ザ・グレート・展開予測ショー

ワショクヤの日々(終)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 7/15)

 実に最悪な目覚めだった。
 この布団の寝心地は良いし、座敷を独り占めだ。悪くない。
 それでも気分は最悪だった。何しろ今の今まで、フランソワと権兵衛、この名を延々と聴かされ続けるという悪夢に捕らわれていたのだから。
(・・・で・・・それじゃあ・・・)
(・・・なら・・・どーして・・・)
 気分のすぐれぬ私の耳に、良く聞き取れ無いのだが、複数人の話し声が飛び込んで来た。
「・・・・・・」
 余り気は進まないが、このままこうして憂鬱な思いを抱いてここにいるよりはマシに思える。私はその話し声のする場所に向かうべく、身を起こした。ややふらつきながらも座敷を出る。
 そうした途端に、トラウマになりそうな会話が聞こえた。
『よ、よせよ・・・照れるぜ権兵衛・・・』
『・・・でもやっぱり可愛いわ!フランソワさんっ!』
 またも闇が襲いくる。しかし今度は呑まれなかった。
 ダギュン!
 私の意識を繋ぎとめたモノ。
 それはー・・・銃声だった。



ーワショクヤの日々(終)ー



 一気に感覚が鋭さを蘇らす。銃声が先程まで場を包んでいた和やかな雰囲気を吹き散らせた為だ。
「・・・っ!」
 たまらず私は駆け出した。銃声のした方に向かって。無論注意は怠らずに。やがて耳にした事のない声が聞こえて来た。
 そこで足を止め、食堂の入り口の横に身を潜ませる。
 そっと覗きこむと・・・いつもなら大勢の客で賑わうであろう場所。今そこには関係者が首を並べていた。不幸中の幸いか、客の姿は見えない。悪運強い店だ。
 ともかく・・・その中で一番目をひいたのは銃を握る男の服装だった。私は慎重に男を観察する。
(あれは・・・モデルガンね。て事は警官の格好して喜んでる変態か何かか・・・)
 とりあえず相手が警官で無い事にはホッとした。しかしモデルガンとはいえ殺傷力は充分の様なので、気は抜けない。
(とにかく、あいつの注意を逸らしゃーいいか・・・そうすれば一足飛びにシロが斬りかかるだろうし・・・)
 私は姿を見せて、男の注意をひく事にした。偶然通りがかった振りをする。
「何よ騒がしいわねー!」
 そいつの注意をひく為、大声を出す。
 そこで・・・予想も出来ない事が起こった。
 チッ!

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 何が起きたのだろう・・・頬を何かがかすめた様な・・・
 見ると事務所のメンバーは、皆青ざめて歯をガチガチ鳴らしている。これしきでそんな風になるほどヤワじゃ無いはずだが。
 次に私は警官もどきを見た。そいつはこちらに銃を構え、いやらしい笑いを浮かべている。

 待った・・・こちらに銃を?
 私は震える手で、何かがかすめた頬を撫でる。
 そこには・・・何だか紅い・・・


 ー私は・・・本気でーキレター
 


 気がついたら既に、陽は沈んでいた。
「はい、逮捕っと・・・」
 私がその声のした方を向くと警官が二人。一人は屈強な肉体をしていて、生気に満ちた顔をしている本物の警官。もう一人はもどきだった。何故かこちらは死人の様に蒼白な顔をしている。
『ガチガチ・・・ガチガチ・・・!』
「・・・一体どうしたんだよこれ?鬼にでも襲われたのか?」
 冗談めかした口調で、手錠をかけた本物の警官がもどきに声をかけた。
 ビクウッ!
 もどきの青年が過剰に反応する。警官は肩をすくめた。
「まーったく!追いかけてた他の連中はみんな帰っちまったってのに・・・検挙は出来たのはいいんだが・・・」
 そうぼやいて警官が仰いだ方に、私も振り向いた。
「・・・・・・な!何これ!?」
 そこはガレキの山だった。
 他の建物は無事なのに、そこだけまるで焼け野原の様相。
 ふと誰かが私の肩に手を置いた。
「横島君・・・それにシロ?」
 二人は私の問いかけには答えなかった。それどころか二人で私を担ぎ上げて猛ダッシュを始める。
「ち、ちょっと!?どこ行くのよ!?」
 慌てて声を上げると、即座に返事が返ってきた。

『逃げるに決まっとるやんけぇぇぇっっつ!!!!!』

 私があのガレキの山が『入嫁狐』で、従業員が皆救急車で運ばれたと聞いたのは・・・事務所に着いてからだった。


 こうして和食屋の日々は終わりを告げた。その店もろとも。


『人間ストレス溜めこむと良くない事が起きるって、こういう事なのねー・・・一つ勉強になったわ!』
『言う事はそれだけかぁぁっ!!!!?』




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