ザ・グレート・展開予測ショー

その愛をとわに


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 7/ 7)

 水野明日美の、そして真田幸村の怨霊の一件からすでに数週間の時が流れた。
 その後、水野明日美は本来の美しい貌を、はっきり言って美神やエミですら十人並みに見えるほどの美貌を取り戻し、元の生活に戻るべく、安穏と職探しの日々を送っていた。
 以前やっていた事務関係の職種を中心に、ここ数日間で7社の面接を受けたが、どこの会社からも、社長の専属秘書にとか、受付にとか、キャンペーンガールをとか、酷い所ではうちの息子の嫁にでもとか、そういった類の話しかなく。
 彼女にしてみればせめて営業とか、そういった仕事がしたいのに、顔だけを評価するような話ばかりで辟易していた。
 まぁ、自分の顔を誉められてそう悪い気はしなかったようだが。
 
 そんな仕事探しもうまく行かない中、彼女はもう一つの問題を抱えていた。
 それは。
 
 『ようねぇちゃん、話聞いてくれよう。俺が見えるんだろう?』
水野はその日、商社関係の会社の面接を受けたが、今回もあまり言い返事を貰えず釈然としない気持ちの中電車で二駅乗り継いだ先にある自宅へと帰る途中。
 駅前のアーケードを抜け、高速のガード下へ入った時、ふと見た先に紺のブレザー姿の若い男がコンクリート壁から上半身だけを出した状態で、明日美に話し掛けてきたのである。
 あたりはすでに薄暗く、人通りもまばらに有ったので一瞬何か見間違いかと目をこすったが、確かにそこに若い男がいる。
『よーよー、おりゃぁ、ここでいきなり10tトラックに撥ねられてさぁ、コンククリートにめり込んだまんまでられねぇんだよな・・・』
などと語りかけてくる若者。
ま、だからと言ってどう出来る訳でもなく、
「あんたもうお亡くなりになってるんですから、出られる筈ですよ?」
と一応社交辞令のごとき文句を言って、その場を後にしたわけだが。
 そんなことが一度や二度ではないのである。はっきり言ってしょっちゅう幽霊さんを見るようになってしまったのだ。あの一件のあとから。
 そして。

 差のお勤めを終えた唐巣神父は、いつものスタイルのまま庭の家庭菜園の野菜に水くれをしていた。
 一時、美神やピートが少々土をいじったり野菜らをいじったりしたので、先年はまともな物が出来ずに困った物だったが、今年は聖霊石の影響も消え、無事まともな、「しゃべらない野菜」がすくすくと育っている。
 しかし、唐巣は今日も顔色が悪い。実のところ、ここ数日裕福な人からの仕事がなく、また食糧難に陥っていたのだ。
「これだから男所帯わ」
とまた美神にどやされそうだな、と唐巣は自嘲気味に笑って見せるが、その笑みには力が無い。で言わんこっちゃない、水くれをしている最中にふらぁっと来た訳である。
 ああ、俺ももう年だなとか思いつつ、あわや地面をなめようか、という時、誰かが咄嗟に唐巣の体を支えてくれた。
「大丈夫ですか?」
「いや、すいません、ここんところろくな物を食べてなかったものでして・・・ん?」
「先日はお世話になりました」
「ああ、水野君・・・しょっと」
水野の手を借り、ゆっくりと立ち上がりながら、
「元気そうだね。良かった」
と笑みを浮かべる。しかしかくかく膝が笑っている。
ぐぅぅ、ぐぅ。
「おっと」
十の瞬間、腹の虫が大きな声で鳴いた。唐巣は無意識の内に腹を抑えている。
「あは、唐巣神父、よっぽどお腹がすいてるんですね?」
「いやぁ、お恥ずかしい話ですが、ここ数日何も食べてな・・・・・」
ぐぎゅるるる・・・
「・・・いんですよ、ははははは、いや、御心配なく、これぐらい全然平気です」
平気ですって笑いながら、膝がかくんと落ちる。水野は慌てて支えなおすと、
「平気ですって、足が笑ってるじゃないですか・・・そうだ、これから何か作りますから、お台所おかしていただけますか?」
と、やんわりと断ろうかとする唐巣に有無を言わさず、唐巣を教会内に運ぶと、そのまま買出しに行ってしまった。
「困ったなぁ・・・・」
唐巣はそうは言ってみたものの、空腹の方が勝っていたのか、ありがたくその申し出を受けることにした。 

 ダイニングのテーブルに水野が作った料理の数々が並ぶ。
 肉じゃが、旬菜のおひたし、秋刀魚の開き、なめこの味噌汁にかやくご飯と、どれも唐巣の食指をくすぐるのには十二分であった。唐巣は基本的に和食党である。というよりおふくろの味、というものが好きなのだ。中年日本人の唐巣にとっておふくろの味は必然的に純和食になる。
 並べられた食事を直ぐにでも手をつけたい欲望をこらえて、神へ感謝の祈りをささげると、まるで遊びつかれてお腹ペコペコになった子供のように、次々と目の前の料理を平らげていく。
「そんなにあせらなくても」
水野が見かねて言うと、
「いやぁ、うまい、本当にうまい、こんなうまい料理を食ったのはひさしぶりだ」
と涙を流してそうのたまう始末。
 水野はしょうがないなぁ、と思いつつもその姿をほほえましく見ていた。
 そして同時に、この人には誰かしっかりとした人がついていてあげなくっちゃ、と思った。
 よーするにこの人にはあたしが必要なのね!と完結してしまったわけである。
 そうと決めたらもう怖い物は無い。彼女はゆーれいが見えるなんて事はすっかり気にしなくなり、何かと用事を見つけては次の日も、その次の日も、またまたその次の日も、食事を作りにきたのである。
 唐巣もはじめの内は断っていたのだが一週間もしないうちに毎晩食事を共にするようになっていた。
 というか唐巣という男、ここぞって時に押しに弱いところがあるのである。
 それに相手が才色兼備で器量良し、とどめに料理もうまいと来れば無下に断る理由もなくなってくる。いつの間にか情愛の感が生まれても何ら不思議は無い。
 
 で、なし崩し的に。
「ピート・・・じつわだね・・・・申し訳ないが・・・・」
となる訳である。
ピートにしてみても、昔はいい兄貴分であった、そして師匠であって父親である唐巣が幸せを掴むことに何ら不平不満も無い。で結局教会を出て行くわけだがここでここぞとばかりに以前から狙われていたエミに捕まり(というより彼女の好意で事務所アパートの一室を借りられた。代わりにつまみ出されたタイガーは気の毒としか言いようが無い)、半同棲状態へと雪崩れ込んで行くのである。


 そして唐巣は水野明日美と結婚した。42歳と24歳という18歳もトシの離れた夫婦であったが、ごく一部(約一名)の大反対を除いて、皆に祝福された結婚であった。
 
 ちなみにこのときの御祝儀で教会は総改築された。一人頭1千万円近くの御祝儀を出したらしい・・・。

「あなた、私とっても幸せよ」
「君と出会えた事を、神に感謝しよう」
「だぁぁぁ、明日美さん、何でそんなはげおやじがいいんだぁ!!!僕のような若い男の方が・・・」
「あんたは黙ってなさい!!!」
どかどかばきばき!!!ちゅどーぉぉん!!!

おあとがよろしいようで・・・。

 
 

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