ザ・グレート・展開予測ショー

未来掲示・別編(ラプラスの語り13)


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 6/28)

そこは一筋の陽光も蛍光灯も無い薄ぐらい部屋である。ある特殊な牢屋だ。
貴方はどうしてもこの鬱蒼とした建物の奥にいかねばならなかった。
=おっかねぇか。こんな場所では意味がない単語だぜ=
悪魔ラプラス、確実に未来を映し出す能力を持つ。

待ちなって、未来ってのは無限の可能性がある。その数と同等の俺がいる訳だがな。
それでも聞きたいなら俺の知ってる未来を語ろうじゃないか。そう忠告を一つ。
保身は出来てるのか?ここで頼れるのは自分自信だけだからな。

さて、先ずは横島におきた身の変化から語ろう。
何時も通り学校の帰り道の通路にばさっと何かが落ちてきた。
「うわっ、ナンだ?飛行機か、スーパーマンか?」
おいおい、そのフレーズを言うなら最初に来るのが鳥だろ?
「でっけー鳥だな」
瀕死状態の鳥でな。何を思ったか、アパートにつれて帰るんだ。
「治療すれば治るかな?」
救急箱から薬を出し、薬湯を施し、餌を与えたら苦痛の表情がゆらいだからな。
「明日には出て行けよ。ここはペット禁止だからな」
昨今危ない青少年が多い中、やっぱ横島は優しい男だ。
本来なら買える筈の無い雑誌を堪能する程度は御愛嬌といったところか。

さて次の日だ。けたたましい目覚ましがが鳴り響く。
「あぁ〜、もう朝か。睡眠不足になりそうだぜ」
そういえば、あの鳥はどうしたかな?と目を凝らす。
「あれ?あの鳥は、出ていったのかな?」
そうおもって、あたりを見まわすと、見なれない奴がいた。
「だ、誰だ?泥棒か!」
「私だ、お前が昨日助けてくれた鳥なんだじゃん」
「貴様・・・ハーピー!」
眠気もどこへやら、戦闘態勢に入る。装備品は右手に霊の剣、左手に文殊、
体には市販のパジャマ、なんてな。頭には装備品無し、アクセサリーも当然無し。
「やめろ、荒そう気は・・ない・・じゃん」
ハーピーの怪我は魔族といえどその生命に危機の有る状態だからな。
「お前・・?」
魔族といえば闘争本能の激しい存在だと認識する横島にとっては奇妙な光景やもしらぬ。
「お前は、あのメドゥーサ、アシュ様を手にかけた男。私程度の下級悪魔に叶うワケないじゃん」
寂しそうな横顔はある種の色気をもっていたやもしれんな。
「お前どうするんだ?」
「安心しろ、アシュ様がいない以上、美神令子を狙う気も無い。お前に迷惑もかけない」
それから、人間体に変化して、ドアをあけようとする。
「何処へ行くんだ?」
「風任せに」
しかし、ドアを空け、外に出たときに、ハーピーしゃがみこんでな。
「恐い・・恐い、恐い!」
通行人も少なくない通りだ。通報されて悪魔とばれたら、あとはお決まりか。
「いいから、戻って来い」
どうやら、口にださなかったが、魔族といえど恐い思いをしていたにちがいない。

先ずは上司である美神にコトを伝えると、直ぐにアパートへやってくる。
「私としては命を狙われたのよ。近くにいるだけも、嫌ってのが本心だけど・・」
本心だが?
「こんな状態の悪魔、殺しても後味が悪いだけだわ。でも本当に?」
本当に恐がっているのかを知りたかったのであろう。それは文殊で調べればいい事だ。
どんな精巧なウソ発見器よりも凄まじい回答を得られるからな。
「ホント、なんだ。・・どうしたい?横島クンに任せるわ」
「解りました」
横島の決断。それは彼女が、ハーピーが再度大空へ戻れるまで世話をする事だった。
「まっ、鳥を飼ってるようなモンでしょ?」
その日、仕事から帰って部屋に戻る。
「うーん。美神さん公認で綺麗なねーちゃんか。悪くはないかもな」
ドアをあけると、真っ暗である。
「あれ?ハーピー」
「横島っ!」
なんと抱き着いてきた。
「そう、かそんなに恐かったのか、部屋のなかでも」
「・・恐かった、恐かった!」
何があったか聞かないがそれがこれも横島の優しさかもな。

