前世の幻 -タマモ-(4)
投稿者名:JIANG
投稿日時:(01/ 7/24)
法皇の病は今だ癒えず、泰成を含めた陰陽師たちは御所に渦巻く邪気を払うために泰山府君祭を執り行うように関白である忠通卿に提案した。
そしてその平癒祈願の札を神に捧げる役に法皇の寵愛を一身に受けている私が選ばれたわ。
私は病の法皇から離れるのが嫌だったけれど、法皇の病を治すためと忠通卿に言われ仕方なくその役を引き受けたの。
当日、儀式が進み祭文が読まれる中、私は神に捧げるための札を手に取った。
それは平癒祈願の札ではなく、退魔の札だった。しかもよりにもよって泰成が用意したものは晴明によって作られた強力な札だったの。
それでも普段の私ならば防ぎ切れたのだけれども、今の私は法皇の体力を補うために妖力の大半を失っている。
とうとう私は札の力に負けて本性である九尾の狐の姿に戻ってしまった。仕方なく尾を振り上げ天にかけ登り私は地上を見下ろした。
驚き騒ぐ人々の中に勝ち誇ったような泰成の姿があった。彼の目を見た私は全てを悟ったわ。彼の心にあったのは功名心だった。祖先の晴明に遠く及ばぬ名声を少しでも補おうとするあまり目先のことしか見えていなかったのだわ。
私はこの愚かでこずるい男に向かって火炎を吐き出した。泰成は札で結界を張り防ごうとしたけど、木っ端陰陽師が作った結界などものの数じゃないわ。彼は顔に大やけどを負うことになったわ。
私は泰成にそれ相応の報いを与えると、法皇のことが心配になり御所に向かったわ。
でも御所の庭には1人の武者が仁王立ちとなって弓弦を鳴らしていたの。彼はたしか、鎮西八郎為朝といったかしら。お世話になった頼長卿の家来だと聞いたことがあるわ。
その彼が弓弦を鳴らす度に御所に渦巻く邪気が薄れていくのがわかった。
頼長卿が法皇のために時を同じくして為朝に命じて弓弦の儀を行わせたのだろう。
これで上皇による呪いは払われるだろうということがわかった私はここを立ち去ることにしたわ。
法皇の寝所に目を向けると御簾が上がり、法皇がこちらを見て何か叫んでいるのが見えた。しばらくすると廷臣たちや衛士の武者たちがやってきて法皇の姿を隠してしまった。
法皇の病のことは心残りだけど、正体がばれた今の私に、ここでの居場所はもう無くなってしまったわ。
私は地上で騒いでいる人間たちに一別をくれると、とりあえず東に向かってかけ去った。
つづく
今までの
コメント:
- タマモの昔語り第4弾。
いよいよ玉藻VS泰成の話です。
泰成は晴明コンプレックスになってもらいました(笑)
今回注目キャラは源為朝ですね。
義経に次ぐ源氏の悲劇のヒーローです。
彼が実際に鳥羽法皇の病の原因たる崇徳上皇の呪いを払っていますが、結局は九尾の狐を追い払った泰成が手柄を独り占めしたことになります。
「弓弦の儀」ですが古来から弓の弦を鳴らすことで魔を退けるといいます。
今でも神事やお祭りでやっているところが有るそうです。
次が最終話になりそうです。
では感想よろしく! (JIANG)
- −sigさん
>『数えるほど』と言うのが曲者なんですよね、大抵は。
裏設定なんですが今回ちょろっと出ている関白藤原忠通とその取り巻きがその曲者たちです。で、その取り巻きの1人が安倍泰成なんですよ。
そして、彼らの反対勢力が忠通の弟で内覧の藤原頼長一党なんです。 (JIANG)
- −sauerさん
今回はタマモの主観で書かれているというのも泰成が情けなくなっている一因です。
それに晴明はやはり人間離れした力のある陰陽師というイメージがありますからね。 (JIANG)
- しかし、いつもながらうまい文章ですなー。
いよいよ次で最終話ですか!ではまたせてもらいます。 (タカ)
- このお話での玉藻前はどんな状況でもクールに振る舞っているようにみえますが、実際には色々感情的な部分があったのでしょうね(深読み)。次回、どうなる?(分かっているものの、一応) (Iholi)
- やっぱり、前世の彼女(このお話の中のタマモちゃん)は、高貴なイメージがありますね。
やはり、九尾の狐は、こうでなくては。(笑)
裏設定が、かなり高い完成度を誇っていますね。泰成は、やはり人気の面では晴明には勝てないんですね。(笑) (sig)
- やはり、タマモちゃんは
『愚者』には冷酷(?)に、
『賢者』には理解を示す(?)
…というのが あってる様な気がしました♪(イマイチ、言いたい事がまとまってない…)
今回もかなり良かったです。 (sauer)
- ふわー(呆けてます)
なんでこんなにかけるんだろう
やっぱし凄いですね(感動) (hazuki)
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa