ザ・グレート・展開予測ショー

狼牙(六)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 7/25)




 ー狼牙ー



 ー背後から、声がしたー

 「あ!駄目!」

 彼女・・・『神奈』の制止の声。どこか抑揚の無かった今までよりも、感情が込められたその声に言われるまでも無く、彼は気がついていた。

 倉の中は明かりなど無く、一面闇に覆われている。
 
 ーその闇からの威圧ー 先程まで感じられていた殺意はあえて形容するならば、『針』だった。全身を突き刺す様に絶え間無く襲う無数の針・・・しかし今は・・・この倉の扉を結界ごと破った瞬間、『ソレ』は変化した。
 収束する。今までは神奈も対象の内だったのだろうが、それがこの瞬間、全て自分に向けられるのを雪之丞は感じとっていた。
 束ねられ・・・更に一層濃くなったその殺意は、その軌跡を先にこちらへと知覚させた。考えるより先に躯が動く。

 ゥオン!

『盗人が・・・性懲りも無く!』

 横薙ぎに、身を投げ出す前に自分が立っていた場所・・・胴の辺りを白刃が斬り裂いた。その事を実際視たのでは無く、肌で感じとりながら、地を転がる。
(ーーーち!)
 地を転がりながら、雪之丞は殺意がこちらへ向かってくるのを感じた。そのまま二、三度と転がり、刃を避け・・・反動で起き上がる。

 ーその瞬間ー

「く・・・あっ!」

 ー頬から鮮血が飛び散るー 起き上がった瞬間、雪之丞の視界は、そのほとんどが迫る刀によって占められていた。ハッキリそれを知覚する間も無く、ただ本能的にその刃から逃れようと、首をのけぞらす。ー結果ー その刃はこちらを貫かずに、頬を斬り裂くだけにとどまった。
『こ・・・の野郎ーーー!!!』
 カッ!と頭に血が登り・・・体勢を整えた雪之丞は、反転しこちらへと襲いくる刃を正面から見据え、叫んだ。
『ウオオオォッッ!!!』
 闘争本能剥き出しにした、その叫びと共に、雪之丞の全身を霊力の鎧が覆う。それに構わずに雪之丞の心臓へと、一直線に飛来する殺意の白刃。

 ー闘志と殺意が交錯しようとする、その瞬間ー

『そこまでだ!双方動くな!』

 鋭さを感じさせる、女性のその声。戦闘の最中にも関わらず雪之丞は、その声がした方へと視線を巡らせていた。
『神奈!?』
 叫ぶ。彼女は答えなかった。ただ黙って、先程までと違い威厳を感じさせる表情をしている。身に纏う雰囲気もさっきまでとは別人の様だった。

 やがて・・・彼女はゆっくりと歩きはじめた。こちらへでは無く、自分の血に濡れた刀の方へと・・・何故だか『刀』も動きを止めている・・・背筋を伸ばしながらゆっくりと近づき、刀の前で、地に膝を着く。

『護る者よ・・・私は月神族が一人・・・神無でございます・・・決して盗人などではありません・・・』



 ー『神無』ー

 ー彼女のその言葉に対し、刃は小さく、その身を震わせたー




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