ザ・グレート・展開予測ショー

虎と狼


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 7/21)

 
 ーその日ー

 その日、見事な月が、雲間から姿を覗かせていた。

 紅い月。

 第六感・・・とまでいかずとも、ある程度勘が働く『モノ』はその月に何かしらの『感情』を抱いた。それは全身を粟立たせずにはおかない・・・それでいてその月を見ずにいられない。そんな感情。

 行き交う人々全てに、その感情を抱かせる程、今宵の月は禍禍しい『何か』を感じさせた。


 身震いする程の、何かを。



 <ー虎と狼ー>



 屋敷がある。

 古い屋敷だ。人がいるかいないか、そう問えば誰もがいないと答えるだろう。それ程その屋敷は人気も無く、誰もが近寄り難い雰囲気を持つ・・・そんな屋敷だった。

 主のいない、打ち捨てられた屋敷。虫達が我が物顔に徘徊するその屋敷に、今は不思議と・・・その気配すらも無かった。

 いつもは五月蝿い程の虫達の声も無く、無論人の声などその屋敷には・・・無い筈だった。

「ハァ・・・ハァ・・・!」
 
 荒い息遣い。

 そこは屋敷の庭だった場所・・・池の水は干上がり、草の手入れなどされるわけも無く、今は純然とした廃虚の一角に過ぎない場所・・・

 そこに『二人』はいた。

 荒い息遣いなのは、痩躯のやや背の低い男。鎧を身に纏っている。今その男は外傷など無いにも関わらず、左手で右の肩を押さえていた。誰の眼にもそうは写らなくとも、男にとってはまるでそこに今も血を流し続ける傷があるかの様に。ただひたすらに、男は『傷』から血が溢れるのを、抑え続けていた。指の先にまで震えが走る。それでも右手に携えたものに込める力は一切緩めずに、男はその場に立っていた。

「・・・・・・」

 黙ってその様子をただ見続けるのは、大柄の男。その男は明らかに顔色を蒼白にし、歯を噛みあわせた痩躯の男と相対したまま、動かない。その眼はその様子から何かを計っているかの様に、瞬きする事も無く、ただ苦しげな男の姿を写し続けていた。


 やがて・・・大柄の男が口を開く。


『あきらめるんじゃ・・・雪之丞・・・』


 大柄の男の言葉に応えるかの様に、痩躯の男の手にある『刀』が、月の光を反射するかの如く、白く輝いた。


 ーそして、二人の姿が交差するー



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