ハーピーが持つトラウマの大きさを身にもって知った横島はかなり献身的に彼女に、
大空に恐怖を持たせないようにするリハビリを始めた。
流石に魔族姿では不味いので彼女に人間の形になってもらってな。
「やったな。今日は1時間も外にでられたじゃないか」
「あぁ、でもそれは横島さんが付き添ってくれたから、出来た・・」
「なんだよ、くすぐたいじゃないか、横島さんなんて」
そういえば、この頃、妙な語尾を無くそうとしているんだよな。
それに、室内でも出来る簡単な内職を始めたのが少し前。
「横島さん、ばっかに食費を頼るのも恥ずかしいじゃん、からな」
内職を始めると、どうしても人間と関わりを持たざるを得ない。その日常が、
「心地い・・魔族としての生とは全然違う」
だが、依然横島べったり、というよりは頼りのハーピーだ。
大分野外へ対するトラウマが無くなった時、ハーピーの心は決まっていた。
「横島と、所帯を持ちたい・・・じゃん」
その思いが美神もオキヌちゃんも納得してくれる方法を実行した。

「こんにちわ。美神さん」
「いらっしゃい。ハーピー、今日は独りで来たの?」
事務所へとやってきたハーピーだ。それから、告白を始める。
「最初、本当は傷が治ったら横島を食って力を得ようとした事もあった」
何を言い出すの、と言う美神。
「だけど・・人間として横島さんと一緒に暮らして・・私は気持ちが変わりました」
「ちょっと!確かに魔族と人間の恋は有史以来、珍しい事じゃないけど」
「それに、今でこそ、こうやってなんとか、独りで外歩きできるけど、ホントは恐い」
横島がいないとって事だな。
「横島さんが、貴方に恋をしていること、そしてオキヌさんが横島に恋してるのは知ってる、でも私はあいつが必要なんだ・・じゃん」
「お茶を運んできたオキヌちゃんがお盆を落すのも無理の無い告白だ。
「私は、魔族の体を止める!」
何時とったのか、横島の文殊がハーピーの手にあった。それを閃光させたあと、
「ハーピー・・あんた人間に」
「横島さんが幾ら優しいからって、魔族と所帯を持てる程、進んだ考えの持ち主ではないじゃん」
呆然と経ち尽くすオキヌちゃんであったが、
「ハーピー、貴方横島クンを幸せにさせる事、約束する?」
「・・はい。生涯を誓って」
それは美神がハーピーを認めた一言でもあった。
そして、
「オキヌちゃん。あなたの気持ち、痛いほど解るわ。でもね。ハーピーは魔族を捨ててまで望んだでしょ?」
「はい。それが横島さんの魅力。ハーピーさんの思いには、勝てません・・」
涙ながらの言葉が綺麗なのは人間であるからかな。二人は少し泣いて、横島にこう言った。
「あんた、責任を持ってハーピーを幸せにしなさい。あんたと一緒になる為に、人間の死を覚悟したんだから」
横島もはい、としか言えまい。
それに・・自分を頼りにしてくれる女がいる。男冥利かも、な。

-くくくく、忠告したはずだぞ、保身には気を付けろと-
貴方が気が付くと廻りには数多くの悪鬼がとぐろを巻いていた。
バチカン封印クラスの連中ではいくら力をもっている人間と言えと、
勝機は零である。とっさに思いついた貴方は懐に手を入れる。
これでかんべんしてくださいと財布を見せる貴方にラプラスは一言。
=お金か。こんな場所では意味の無い単語だぜ=


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