだな?』
 身を震わせながらの、刀の『言葉』に、神無は頷いた。
「はい・・・月にのみ存在する希少鉱石を用いて、この星の優れた刀鍛冶の手により産まれた、霊刀『狼牙』・・・」
 刀が再び、声を発する。
『だが、その狼牙の所在を嗅ぎつけ狙う者達が現れた・・・』
「はい。それを知り、我々は危険を承知で降りてきたのです・・・この星へと・・・」
 言いながら神無は見た・・・この星、地球の景色を。
(・・・・・・)
 そして・・・月を救った一人の青年の事を思い出す。
 かつて、月が魔族の襲撃に遭った時。その時に神族の加護と、自らの実力によって、月を救った一組の男女。その男の方と最後に交わした言葉を・・・そして『彼』の姿を彼女は目を閉じて思い浮かべた。
『・・・なのだな?』
 ふと、そんな声を耳にし、神無はうっすらと目を開けた。
「・・・?」
 瞬き。さっきまで目の前に在った刀の姿が無い?今何が起きようとしているかも知らずに、神無は視線を巡らせた。
『・・・さあ・・・こっちじゃ・・・』
「何があるってんだよ・・・全く・・・」
 視線を巡らせた神無の目に飛び込んだのは、刀に誘われ、倉へと入る、先程知り合った男性・・・そんな光景だった。
「ーーー!!!」
 蒼白になる。神無は駆け出した。悪い予感を振り切る様に。
 しかし・・・
 ガカァッ!!!
 閃光。まばゆい閃光が倉から放たれたのを目にし・・・自身の油断を悔やみながら・・・そして、何故だか漠然と・・・狼牙の主と考えていたバンダナを巻く青年の事を思い浮かべながら・・・神無は崩れおちた。

(注意一秒・・・とか何とか、良く言ったものね・・・)

 ーしみじみと、彼女がそう思った瞬間ー

『あったーーーーーーーー!!!!!』
「・・・・・・」
「やった!やったぜ!これで明日も生きていける!期限切れの牛乳や握り飯なんぞで食いつなぐ生活に戻らなくて済む!!!」

 ーゆっくりと、神無は懐から護身の刃を取り出したー

(無かった事・・・そう無かった事に・・・でも・・・)

 悲壮な彼女の様子も知らずに、雪之丞ははしゃいでいた。


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