ザ・グレート・展開予測ショー

GSキラー:track06[]


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/ 6/30)

タマモには漠然とした自信があった。勿論、前世の記憶が無かろうと、タマモが伝説の
金毛白面九尾の狐である事には変りない以上、資質で彼女を超える者などありえない。
だが、タマモには分っていた、それだけでは勝てないことが…。しかし、そう思う反面、
それを見抜いた自分が負けることはあるまい。とも思う。奇妙な事だが、勝てない事が
分っているなら、わざわざ負けてやる事も無い。もっとも、先にすべき事があったが…。
「クックックッ…、狩り、か…、そいつは楽しみだ。それにしても、
我々のボディをもってしても第六感は妨害できんか…。まぁ、仕方のない事か…。」
物陰から現れたのは長身の男のような物だった。もっと極端な物の見方をするなら、
喋る巨大な七支刀が歩いている感じか。全身が単色の白銀で、
明かに人工物の様相を呈していた。ここまで観察すると、タマモが口を開いた。
「確認しとくけど、シロ…、知力の足りない犬と会わなかった?一応、雌なんだけど…」
「知らぬな。もっとも、ワシの身体はご覧の通り、7割が刃物でできている。お主の言う、
『知力の足らん人狼』が勝手にぶつかって怪我をしたかもな。」
「……!…上等よ、クソ野郎。アンタのそのボケた頭、足と溶接すりゃ思い出すでしょ!」
言うなり、既に臨界までスパークしている右手の光熱波を口元へ運び、一気に吹きつけた。
ゴヒュウァァァァァッ
閃光が視界を、爆音が可聴域を、熱波が全身を飲み込み、最後に、焼けた匂いがした。
タマモには分っていた。


とあるカフェテラス
美神令子の調子はまずまずであった。この程度の敵に遅れは取るまい。時間をかけて、
相手が逃げないギリギリのラインを見極める。確実に撃墜できる自信がある。
「…ですから、この相手ですと二千万はいただかないと、全部、従業員の危険手当や
夜勤手当になってしまうんですよ。御理解下さい。」
別に嘘などついてはいない。キチンと手当として計算している。払った事など無いが…
「しかし、当方としましてもあの土地にそんな金額は…」
「なら、悪霊にご寄付なさるんですね。よろしいんじゃありませんか?有名になりますわよ」
それを聞いて相手の顔は真っ青になる。美神はこの反応に満足し、次の手を思案する。と、
相手の頭越しに何かが目に付く。なにやら店の外で白銀の塊が動いているのだが、生憎、
硝子の向こうでは音が聞こえないため、騒ぎになってても判らない。
何か決定的な事をしないかと暫く眺めていると、塊はこちらの期待に応えた。
ワシャンッ
硝子を突き破ってこちらに迫って来たのである。
(こっち来る事も無いでしょうよ)
美神はウンザリして天井を見上げた。


小笠原GSオフィス門前
「なんだか〜〜、エミちゃん〜〜、本当に〜〜、留守みたいね〜〜。」
豪奢に着飾った女性の(彼女にしてみれば普段着だが)場の緊張感を崩壊させる一言。
「あのぅ、ただの留守なら問題無いでしょうけど、そうじゃないかも知れないから、
わざわざGS、あるいはそれに準ずる能力を持った人間が3人も…早い話が私達が調査に…」
隣の女性がなんとなく指摘する。が、大した意味は為さないだろう事は分りきっていた。
因みにこちらの彼女はとんがり帽子付きの黒ずくめに竹箒とゆう出で立ちで、まるで、
全身全霊で以って、『私は魔女です。火あぶり上等!』と主張してるかのようだ。実際、
後半がありえないのは言うに及ばなかろうが、前半は彼女、本気である。
もっとも、彼女のファミリアたる黒猫の言葉を借りると、
「あんニャフォーマルスタイル丸写しな魔女、600年前にだっていやしニャい。
番長って言えばズタボロの長ラン・ドカンに下駄履き、学帽。みたいなノリだもんニャー。
使い魔としても肩身が狭い思いをしてるんだよニャー。魔鈴ちゃんはカワイイだけに
もったいニャいニャー。」
とのこと。確かにこの姿で相棒が黒猫では万人が初見で「魔女だ。」と思うだけであろう。
そんな彼女らが今回、ここに集い…
「ちょっと待てーい!」
集い、今から屋内を…
「待てと言うに!!」
あー、もぅ、どうしたの?
「なんで「どーしたの?」なんて言えるんじゃ?ワシじゃよ、ワシの説明が無いではないか」
あぁ、後、じーさんが屋内に入ることに…
「待たんかー!」
…今度は何?
「たかが人生20年やそこらの小娘なんぞ長々説明して、ワシの事ぁ、「じーさん」じゃと?」
そんじゃなにか?アンタはクソ面白くも無い、化物ジジィの解説を俺に強要しようってのか?
「化物言うな!それが貴様の仕事じゃろうが。大体からして黒猫にコメントもらってまで
ワシの説明分の文字数稼ごうなどと言語道断!」
何?気付いていたのか?
「マジかい!」
じゃあ、氏の鋭い推理に免じて、後2人、黒ずくめの老紳士と葬服を纏った女性が続いた。
「鍵は…かかってますね。」
魔鈴は言いながら隣に視線を向ける。相手はこちらの意図を汲みとって…はくれなかった。
「困ったわね〜〜、エミちゃん何時頃帰って来てくれるのかしら〜〜?」
全然場の空気が読めていない発言をする女性に、老人にしては大柄な男がくってかかった。
「アホかい!お主の式神に短距離瞬間移動が使えたじゃろうが!!アレ出さんかい」
「でも〜〜、そんな事したら〜〜、エミちゃんに〜〜、悪いわ〜〜。」
何よりも友情を重んじる彼女らしい発言と言えばそこまでだが状況が状況である。
「だーからっ!事は緊急じゃと聞ーとらんかったのか?」
老人はなおも怒鳴り散らすが糠に釘である。それどころか、
「カオスさん〜〜、なんだか〜〜、急いでるみたい〜〜。落ち着いて〜〜。」
パチッ
Drカオスの頭の中で、なにか、やたらと軽い音が響き、全ての音が聞こえなくなる。
「もー、構わん!マリア、こんな館ぁ根こそぎ、派手にブチ壊せぇぇぇ!!」
「イエス、Drカオス。」
マリア――葬服の、欧州人を思わせる顔立ちの女性…を模した物――が答えた。
「やめてぇーー」
魔鈴の抗議の声も、Drカオスの耳に届いても脳に届く事はなかった。
つづく

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa