ザ・グレート・展開予測ショー

GSキラー:track05[Pyromania・ダンス・マカブル]


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/ 6/29)

教会の奥の廊下、横島の絶叫がこだました。
「ぢょっどぉぉぉっ?美神ざぁぁぁん!?」
各々の自室で学生服から着替えたり、蔵書を調べたりしていた二人も何事かと飛び出す。
「どうしたのかね?そんな大声あげて…」
「どーしたもこーしたも神父!事務所にかけても誰もでないんスよー!!」
瀑布の如き涙を拭いもせず、(もっとも拭ったところで徒労にしかなるまいが)
横島は答えた。神父と(半裸の)ピートは思わず顔を見合わせた。互いに不安を隠せない。
「うへへへへ…、電話に誰もでんわ……」
横島の壊れっぷりにまたおもむきのことなる不安もあるが今はそれどころではない。
「もしや…、美神君の事務所も襲撃されたのか?」
当たって欲しいとは微塵も思わない予感――恐らく、彼の弟子はそれ故
言葉にしなかったのだろう。――一方、喚きっぱなしなのは横島である。
「うあぁぁっ!美神さんがいなかったら、俺はどーやって身を守れば良いんだー?
美神さんが非合法に所持してるスティンガーやグレネードをぶち込んだり、
アメリカ国防省にハッキングして核ミサイルの出前で奴を葬る完璧な計画がー!!」
「頭のてっぺんから爪先まで他力本願で大雑把なうえに非道な計画だね…」
更に言えば、採算も合わないのにあの美神がそんな計画実行するだろうか?答えは否である。
(利益か怨恨さえあればそれ以上の真似も辞さないだろうがね、彼女の場合。)
ふと思い、「あの師にしてこの弟子あり。」と妙に納得する神父。だがすぐにはっ、となる。
(すると元凶はお母さん?ならば私が21年前きちんと教育していれば……?)
自責の念から神父は頭を抱えた。その間も横島は止まる事無く叫び続ける。
「…ハッ!もしや西条?まさかあの野郎言葉巧みに美神さんを誘い出して一気に……!!
おのれ西条ぉぉぉぉーー!貴様なぁぁぁぁぁぁんぞにぃぃぃぃぃぃぃーーーー!!!」
『地獄でやってろ』
断っておくが、寛容この上ない筈のこの師弟がこんな冷淡なツッコミをいれるのは、
筆者が「戦車」のカードの暗示を持つジャン・ピエール・某のファンだからに他ならない。


タマモはシロを捜して街中をふらふらしていた。シロは彼女と同じ超感覚を有する妖怪、
同族と暮しながらプライバシーを保守する為にそういった能力になんらかの耐性がある。
そこのところはタマモにも容易に予想出来た事であるし、彼女が「散歩」と称する趣味は、
自分の興味はカケラもひかないような道をただ、ひたすら、延々走り回る浪費行為であり、
その道程を自分が予測することはほぼ不可能と言って良いことも承知していた。
(でも逆に、あんだけ無軌道に突っ走ってりゃばったり出くわしたって、
良さそうなモンなのに…ってアレ?)
自分の言葉と共に、シロが「散歩」する光景を思い浮かべてなにか違和感を感じる。
(「一人じゃつまんないでござるーーー!」って、今「散歩」してるわけないじゃない!)
あの生真面目なシロが横島に学校をサボらせるなど論外である。ありえない。何故いない?
狐の第六感が、家族に、そして自分に迫る危機を知覚して研ぎ澄まされていった。
「…そこにいるね?いくら風下を取ったってもう無駄だよ!もう、狩りの姿勢だからね…」
バシバシバシッ、ボッシュウゥゥゥ…
タマモの手の中で烈光が踊っていた。


1時間後、3人は美神除霊事務所の門前に来ていた。あの後、嫉妬に狂った横島が、
オカルトGメンに電話したところ、西条はとある事件の捜査にかかりっきりで留守、とのこと
さらに、ピートがタイガーの事を思い出し、小笠原GSオフィスにも連絡を取ろうとしたが、
こちらも繋がらなかった。仕方がないので今度は六道冥子、魔鈴めぐみ、さらにDrカオスに
連絡し、小笠原GSオフィスの様子見を頼んでいたらこんな時間となったわけである。
早速、中に入る3人。
「お待ちしていました、横島さん。後ろのお二方におかれましても御機嫌麗しく存じます」
人工幽霊一号が折り目正しい挨拶をした。彼は別に執事ではないが紳士であり、なにより
オーナーである美神と共生関係にある為、彼女に恥をかかせまい。と、礼節を重んじた。
「なぁ人工幽霊一号、事務所のみんなは?」
「美神オーナーはクライアントと打ち合わせがあるそうです。おキヌさんはまだ学校から
戻られていません。シロさんも朝、出かけたきりで、タマモさんはオーナーに頼まれて、
シロさんを捜しに出られました。」
横島の問いに淀みなく答える人工幽霊一号。それを聞いて一同はホッ、と胸を撫で下ろした
「それなら、我々もここで彼女らの帰りを待つとしようか。何しろ、今は非常時だからね。」
神父の言葉に異を唱える者はいなかった。男達は迫りくる危機との距離を見誤っていた。

つづく

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