ザ・グレート・展開予測ショー

サイコダイバー(その1)


投稿者名:ボヘミアン
投稿日時:(98/ 5/12)

「甘い生活(その4)」の展開(現実ともいう)があまりにもなんで、気を紛らわすため
に「甘い生活(その5)」の展開予想(願望ともいう)をしてみました。あまり展開予想
にはなっていません。悪乗りしている部分もあり、恥ずかしいんですがまあ読んでやって
ください(^^)

横島は意識は戻ったものの、まだ、頭がふらついているようだ。こめかみに手を当てて下
を向き、周りを見ることができないでいる。美神令子はそんな横島の傍らにしゃがみこ
み、明らかに安堵の表情を見せていた。
「バカ、心配したんだからね。」
そういって令子は、一瞬横島の首に手をまわして抱きしめようとしたが、ルシオラが視界
に入ると躊躇して手を止めた。宙をさまよう手が、なんだかとても寂しく思える。自分で
も気づかないほど短い時間後悔の念に駆られたが、次の瞬間には横島の後頭を派手にどつ
き、うつむいているルシオラに向き直らせた。
「ほら、ルシオラが助けてくれたんだからね。お礼いいなさいよ。」
「いててててっ。」
先程の燐粉攻撃に匹敵するダメージを受けつつ横島が顔を上げると、少し思いつめたよう
なルシオラと視線が合う。どうやら令子の攻撃に対する耐性は高いらしい。
「ヨ、ヨコシマ。」
ルシオラは横島を真っ直ぐに見れないでいた。
「よかったですね、横島さん。ルシオラさんがいなかったら危なかったんですよ。」
とおキヌちゃんがフォローするが、横島の反応が鈍い。ルシオラを見つめているがなかな
か言葉が出てこない。
「美神さんがあんなに激しくたたくから・・・」
「そ、そんなに強くたたいてないわよ。」
令子とおキヌちゃんが掛け合いを始めたが、横島がおずおずと割って入った。
「あ、あの〜。」
ルシオラに向かって、やっと言葉を絞り出した感じだ。いまだぶっ倒れたまま捨て置かれ
た西条を除き全員が注目する。西条の意識はなかったが、なぜか両目から涙があふれてい
た。きっと燐粉が目に入ったのであろう。あれは痛いからな〜。
横島の口から出た台詞は予想外のものだった。
「あの〜、どちら様でしょうか?」
「へっ?」
横島の言葉に周りの三人の女性は言葉を失った。横島はルシオラに関する記憶を失ってい
たのである。



パリパリパリ・・・・・・

横島の周りに軽い放電がみられ、わずかにオゾン臭が漂う。ドクター・カオスは、自らが
作り出したハンディ精神分析機とにらめっこしていたが、難しい顔をしたままスイッチを
切った。ちなみにこのハンディ精神分析機、運搬を受け持ったマリアにとってはハンディ
だが、そのままでは令子の事務所の玄関を通れず、一度バラして搬入、再度組み立てたも
のだ。ゆったりと座れる椅子の脇にゴチャゴチャと機械が並び、そこから出た何本もの
リード線が横島のかぶるヘルメットへとつながっている。しかも、大家の婆さんのマッ
サージ機も兼ねているため、心拍数センサーが備えられ最適な速度でマッサージ、耳元か
らは心和む木魚の音が響くという優れもの、今回に限りオプションの般若心経テープと戒
名クーポン券もセットで、お値段何と・・・ いや、話がそれた。
「小僧、もう良いぞ。」
カオスは横島に声をかけると、無言のまま令子の前の椅子に腰をかけた。
「「で、どうなの。」」
令子とルシオラが待ちきれずに一声を発すると、沈痛な表情を浮かべたまま片手を上げ彼
女たちを制した。
「いや、その前に。」
傍らに立つおキヌちゃんへ顔を向けると破顔する。
「おキヌちゃんや、もう一杯お茶を所望できるかの〜。ついでに厚く切った羊羹もほしい
んじゃが。」
「さっき出したじゃないの!」
令子が怒鳴るが、カオスは全くひるんでいない。ニコニコと笑いながら続けた。
「おぬしの切った羊羹は薄くて皿の上に立たんではないか。しかも、フグ刺しの絵皿盛り
のように透けてみえた。もう少し良いものを食わせろ。」
「あんたねー ○屋の羊羹は高いのよ!」
そこへ絶妙のタイミングでおキヌちゃんがなだめに入り、お茶の用意をしますというとパ
タパタと台所へ駆けてゆく。そして、まるでカオスの言うことが分かっていたかのような
すばやさで、お茶と羊羹を用意して戻ってきた。お茶と羊羹をカオスの前へ置くと、お盆
を胸に抱えたまま令子の脇にちょこんと座った。彼女も横島が心配なのだ。
「う〜ん、やはり羊羹は厚いのに限る。」
心配する三人の女性陣と自分のことなのにあんまり心配していない横島をよそに、カオス
は時間をかけて羊羹を食うことを楽しんでいる。顔は崩れたままで、いかにもボケかけた
爺さんといった感じだ。だが、お茶を飲み干して茶碗を下に置いたとき、「ヨーロッパの
魔王」の二つ名にふさわしい表情に戻っていた。先程までの厳しい表情は、「どうやった
ら羊羹にありつけるか。」を考えていたからと思っていたが、事態は本当に深刻らしい。

