ザ・グレート・展開予測ショー

前世の幻 -タマモ-(3)


投稿者名:JIANG
投稿日時:(01/ 7/23)

ある日、私はちょっとした失敗をしてしまった。詩歌管弦の宴の席で突然の風で灯火がすべて消えてしまい暗闇となってしまった。お酒に酔っていたのだろう、自分の正体は極力出さないよう注意していたのに、周りを照らすために自分の体を発光させてしまったの。

これには周囲にいた人たちは驚いて騒ぎになりかけた。でも法皇が前世の優れた善行がこの様に体から光を発するに違いない、とかばってくれたのでその場は何とか収まってくれたわ。
そしてそのことでますます私は法王のお気に入りとなったので、私に文句の言える人たちは数えるほどしかいなくなったわ。

私の宮中での生活は快適になったけど、それは長くは続かなかった。法皇が病に倒れたの。
この急な病の原因はまたしてもあの上皇の天狗の仕業だった。私はこの呪いをふさぐために法皇の寝所に結界を張った。

本当は、人間の生き死にや争いには関わりたくなかったけど、法皇にはいろいろと世話になって、可愛がってもらっているから、九尾の狐としては借りを返さないと。
それに、まだ贅沢もしたかったしね。

だけど上皇の呪いはすさまじいものだった。この私が結界を張ったにもかかわらず、法皇の体は日に日に弱っていく。もし私が自分の精気を分け与えていなかったら、あっという間に死に至っていたわ。この時、私は人間の恨みつらみというものがいかに強くなるのかということを悟った気がしたわ。

典薬頭(宮廷医)も手の施しようがなく、とうとう陰陽頭である安倍泰成を呼んで法皇の病の原因がなんであるのかを占わせたの。
彼は、あの晴明の子孫だということだから、きっとこの原因を突き止めて解決してくれるだろうと期待したのだけれど、御所に邪気が充満しているとだけ言い、病気平癒と怨霊退散の祈祷をするように言っただけだった。

私はいぶかしく思ったけれど、上皇が法皇を呪っているなどと臣下である彼には言えなかったのだろうと善意に思いこんだわ。

朝廷では彼の助言を聞き入れて全国から高名な僧侶を招いて調伏の祈祷を行ったんだけど、法皇の病状は変わらなかったわ。
だからもう一度、朝廷から彼にお声がかかったわ。今度は原因そのものを突き止めるようにと…。

泰成ははじめ、法皇や高官たちの前で言を左右にしてなかなか口に出そうとしなかった。
私は上皇が呪っているなんて口には出せないのだろうと同情していたのだけれど、廷臣たちに詰め寄られて、とんでもないこと言ったの。

法皇さまのご病気の原因は、妖狐の化身、玉藻前の仕業に相違ありません、と……。

私は誤解していた。彼は上皇のことが表沙汰になったときのことを想像して言いよどんでいたのではなく、私を寵愛している法皇に気遣いして今まで何も言わなかったのだということを。

彼は私の妖力と上皇の恨みによる呪詛を混同してしまったのよ。いいえ、より近くにいる九尾の狐たる私の妖力が法皇を害していると勘違いしたのよ。
なんという愚か者だろう。私の妖力と人間の呪詛の邪気とを間違えるなんて、あれが本当に晴明の子孫なのかと疑ったわ。

私を救ったのは法皇の言葉だった。玉藻前は朕が病になってから一時も離れずに看病してくれた。そのものが化け物のはずがない、と……。
廷臣たちはそれに肯き、泰成はこれ以上何も言わずに引き下がった。
私は一時難を逃れることができた。

法皇は私を信じてくれている、それが嬉しかった。

つづく

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