ワショクヤの日々(五)中編
投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 6/25)
ザザザザザッ!
熟練の登山者ですら滅多に近寄らない、険しい山道。その道をあろうことか、板前姿の男がひたすら真っ直ぐに進んでいく。
「待ちゃあがれ! その手ぬぐいは譲れねーんだ!」
ガバァーーー!
『!』
ヒョイ!
「! げっ!?」
ドシャアアアッ!!
「ぐ・・・ぎ・・・!」
タタタ・・・!
男の追撃をかわした『そいつ』は茂みの向こうに姿を消す。
「ちくしょう! こちとら神様相手に荒っぽい真似は出来ねえってのに・・・」
男も茂みをかきわけ、進んでいく。
(・・・あの手ぬぐいは・・・あれだけは・・・)
しばらくそうして進むと、突然開けた場所に出た。
「・・・な・・・何だぁ!?」
男の口から驚嘆の声が出る。
『・・・・・・』
そこに在るのは手ぬぐいをくわえた『そいつ』・・・しかしそれよりも目をひくものがあった。
「・・・つづら・・・か?」
男の前には、それぞれ異なる大きさのつづらが五つ、置かれていた・・・
ーワショクヤの日々(窮日)悪食編ー
「えー・・・孫八と申しやす!」
「俺は兵次ってんだ! よろしく!」
二人の自己紹介を、私はただ黙って聞いていた。
「・・・・・・」
じっと二人の男を観察する。
私が椅子を投げつけて出来た傷はもう残っていない。それはうちの丁稚の様な回復力を持っているのでは無く、私が何故か殺人犯に誤解され、客に誤解された時に・・・
「・・・・・・」
そこで視線を後ろに向ける。 そこには何故かハラハラした顔をしている彼女と、退屈そうな他二名がいる。
・・・あの時。
客が青ざめた時に他の薄情な連中と違って、彼女が二人にヒーリングを施してくれたからだ。 もっとも治る前に客は逃げてしまったが。
(横島時給カット・・・シロとタマモは当分玄米ね・・・)
三人の処置を決め、おキヌちゃんの時給を主席取ったボーナスとは別に上げる事にしたところで、小百合がやってきた。
「二人とも、見つかりましたよー」
そう言う彼女の手には二枚の札が・・・札ぁ!?
「ちょ・・・!」
「サンキュ! 権兵衛さん!」
悪寒を感じた私が飛び出すより早く、二人の手に札が・・・
『よし・・・! これからどんどんこの河童の川流し素麺を作ります! 客人達も期待して下さい!』
『俺の和菓子・・・年寄りの冷や水飴やようかんも忘れないで下さいよ!』
ープツッ!ー
「よ、横島さんっ!」
明らかに狼狽した様子で、おキヌが横島にしがみつく。
「こ、これは・・・ゴホン! ・・・大丈夫! こんな時の為にあいつらに・・・」
『これでこの店も安泰! 後は親父さんを待つだけですね!』
朗らかに二人が笑う。
『ヨカッタワネーウフフフ・・・』
「はい! 本当に・・・これで何とかなりそうです!」
美神と小百合も笑う。 何故か美神の手が食卓に置かれる。
ピシ!ビシィッ!
「? 何の音です?」
「さあ・・・もしかしてポルターガイスト?」
「そんなわけが無いだろ・・・まったく・・・」
『ソウヨネ』
ビキィッ!!
美神の指先から食卓に亀裂が走る!
グググ・・・!
突き破ったその手がゆっくりと・・・上がっていく。
ズ・・・!
『・・・フフ・・・』
高々と上げられた美神の右腕。その腕の先にあるのは・・・
『ーーーへ?』
直後ー・・・轟音が鳴り響いた。
『横島さん・・・美神さんいつもより・・・』
『おキヌちゃん・・・その先を言っても辛いだけだ・・・』
今までの
コメント:
- 「続きです・・・いつにも増してギスギスしてますが、楽しんで貰えたら嬉しいです・・・矛盾してるかも・・・」 (AS)
- 親父の葛篭も気に成りますが、一体この二人は何者なんでしょ? メニューの名前も縁起の悪いもんばっかりだし(苦笑)。 (Iholi)
- テンポいいなぁ…うらやましいです。ボク、田吾作だから…… (sauer)
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