ザ・グレート・展開予測ショー


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(01/ 6/26)

またもやってしまった…。何を、って目先の欲で一人仕事を請けたんだ。俺が甘かった。
昔、殆ど同じ内容の仕事をやった事があった。美神さん曰く、
「馬鹿でもできるし、スリルも無い。セコいくせに面倒くさい最低の依頼。」
だとか、ようはこの幽霊屋敷に24時間居すわりゃいいらしい。
前回は3日目でリタイヤだったから楽勝だろう。ってのと、半ばキャンプ気分で引き受けた。
だけど来てみりゃとんでもねぇ。俺は怒鳴り散らすことで絶望感を振り払った。
「天井が無ぇなら一言そー言わんかい!」
一人きりで見上げる虚空がやけに近かったのは雨粒のせいだけではなかろう。

夜が明けて、雨に打たれる俺の装備は防水ポンチョと缶詰のみ。携帯コンロなど、
使えない物は幽霊屋敷の一部同然だ。おかげでコンビーフをそのまま喰うはめに…。
「あかん、女っ気も無いし、お約束過ぎる梅雨の天気ですっかり鬱入っとる…」
この女っ気ゼロとゆーのがいかん。俺にしてみりゃ死活問題だ。
しばらくして雨が上がった。こんどは茹だるよーな陽射しで理性の糸が緊張する。
ぷちむ
「おぉぉぉぉっ!?もーー限界じゃーーーっ!!」
既に16時間で20回目の俺の雄叫び、意味は孤独を再確認するだけ…のはずだった。
「きゃっ!」
その瞬間、思うより先に身体が動いた。一流格闘家さながらだぜ。
「どーしました?お嬢さん!心細いでしょ?そーでしょう。僕がきたからにはもー大丈夫!」
毎度の事ながら俺はあくまで真摯に近寄る。こーいった状況では肌を寄せ合うのが基本!
「……私です。…」
そこにいたのはおキヌちゃんだった。ただし、いつもと違いやけに底冷えする気配だった

「いくらなんでも顔も確認せずに押し倒しますか?」
やっと苦労して口きいてくれるトコまで機嫌を直したかと思いきやコレだ…。当り前だろ
んなモン。…だが、今までの傾向を考慮するとそんな答えは不評な気がする。
「何言ってんだよおキヌちゃん、冗談だよ。分ってたに決まってるじゃないか。」
「…本当に?」
「あぁ。ちょっと、ふざけただけだって。それよりおキヌちゃんはどうしてここに?」
と、さりげなく話題を摩り替える。すると今度はおキヌちゃん、なにやら歯切れが悪い。
「あの…実は、…差し入れを…」
「え?なになに。」
「…コーヒー。…熱ぅいヤツ。」
…しばし黙考……。さらに、……んー…つまり雨で寒かったからコーシー沸かしてくれた。
ところが来る途中突然晴れて気温があがった。なるほど、そりゃ渡しづらい。しかし、ま、
「おキヌちゃん、ありがとう。いつもすまないねぇ。」
「え?冷たいのに代えてきますよ?」
「いいって。」
「そんな気をまわさないでください。」
「そんなんじゃないよ。いわゆる逆転の発想ってヤツ…」
「え?」
「これで憂鬱な雨が楽しみになるだろ?コーヒーを美味しく飲めるんだから、
おキヌちゃんのおかげだって」
「そ…そんな…失敗してたんですから別に、おかげってことは……」
「さ、美神さんが心配するから(心配?微妙だな)早よ帰んな」
「いえ、もうちょっとで終わるんですよね?だったら一緒にいちゃいけませんか?」
腰をおろすのが狭い結界内の為、何だか童話の森で迷子になって寄り添う兄妹みたいだ。
そんなことを考えるとふと思う。
ある日突然、おキヌちゃんから結婚式のスピーチを頼まれて、
おキヌちゃんがえらい笑顔で相手を紹介して、男同士、体裁だけの挨拶をしたりして、
そんでもおキヌちゃんにとってはソイツが一番で、俺は父親みてーに泣くんだろーなー。
「なに泣いてるんです?」
「あ、イヤ、違うよ!コレは眼球が汗かいたんだよ。うは、うわははははは!」
ま、そん時ゃ俺にはどーにもならんし、
そーならん限りは事務所の長兄たる俺が守ってやろーじゃねーか。

翌日、
「ずっと前から愛してましたー!」
「依頼人を怯えさすなー!」
「…横島さんてサイテー…」
……なんだよ!ちゃんと守るったら、こんなトコで嘘ついてどーすんだよ!!
ただ、俺だって幸せになりたいんだよ!!!文句あっか?

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