「結論からいうと、燐粉の毒による昏睡をきっかけにして小僧の記憶の一部、ある特定の
人物に対する記憶が封印されているな。具体的にはアシュタロス、ベスパ、パピリオ、そ
してルシオラ、あんたじゃ。」
「じゃあ、やっぱり美神さんが横島さんをどついたのが原因で・・・」
「なんでそうなるのよ。あたしはそんなに強くどついてないって!」
「でも、燐粉の毒はきっかけなんでしょ?」
おキヌちゃんが冗談なのか本気なのかわからないことを言い出す。
「物理的な衝撃ではこうはならんと思うがの。」
「で、何が原因なの?」
頭を抱えながら令子が先を促す。
「うむ。ジグソーパズルのピースがいくつか無くなったように、四人に関する記憶が欠落
している。だが、実体験全てを消せたわけではないから混乱が生じ、さっきのようなこと
が起きたんじゃろう。欠落した部分を他の人間で埋めようとしたためだな。まあ、一種の
呪縛じゃよ。このまま病状が進行すれば、四人に関する記憶は完全に忘れ去られるだろう
な。」
さっきのような事とは、横島が「あの時のようにもう一度。」と令子やおキヌちゃんには
分けの判らないことを叫び、令子にせまって女性陣三人にどつきまわされたのである。横
島の記憶では、東京タワーの思い出は令子とのものとなっており、彼にとってみれば「あ
ん時やらしてくれたのに、なんで今度はだめなんや!」といったところだろう。
「パピリオの毒が原因なのかしら。そうなら私の体液から血清が作れるわ。」
ルシオラが勢い込んでいう。
「あれはきっかけにすぎんよ。状況から判断するにパピリオがこれをやったとは思えん
な。これだけ高度な呪縛を行うには枝をつける必要があっての。あの混乱の中で単独で行
うのは無理じゃよ。ここを監視していた誰かが、パピリオの起こした騒ぎに乗じて事を起
こしたんじゃろう。」
「ちょ、ちょっと待って、じゃあ・・・」
室内に緊張が走る。カオスは効果を考え一呼吸おいてからこういった。
「アシュタロスが近くにきていると思っていいだろう。」
「「ええっ〜。」」
一同が驚く中、カオスは心の中で「なんかわし、カッコ良いな。」とひたっていたが、こ
の緊張感と無縁な人間も約一名存在した。横島がのほほ〜んとしたまま口を開いた。

