Bar Bourbon Street Lullaby
投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 7/16)
新宿歌舞伎町、店によっては極上の酒を提供するが、残念ながら人為的な魔窟だ。
だが、そんな所へ行かなくても女一人でも安全にして雰囲気を楽しめる店も有る。
六本木などがその代表例か。
その場所かどうかは判らないが、安全を保障する店で女が一人カウンターの端にいる。
「何になさいますか?」
「う〜ん、オレンジ〜〜〜ジュース〜〜下さい〜〜」
バーだと言うのにアルコール類を一切頼まないではや1時間。夏の太陽も落ちた。
「あの客なんでしょうね?」
割合に若いバーテンがあまり喋らない老バーテンに囁く。
「人を待ってるんだろ、あまり詮索しないこった」
一言で、何が気に食わないのか透明になりきったガラスのコップを丹念に拭く。
渋顔をした若バーテンはとなりにいたウエイトレスに、
「彼氏と約束か?でも1時間もいるんだぜ、どうおもう?」
「こないと思うわね。あんな可愛い子、ほっぽらかすなんて酷い男」
ほかの店員も同じような意見であったが、
「いや、来るさ」
老バーテンの確信はどこにあるのか。
「んじゃ賭けます?」
「やめとけ。おまえの負けだ」
瞬間、一人の男がやってくる。若バーテンが声をかける。
「いらっしゃい。お一人さんで?」
「ちゃうわ。連れが先にきとるはずやが」
関西なまりのある男は店を見渡すと、目的の女性、六道冥子の隣に座る。
おっと冥子ちゃん、済まん遅れたで」
「あぁ〜ま〜〜〜くん やっと来て〜〜くれたのね〜〜」
まーくんと呼ばれた男、当然ながら鬼道政樹その人である。
驚きを隠せないは若バーテンである。
「よくわかったすね」
「この商売ながく続けてるとな。まーくんさん、何にします?」
見知らずの老バーテンの一言も年齢を巧く重ねた所以(ゆえん)か嫌味に聞こえない。
「せやな。バーボンをロックで頼むで。ホンマすまん冥子ちゃん。学校のミーティングが長引いたんや」
「そぉ〜なの〜〜でも冥子はぁ〜〜1時間も待ったのよぉ〜〜〜」
「せやから済まんて。お詫びにここの勘定はワイが持つさかい、許してぇな」
頭を掻きながら政樹は謝っている。
「電話ぐらい〜〜入れて〜〜くれても〜〜、いいじゃない〜、でも〜〜いいわ」
冥子の許しが出た丁度に老マスター秘伝のバーボンがやってくる。
これ以上にないタイミングだ。
「バーボン、ロックです」
先ずは唇を湿らす程度に呑む。
「でも、どうしたん?急やったけどワイに会いたいなんて連絡もろぉて?」
「うん〜〜あのね〜〜冥子ぉ〜今日は落ちこんでるの〜〜」
再度、持ちかけたグラスをカウンターにおいて、
「どないしたん?」
いくばくか避けていた冥子の目をじっと見据える。
アルコールも入れてないのに、顔に赤みが増す。
「今日ね〜御仕事に〜〜行ったのぉ〜」
「ほぉ」
右腕を上に組んでいたのを身を少し起こして反対にする。無意識の行動であろう。
「でねぇ〜、冥子一人じゃ〜恐かったからぁ〜、令子ちゃんにも頼んだのよ〜〜」
「ふんふん。ほならしくじり(失敗)はあらへんかったやろ?」
冥子、泣きそうな目をして、
「でもね〜、壊しちゃったの〜〜クライアントさんのビルをぉ〜〜」
「せやか。でも何時もの事やんけ」
けたけたと騒がしくならないように笑う。
「し、失礼ねぇ〜〜でもそんなことよりもぉ〜〜令子ちゃんの〜〜一言がぁ〜〜」
全壊したビル上から、
『冥子!あんたいい加減にしなさい!!付き合ってやってこのザマは何よ!』
