ザ・グレート・展開予測ショー

狼牙(一)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 7/22)




 ー狼牙ー



 空が一面、灰色に覆われた日。

 今にも雨に降られそうな日に、彼は一人だった。

「あー・・・ちきしょう!あの童顔ペテン師!」

 一人街をただ歩く。目的など無い。目指す場所などある筈が無い。彼にはただ居場所が無い・・・それだけだった。

「・・・・・・くそっ!」

 すれ違う者は皆、揃って顔をひきつらせる。大半の者は異質なものを見る目で。ごく希にうさを晴らす獲物を見つけたと、愉悦に顔を歪めた身の程知らずもいたが、数分後には逆の感情を胸に刻み、よたよたと退散する。一様に顔を腫らして。
「・・・・・・」
 気は晴れない。晴れる理由が無い。この空と同じ、よどんだ彼の心は更に昏く染まっていく。それでも彼は歩いた。全てに背を向けて。


 ひたすらに彼はー・・・歩いた。


 ふと気づくと、見知らぬ場所に彼はいた。

「・・・・・・」

 誰もいない。知らない。自分は迷いこんだ異分子。その場所は彼の胸の奥底に追いやられたモノを呼び覚ました。
「昔に・・・戻ったのかも、な・・・」
 霊力に目覚め、魔族に師事した時。その時はただ、強くなる事だけを考えていれば良かった。周りも皆同じ。迷う時間も、必要も、その頃の彼には無かった。迷う心すら。

 その頃の荒んだ自分が戻ってくる。自ら封じた衝動と共に。

 ーその時ー

『ぉ・・・・・・ぃ』

 ふと・・・何かに呼ばれた錯覚を抱き、足を止める。
「・・・・・・?」
 その声ー・・・声かも解らない、自分を呼び止めたモノ。不思議と気になって、彼はしばらくの間視線をさ迷わせる。そうして彼の目は、ある場所で止まった。
「・・・でけぇ屋敷・・・だな」
 彼の目は最早廃虚と化した屋敷を写していた。大きい。やたらと長い階段の向こうに、その屋敷は見える。門は開いていた。
「・・・・・・」
 その屋敷は自分を招きいれようとしている。何故だかは解らない。解らないが、彼はその事を確信した。

 一歩、踏み出す。

 その時・・・背後から声がかかった。

『雪之丞?』

 男と女。どこかで聞いた声。振り替えると見知った顔が二つ、並んでいた。身長差がある筈だが男の方が大荷物を背負っていた為に、文字通りだ。

『おたく・・・なにしている・・・ワケ・・・?』

 女が口を開いた。その声は凄味を感じさせる。瞳にも何かしらの強い想いが見てとれた。

『返答次第によっちゃあ・・・』

 目の前の女からのプレッシャーが強くなる。馴染みのあるプレッシャーだがこれ程強く、しかもそれが自分に向けられた事など初めてだ。

 雪之丞はやはり確信した。この屋敷・・・この屋敷が自分を、そしてこの二人を呼び寄せた事を。



 ー雨が、降りだしたー



今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa