ザ・グレート・展開予測ショー

雪と雹(中編)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 7/17)


 時は少し、遡る。

 この日、彼は自室で目を覚ました。
「ふわ〜〜〜ぁ・・・」
 大あくびを一つ、そうして起き上がった彼の姿はシャツ一枚にトランクスだけだった。
 顔を洗うべく、部屋を出て公共の洗面所へと向かう。一応大家は女性なので、ズボンだけは身につけていた。

 ここはマンションと呼ぶにはあまりにも趣があり過ぎる場所。
 ここは住人と呼ぶに相応しい者など一人として存在せぬ場所。

 その例に漏れず、彼もまた住人としての義務を果たすのには厳しい状況に追い込まれていた。顔を洗い終え、歯を磨きながら考える。その死活問題を。

(・・・・・・家賃どーすっか・・・)

 答えが出なかったのは、言うまでも無き事だった。



 ー雪と雹ー<中編>



 試験にも無事落ち・・・彼は今、紛う事無きオンボロアパートで、日雇いのバイトに明け暮れる毎日を余儀無くされていた。
「あの時資格手に入れてりゃあ・・・くそ!」
 不機嫌な霊波を撒き散らしつつ、小型の冷蔵庫を開ける。
 そこには賞味期限の切れた牛乳しか無かった。赤貧生活の定番とも言える。
「ちっ!」
 叩きつける様に冷蔵庫の戸を閉め、やむなく気分転換の為散歩をしようとドアに近づいた・・・その時。
 バーーン!
『ブッ!?!』
 突如、内側には開かない筈のドアが、唸りをあげて部屋の中にいた雪之丞の顔面に激突した。鼻の辺りを押さえてうずくまる雪之丞。そんな彼の耳に快活な子供の声が飛び込んで来た。

『ひゃーボロッちートコだなー!あれ?何やってんの??』

 ガバアァァッ!
「何やってんの??・・・じゃねぇ!」
「ひゃっ!?」
 勢い良く起き上がった雪之丞。その形相はまさに『修羅』だった。少年が驚き、後ずさる。
「え、あ・・・」
「!(子供かよ・・・)」
 そこで雪之丞は自分が子供相手に怒鳴りつけた事に気づいた。
 気まずそうに頭を掻く。
「・・・・・・あー・・・」
 そこで、尋ねた。
「何だ?てめえは?」

 数分後、彼はかすれて読めないメモ帳を必死で解析していた。

「・・・今度こそ!」
『ピーこの電話番号は現在・・・』
 グワッチャアン!
 受話器を置き、肩で息をしていると、背後から声がかかった。
「いー加減あきらめなよ、・・・何が不満なのさ?」
『全部だ!』
 即答する。少年は肩をすくめた。
(あの医者話が違うじゃねーか!誰が預かるとまで言ったよ!?くそ!かからねぇ!)
 もはやその医者本人に直接話をつけるのはあきらめ、雪之丞は友人にガキを押しつける事にした。
「第一候補はタイガーんとこだ!美神のとこにはおキヌがいるからな・・・『教育』にならねえからな・・・」
 何だか邪悪な事を考えている内に、電話がつながる。
『はいこち・・・アーッハ・・・おかし・・・何・・・権兵・・・タイガ・・・水・・・』
 雪之丞は黙って電話を切った。第二候補に全てをかける。
『こちら美神令子除霊事務所です。申し訳ありませんが、ただいま留守にしております』
 聞き覚えのある少女の、静かで落ち着いた声。嘆息し、やむなく電話を切ろうとしたところに、今度はせっぱつまった声が鼓膜を揺さぶり始めた。
『ど、どなたか存じませんが!お知り合いの方でしたら今すぐ事務所に来て下さい!核戦争が起こるかもしれないんです!これを聞いた方どうか・・・』
 雪之丞は黙って電話を切った。第三候補の六道家に・・・
「・・・あれ?」
 電話が通じない。何度試しても駄目だった。
「そこ・・・」
 少年が指さす方を見ると、回線がクワレテイタ。ネズミニ。

 雪之丞は哭いた。


 それから十五分後。

 雪之丞は電話ボックスの前にいた。少年も後方についている。
『公衆電話なら十円だしな、何と四回もかけられるぜ!』
 超特濃の赤色レベルの貧乏男のその言葉に、背後の少年がため息をついた。
「そんなにお金無いのかー?」
 ギロリ!と少年を睨む。
「あーそーだ!だからてめえに関わってる暇なんざ・・・」

『仕事紹介しようか?手土産代わりに依頼の書類持って来たんだけど・・・』
『・・・・・・』

 『プライド』と『生活』が天秤にかけられる。激戦の末の勝者は『生活』だった。少年を肩こしに見、尋ねる。

「名前・・・何てんだ・・・?」


 そして、月の無い長い夜が、二人に訪れた。


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