横島は何時も通り瀕死状態であった。オキヌちゃんも普段は止めに入るところが今回ばかりは美神に同意のようだった。
「でねぇ〜最後にこぉいわれちゃったの〜〜『あんたなんかGSやめなさい!』って〜」
冥子もこの言葉には堪えたらしい。
「まぁ、美神はんの気持ちも理解できんでもないで」
こんどはちゃんとグラスを口まで運んで琥珀色のバーボンを喉に通す。
氷が溶けてグラスの中でカランと鳴った。
「えぇ〜〜」
冥子の悲鳴にも似た絶叫の後、カウンターに塩水の染みが形成される。
女の涙は男を惑わせるというが、鬼道政樹には効かない。
「せやがな」
鼻をすする音が聞こえ始めた頃、グラスをおいて、否定語を発する。
「せやが、ワイは冥子はんが羨ましいで、そらちいたぁ問題は有るにせよ」
「有るにせよぉ〜?」
「一線でそれなりの成果は残しとるやろ?」
政樹はポケットから清潔な白いハンカチを冥子に渡し、涙拭きぃなと、言ってから、
「ワイも、霊能力は有ったで、やが現場ではちゃっちーモンやった」
今の学園講師をやる前に幾度か仕事をしていたそうだが、結果は残せなかった。
「多分、ず〜と冥子ちゃんをやっつける訓練しかしてなかったせいやと思うわ」
「そ、そんな事、ないよぉ〜〜〜」
冥子の涙も止まった。政樹の弱い部分を自分にぶつけられた戸惑いがあるのか。
「優しいな、冥子ちゃんは。でも現実は非情や。せやからワイは講師を選らんだんや。一応霊能を活かした仕事やしな」
幸い冥子の母親である理事長の推薦もあって今の身分にありついてる。
「でもぉ〜先生になるのだってぇ〜〜力が〜〜あるって〜〜お母様が認めたからよぉ〜」
それはそうである。
「まぁな。せやからワイは羨ましいゆうてるねん」
グラスの中には爪一筋分のバーボンが残っている。
「そら、美神はんやエミはんは別格と思うわ。でも冥子ちゃんも当時の試験で3位、自信もたな」
冥子に幼い笑顔が戻った。
「うん!そぉ〜だよね、えへぇ〜ありがとぉ〜、私ねぇ〜〜さっきまで先生になろぉ〜かまよってたのぉ〜〜」
慌てる鬼道政樹の次の言葉は、
「そ、そらあかん、何故ってな。あの学校、教師どうしの恋愛は御法度なんや」
言った後、酒の所為でもなかろう、耳の裏まで赤くなる。
冥子も政樹の真意が判った時には目を大きくして驚いている。
だが、
「冥子、うれし!」
俯いてしまった政樹、頬に柔らかい感触を味わっている。
「め、冥子ちゃん」
そういった政樹の呂律が少々訛り、声のトーンが上ずる。
「でもねぇ〜〜、まーくんは女子高でぇ〜〜働いているでしょ〜〜浮気しそ〜〜」
琥珀の酒を雫一筋残さず呑み干してから、
「そんな事するかいなぁ。生徒は所詮はお子さん方やで。冥子ちゃんのような色気はあらへん」
「まぁ」
政樹のグラスが空なのに気づいた若バーテンがやってきて、
「次は何にいたしましょうか?」
無粋といえばそうかもしらぬが、二人の熱い空気を払拭した功績は大きい。
「せ、せやな。何にしよか?」
「そぉねぇ〜〜じゃあぁ〜〜冥子も冒険してぇ〜〜お酒〜〜のんじゃお〜〜かな?」
メニューを見始める二人の前に、老バーテンがやってくる。
手に二つ小さなグラスを持ってきて、
「こちらがよろしいでしょう。カクテルですが『ファースト・キス』当店で最も軽い物です」
この老バーテンには流石という形容以外思いつかない。
「そか、ぴったしや。冥子ちゃん、乾杯」
「かんぱーい、まーくん」
ちんとガラス特有の耳に心地よい響を残す。この音はビールジョッキでは出せまい。
初のアルコールというだけあって、冥子の酔いは早い。
「うふぅ〜酔っちゃったぁ〜〜」
