ザ・グレート・展開予測ショー

ワショクヤの日々(六)後編その一


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 7/11)

 現在の時刻、二時半。
 他の店はともかくとして、ここ『入嫁狐』は十一時に開店する。その後昼休みとして、三時から四時まで店を閉める。その間に様々な仕込み、店内の清掃や買い出しなど・・・その他専門の業者から材料を仕入れたりする。これだけなら至極ふつーの店なのだ。こ・れ・だ・け・な・ら。
 ともかく、閉店までもう少し。
 それを心待ちにする私の目の前では、恐らく最後になる客が食事の真っ最中だった。
 ガタン!
 食事を終え立ち上がる。食器を置くや・・・『やった!やり遂げた!』といった表情で腕を高々と上げた。思わず口元がひきつる。それはこの客に対してなのかー・・・それとも・・・
 タタタッ!
「おめでとーございまーすっ!」
 我が事の様に喜んで、にやけてゆるみきった顔の男の『頬』に口づけをする『彼』に対してなのかは・・・解らない。しかし。
 チュ!
「おっしゃぁーーーーーー!!!」
 寒い。寒すぎる。その心境を言葉として放つ。

『アホらし』

 こうして『朝』の仕事は終わった。



ーワショクヤの日々(終日)もしくは讐日ー
<その一>



「あーあ!疲れた!」
 ボフ!
 そう言って私は奥の座席の座布団に倒れこんだ。
「まーったく!まさかあんなに来るとはねー・・・まあ予定通りか・・・」
 静かに・・・座布団の上で正座をした彼女がこちらの言葉に反応する。
「・・・でも美神さん、いいんですか?」
「何が?」
 私はゆっくりと身を起こした。しばらくそれを見つめ、再び彼女・・・おキヌちゃんが口を開く。
「計算してみたんですけど、来てくれたお客さんが百三人・・・その内賞金を持っていった方が・・・」
 その言葉を聞きつつ、ふと思う。
(この娘もタフよねー・・・注文に調理補助、レジまでこなしたってのに・・・)
 妙に感心するこちらをよそに、彼女が言葉を続ける。
「・・・人なんですよ」
 ヤバ・・・肝心なとこ聞き逃した。冷や汗が頬をつたう。
『大丈夫よおキヌちゃん』
 表情をひきしめ、真面目を装う。無論冷や汗はそのままだが。
「あ・・・でも・・・」
 自信タップリなこちらに、逆に動揺する。内心は逆かもしれないが。ともかく私は次の作戦を概要を伝える事にした。
「今回いくら損をしようとね、それはいいの・・・それよりも問題は・・・」
「でも・・・損害二百六十万八千円ですよ。小百合さんまた卒倒しました」
 うっ・・・!
 またも冷や汗が流れる。そんな心中をおくびにも出さずに私は話を続ける。
「だ、大丈夫!昼の作戦はあくまで店の前に列を作るのと、宣伝による知名度アップを狙ったんだから!・・・作戦その一は大成功ね!」
「・・・・・・」
 余り合点がいかないのか、冴えない顔のおキヌちゃんがじっとこちらを見つめてくる。
「あはは・・・」
 ごまかす為、話題を変えよう。
「と、ところで・・・作戦その一の功労者は?」
 おキヌちゃんはただ黙って立ち上がり、座敷を出ると・・・左にある二階へと続く階段を指さした。何故かそちらを見ようとはせずに。
「?」
 私も座敷を出て、指さす方に注意を傾ける。そこでは何やら功労者その一とその二がはしゃいでいるのが見えた。
「・・・何遊んでるの?あの二人・・・」
 素直に感じた事を口から出すと・・・おキヌちゃんはため息をついて右の厨房に姿を消した。
『先生っ!はやまっちゃ駄目でござるーーー!!!』
『離せ!俺は男に・・・それも何十人もの男相手に・・・うがあぁ!!!』
 そんな声が階段の方から耳に届く。とりあえず私は背を向けて、次の作戦をおキヌちゃんに説明し忘れた事を思い出して、厨房に歩を進めた。
「うーん・・・」
 その最中、腕を組み考える。
『喜ぶと思って、記念に撮った写真渡したの・・・まずかったかしら?』
 自問自答するが答えは出ない。私は腕を頭の後ろに持っていった。気楽に言う。

『ま、いーか、死んだら幽霊としてコキつかうだけだし』

 その声が聞こえたのか、一層悲痛な叫び声が聞こえた気がしたが、私はさして気にせず厨房に入った。
「ま・・・あれだけ元気なら大丈夫でしょ」
「そうですね」
 そうして笑いあう。しかし私はまだ気づいていなかった。

 ダキュン! ダキュン!
『ちぃっ!』
『止ーーーーまーーーーーれーーーーーー!!!!』

 災厄が・・・核弾頭しょって、やってくるという事を・・・

 ブルッ!
『ま、また悪寒・・・なんなの?』


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