ザ・グレート・展開予測ショー

雪と雹(前編)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 7/16)

 


 ー雪と雹ー<前編>



 その日、月は見えなかった。
 ダンッ!
 何者かが常人離れしたスピードと跳躍力で、ビルからビルへと渡り、駆け抜ける。辺りは闇に包まれている故に、その姿をはっきりと捉えるのは難しいが、それでも解る事があった。二つ。

 その内一つは、その『何者』かがヒトでは無いという事。

 ・・・そしてもう一つは・・・

 バッ!
『くそ!しつこいンダヨ!』
「・・・しつこいのはてめぇだ!いい加減観念しやがれ!」
 その何者かは追われていた。明らかに人とは違う、異形の姿をしたそのモノを、ただひたすらに追い続けるのは一人の男。こちらもまた全身に異質な鎧を纏い(ただ声からして若い男だと推測はつくが)容貌といい、更にはその超人的な運動能力からしても人間離れしていた。しかし彼は闇に潜む『ケモノ』では無い。むしろそれらの闇に潜み、人に害を為す化物等を狩る事を生業としたハンターだ。正規の資格は持っていないが。

 都会の闇をその住人と、狩人が疾走する。

「・・・あら?」
 ふと、何げなく彼らが駆け抜けたビル群を目にした一人の女性が立ち止まり、その瞳に疑念の色を浮かべた。連れ添う友人達も、彼女の様子に気づいて立ち止まる。
 酔っているのか、ケラケラ笑いながらも友人の一人が彼女に声をかけた。バンバンと背中を叩く。
「どうしたのー?宇宙人でもいたのー?」
 冗談ぽく、笑いながらの一言。しかし彼女はその一言を正面から受け止めた。ややあって口を開く。
「宇宙人か・・・そうかもね・・・」
 四、五人程いる友人達は皆、その言葉に怪訝な表情をした。
 しかしそれも束の間。全員笑い出す。
『めっずらしいわね!あんたがそんな返しをするなんて!きっと明日は雪ね!もしくは雹かも!』
「オイオイ!今真夏だぜ!?」
 その言葉にまたも大笑いする友人達。しかし彼女は笑わず、ただ黙ってビルを見つめ続けていた。しばらくそうしていると、友人達が移動していた。10メートル程離れた場所から、こちらへ手を振っている。
「ほらー!早くおいでよー!」
 その急かす言葉に、やむなく彼女は駆け出した。いろいろと大切なものを詰めたポーチを手に、友人達の元へ。
「・・・・・・」
 走りながら彼女は考えた。先程目にしたモノタチの事。続発する霊障の事。そして自分が今現在目指している職業の事。

 そしてその夜。 ー彼女は決意したー

 
 同時刻。

 追跡劇も終幕へとさしかかっていた。

 今彼は路地裏の袋小路に獲物を追い詰めている。
「やっとあきらめやがったか・・・さあ言え!てめえらがさらったガキ共はどこだ!?さっさと白状しやがれ!」
 惜しみ無い修練とそれによって築かれた実力。それらに裏打ちされた己の優位を信じて疑わぬその言葉に対し、そのモノは意外な反応を見せた。
『あきらめた、ダァ?何勘違いしてんダヨ?お・バ・カ・さ・ん?ヒヒヒッ!』
 彼は慎重に物事を考えるタイプでは無い。というよりも純粋に行動派だ。一気に理性が消え去って行く。
 彼はズカズカと、眼前のムカつく化物のツラをブン殴ろうと、大股で近づいていく。

 その時。

 背後から、重なったいくつかの悲鳴が路地裏に響いた。

「!?」
 隙は見せずに背後に視線を巡らす。悲鳴は崩れかかったビルの上から聴こえた・・・闇の中をよく目を凝らしてそこに目を向けると、前方の『野郎』に酷似した姿の、もう一匹の化物がいた。そのむやみに太い腕に、三人の子供達が苦しげな表情で捕らわれている。
「て・・・めえ!」
『言っておくガ・・・あれで全部じゃ無いゼ・・・アジトにはまだ末のオトートとガキ共ガ・・・』
 立場は逆転・・・否、そうはならなかった。
 ドンッ!
 鈍い音。
 その音がしたかと思った次の瞬間、子供達を捕らえていた化物がゆっくりと落下していく。見ると子供達は四人とも無事に屋上にたたずんでいた。皆ぐしゃぐしゃに顔を歪ませるのかと思いきや、平然と深呼吸していたりする。
「タフなガキ共だぜ・・・特にワープロ片手にした奴・・・」
 その言葉を聞き、子供達の内、一人が大声で叫んだ。

『誰がガキだって!?雪之丞に言われたく無いね!』
 
 そう言って、四人いた子供の中の一人がビルから飛び降りた。
 法則に従う事無く、羽根の様にたゆたい、地面におりたつ。

『て、てめぇラ・・・!?』
 一転追い込まれて、目前の獲物が思いきり動揺し、震える声を出した。鼻で笑う雪之丞。

『さぁて・・・もう人質はいねぇ、残りのガキはどこだ!?』
『うわ〜変わり身早・・・』

 ガン!

 頭をこづく音が響いた。


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