「あの・・・」
「却下よ。」
令子が聞きもせずに一言で切り捨てる。
「しかしですね、俺には何がなんだか。それに記憶を失っているといわれても自覚はない
ですし、普段の生活には何の支障も・・・ない・・・ですから・・・」
ルシオラと令子の氷のような視線に二の句が継げなくなる。そこへおキヌちゃんがまあま
あとフォローをいれた。
「横島さん、ルシオラさん達の記憶を無くしてるんですから、仕方がないじゃないです
か。それよりこれからどうするかを考えないと。」
「確かにそうね。このままじゃやばいわ。」
令子がつめを噛みながら返事をする。相当焦っている証拠だ。
「だから何がやばいんですか?」
「あんたのここ数ヶ月の急激な成長は、ルシオラが重要なファクターになっているのよ。
その基底部が消失したんじゃ今までの成長分はパァね、戦力にならないわ。」
「ええっ、俺って戦力になってたんですか?」
「あんたとあたしの合体技が、唯一アシュタロスに対抗できる手段なのよ。人類の希望、
対アシュタロス戦の最後の砦だわ。」
令子はどっかで聞いたような台詞をいったが、ちょっと大儀を振りかざしすぎたかと恥ず
かしくなった。しかし、横島は後半全く聞いていなかった。
「美神さんと俺が合体・・・」
「合体」、「合体」、「合体」・・・ と単語が横島の頭の中でリフレインする。
「みっ、美神さん! 俺は若いから何回でもOKっスよ。前戯はいりません。何なら今す
ぐここで。」
令子に飛びかかろうとするが、あごにイングラムを突きつけられて我に帰った。令子はニ
コニコと笑っていたが目は笑っていなかった。「あたしは前戯が必要なのよ。」とも言わ
なかった。
「あんた、なにズボン脱いでんのよ。」
相変わらずすばやい行動だ。これで服を着る方も早ければ変身ヒーローもできるぞ。
「あ、いや、合体技の練習をしようかと。」
「何ですってっ」
「その辺にしておけ。それより小僧を治療する必要がある。」
暴走しそうになる令子を今度はカオスが止めた。カオスはマリアに命じて横島を精神分析
機の椅子に縛り付けさせる。横島はジタバタするがマリアに押さえつけられていてはどう
にもならない。
「ちょ、ちょっと待て。なんで縛る必要があるんだ、おっさん!」
「なに、この治療にはちょっと危険が伴うのでな。用心のためじゃよ。」
「危険だぁ?、俺は今の生活に何の不満もないんだ! やめてくれ!」
「あら、あんたに人類の未来がかかっているのよ。ヒーローになれるかもしれないわ、少
しくらいの危険は我慢しなさい。」
令子も手伝って横島をテキパキと椅子に縛り付ける。
「ああっ、こんなんばっかりやー。」
「ええいっ、うるさい!」
令子が催眠スプレーを吹きかけると、騒いでいた横島も静かになった。ルシオラがカオス
にたずねる。
「危険?」
「アシュタロスのつけた枝がどんなものか判らないが、素直に取り除かせてくれるとは思
えんからな。症状から相当深いところに取り付いているようだし、無理に引き剥がせば小
僧の精神を傷つけかねん。最悪の場合は命に関わる。」
「治療法は?」
「おぬしがさっきやった方法じゃよ。小僧の精神にダイブして直接病巣を取り除く。今度
は深層意識までダイブせにゃならんがな。」
「じゃあ、ダイブする側も危険てことね。」
「うむ。深層意識まで入り込むには高いシンクロ率が必要じゃが、シンクロ率が高くなり
すぎれば小僧の精神はシンクロしたものを取り込もうとするじゃろう。それに枝の抵抗も
考えられる。帰ってこれなくなる可能性も高いな。スリル満点じゃよ。」
カオスがおどけて見せるとルシオラの表情がふっとなごんだ。
「ダイブの準備を。」
「わかった。わしも外からバックアップする。」
そこへおキヌちゃんが割って入った。
「ちょ、ちょっと待ってください。危険なのにまさかルシオラさん一人でダイブするんで
すか。」
「危険な目にあうのは一人で十分だわ。」
「でも・・・ それにルシオラさんでなくても。」
おキヌちゃんは横島の治療に、何の手助けもできない自分が歯がゆいようだ。その時、ル
シオラに笑顔が戻った。まるで赤ん坊をあやすときの母親のような笑顔だ。
「だって、他に誰がいるの?」
「そうね、まあ頼むわ。横島君の命、あんたに預ける。」
令子がルシオラの肩をたたく。勝手に人の命を預けるとこなんぞ、さすがは美神令子だ。

さあ、決戦だ!!! ちなみに西条は涙を流したまま未だ庭に放置されていた・・・



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