ザ・グレート・展開予測ショー

狼牙(五)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 7/24)




 ー狼牙ー



 ー倉の前に、彼は居たー

 『神奈』・・・そう名乗った女性の頼みを、この屋敷の前に留まるのを既に決めていた事から、気分を変える為些事に付き合うのも悪くない・・・そう考えた彼ー・・・『伊達雪之丞』は今、見るからに物々しい・・・来る者全てを拒むかの様な雰囲気を醸し出す、寂れた『倉』の前に居た。
「・・・・・・おい!」
 頬を流れる冷や汗を拭いつつ、雪之丞は彼女に問う。
「何だ・・・ここは・・・この凍るみてぇな殺気は!?」
 ー殺気ー
 それは明確な『殺気』だった。
 この倉に近づく前から・・・長い間雨風にさらされ、草は生える一方、塗装も剥げヒビだらけの壁があちこちにあり、廃虚としか形容し得ない屋敷・・・階段を登りきり、その屋敷を見た瞬間から、彼はまるでその身を鋭利な刃で斬り裂くかの様な、濃密な殺気を感じとっていた。
「・・・・・・」
 神奈は答えない。ただ黙って彼の前に立ち、倉の扉を見つめている。この殺気を感じた時から、雪之丞は彼女に同じ質問を繰り返しているのだが、答えようとする気配すら無い。
(・・・また黙殺かよ・・・くそっ!)
 そう結論づけ、頭髪を掻きむしった、その時。
『護る者』
「あ?」
 微かに聞こえた彼女の声・・・こちらに背を向けたままだが、今のは確かに、階段をあがる前に耳にした、落ち着いた感じを受ける彼女の声だった。
「護るもの・・・だと?」
 神奈が肩越しに、こちらへと振り向いた。
「この倉にはやはりこのほ・・・この地に暮らす人でなければ破れない結界が張られている様です・・・お願いできますか?」
(うさんくせぇ・・・)
 正直・・・雪之丞はそう思った。こちらの問いに対し彼女は、ハッキリと答えたわけでも無い。そしてこの屋敷に、この倉。
(考えてみりゃあ何でここはこんなに廃れてんだ?こんな広い所を遊ばせとく程、世の中余裕も無い筈だ・・・それに・・・)
 雪之丞の脳裏に、『二人』の姿が浮かびあがる。敗北を喫した男と、その師であり雇い主でもある色黒の女性の姿が。その二人の、妙にピリピリとした雰囲気を思い出した時、雪之丞の心は決まった。開いた右の掌を、倉へと向ける。
「いいぜ・・・下がってろ!」
 この倉だ・・・それは間違い無い。この屋敷の事・・・そしてあの二人の事も、全てこの倉が関わっている。なら・・・

『今俺に必要なのは、もう一度本気のあの野郎と戦う為の理由!それだけだ!』
 
 雪之丞の右手から、霊力の光が放たれー・・・そして・・・

 ドグアァァッッ!!!

「ケホ!・・・や、やり過ぎでは・・・?」
「うるせぇ!」

 倉の中まで『若干』吹き飛ばしはしたが・・・扉は開いた。
 ごまかす為なのか、咳払いをする。

「ゴホン!・・・んじゃ中に入るとすっか」
「あ!駄目!」

 神奈の制止も聞かずに・・・雪之丞が一歩、倉の中へ足を踏み入れた、その瞬間。

 ゥオン!

『盗人が・・・性懲りも無く!』



 ー白刃が横薙ぎに、彼の身に迫ったー



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