「そか、ほな帰ろか。家まで送ってくで」
冥子は政樹の洋服を掴んで言った。今日は帰りたくないの、と。
「・・・ホンマかいな。出来すぎやで、確かに今日の占い恋愛運は最高マークやったが」
仕事場へ行く前に見たテレビで放映の星占いがそうであったか。
「ふ、ふん。バーテンはん。勘定や」
東京の夜に男女二人で泊まれる場所は少なくない。
今宵、東京に又一つ新しいカップルが誕生した。
この様子を見ていたウエイターが少し涙ぐんでいる。
「綺麗。本当に綺麗な恋ね」
涙を拭こうと指を目に持っていく彼女にぽん、と肩をたたく老バーテンは、
「こういうのが見れるのがここのバー、バーボンストリート、だ」
今日は喋りすぎたと老バーテンは最後に付け加えた。
-FIN-
今までの
コメント:
- 私の場合ですが、
こういう文章を書くとき、私の場合先ずお気に入りの曲(主にジャズですが)を
煙草と共に何度も聞き返します。二本ぐらい潰しますか。
そして舞台を想像します。主人公を誰にするかは後回しにします。
次に書き始めか、最後の締めの文章を決めます。
そして最後に登場するキャラを決めて、細かい部分の調整を頭のなかでします。
そこまで行くと、書きながら台詞や文章の情景が自然と出てきます。
どうやったら書けるの?という前回有ったコメントの答えになっているでしょうか?
又、絵画からもインスピレーションを得る事も有ります。特に有効なのはテレビ東京で
OAされている『美の巨匠たち』という番組が最適かと思います。
御参考になればと思い、後書きに代えて掲載させて頂きます。 (トンプソン)
- 2位っスね…冥子ちゃんのプッツンでエミさんが敗れたらしいっスよ。(見てみたい)
ぐぐぅ!あの京弁でこんなに自然に台詞書けるなんて羨ましい限りです。
鬼道「君のがあかんからなおさら良く見えるんちゃう?」
ぐ…そんな事ぁねぇ! (ダテ・ザ・キラー)
- すっごく羨ましいっ!!!(冥子さんが…マジに!!)
あぁ、けど良かったですねぇ。この二人なら、どこまで行こうがしあわせそうで………
東京か…そのうち行ってみようかな………?(彼女をつれて!!………泣)
と、とにかくスゴク良かったです!!では……… (sauer)
- ↑・・・・・・・『彼女』・・・彼氏じゃないの?・・・(・・・・・・・・!?)
わたしの事かぁぁぁぁぁあああっ!!!???(あんた、ソッチの趣味は無かったんじゃ・・・)
・・・・・・脱線ですね。ごめんなさいです。
・・・あぁ・・・こういう店で飲みたいですね・・・・・・・・・ホントに。 (sig)
- 冥子。落ち込んでいても式神を出さない様に成ったのは、えらいえらい。
鬼道。「プライドを脱ぎ捨てて裸になってからが、真の男の見せ処」って奴でしょうか。ニクイね。 (Iholi)
- す・・・・・すご!(汗
よくかけますね〜、こんな風景が凄くわかるような文が・・・(羨ましい
そういえば政樹はどうやって先生になったのかぎもんでした
こういうことだったか(笑
では、賛成入れさしていただきます (トシ)
- 巧いです!
と・・・いうかこーゆう文章かける人になりたいなあ(羨)
ジャズ・・・・・持ってない・・・タバコ・・・・吸ってない・・・(涙)
しくしくしく
真似もできんいうかあああっ(やっても無駄やて)
酒でも・・・・いや・・・飲んだ日には物凄い事になりそうだし
でも本当にトンプソンさん独特っていうかそーゆうのすごく好きです。 (hazuki)
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