ザ・グレート・展開予測ショー

逆シンデレラ物語(時計台人工幽霊壱号編、ガラス靴はバンダナ編)


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 6/24)

横島、もとい偽名、品川銀一にとって助かった事は美神が指名した店が料金も安く馴染みであったからであろう。
「魔法レストラン魔鈴ですか。変った名前ですねぇ」
「えぇ、中に入ってみてください。きっと驚きますよ」
レストラン専用の駐車場も運良く一台分開いた。ちょっと切り返しに手間をとる場所であった。
「はは、車を扱ってるのに、こんなんな状態では不味いですよね」
「そうでもないですわ。優しい発進、停止ですもの」
何を褒めているのであろうか。
この切り返しをやっている時に、タマモは見つからないようにレストランに入る。
《一応、魔鈴様には事を御教えしといた方が宜しいかと思います》
という人工幽霊壱号の配慮からである。
「いらっしゃいませにゃぁ〜、ってタマモさんじゃにゃいですか」
「うん。実はね」
オーダーに出た黒猫にたくらみを言うと、
「面白そうにゃ。とうぜん、よこしみゃ〜に協力するにゃ」
「ありがと」
《タマモ様、この姿ではなく、変化をして様子を見ましょう》
「そうだね。じゃあこんな姿がいいかな?」
1人でレストランが似合う年恰好に変化した時、玄関具えつけのベルが鐘をならす。
「いらっしゃいませにゃ〜」
「あれ、今しゃべったのは何方かな」
「ふふ。下をごらんなさい」
「下って?」
おそるおそる目を下方にやると、黒い物体が愛想良く・・猫は黙ってるだけでも愛想有るか、がいる。
「御客様は二名様ですかにゃ?」
「えっ?ね、猫がしゃべってるのかぁ!」
「ねっ、魔法レストランの名は嘘じゃないでしょ?」
「そうですね、いや驚きました、うん。二名だけど、彼女足を挫いてね。近くの席に」
「解りましたニャ。どうぞ、御案内するにゃ」
落ち着きの無い横島がここまでかわれるのきゃと笑いをかみ殺す黒猫である。
「へー、中はけっこう綺麗なんですね」
「そうでしょ?食事もまぁまぁよ、あぁそうだ。注文はそうします?」
「レディーファーストでどうぞ」
どこまでも紳士を演じている横島、もとい品川銀一である。
美神は案外と大ぐらいである、それがばれない程度の注文を選ぶ。
「これと、それと・・、これだけあれば十分ですね」
何時も頼む量より若干少なめなのも、年頃女性の見栄というやつであろうか。
「えっともう少し頼んでみませんか?黒猫君。君のお勧めは何かな?」
「そうですにゃ。すべて御勧めにゃんですが・・そうだ。怪我を治すサラダがあるにゃ」
「それはいい!是非頼もう。あとは、食前酒を一杯だけ、美神さん御付き合い出来ますか」
「えぇ、喜んで。これでも御酒は好物なんです」
「構いませんが、御客様はお車で来て いらっしゃるのではにゃいですか?」
「軽く一杯だけだよ」
車で来て食前酒とは長くいる積もりという事である。それに反対しない美神も了承という事であろう。
食前酒という事だけあって直ぐに運ばれてくる。
「私達の出会いを神に感謝して、乾杯」
「えぇ、乾杯」
ちんとガラス特有の高い音が耳に心地よい。軽いアルコールである。
「あら。美味しい」
美神の言だが、普段水代わりにボトルをあける彼女にとってこんなのは水以下のはずだが、しおらしいの演出する。
それから、先ずサラダがやってくる。
「御皿が・・飛んでる・・。うーん、すごいな」
「ね?でしょでしょ!」
小娘に似たはしゃぎよう、という奴か。
最初のサラダは確かに美神の足に効いた。ひょいひょいと足首を動かすと。
「すごーい。本当に足が直ちゃった!」
「それはよかった。でもあんまりバタバタするとぶり返しますよ」
恥ずかしいでしょ?という遠まわしな表現も巧みである。
「あは、そうよね」
さて、料理も本格化してくると、美神の仕事等を巧く聞き出す品川銀一である。
「そうなのよ、バイトでやとった横島ってのがね。これがどーしょもなくて」
隣で聞き耳をそばだてているタマモはもぉ爆笑を堪えられないといった体である。
「くっく、くくくく。うっぷ・・・くくくく。目の前の男が・・横島だってぇのぉ!」
少々不気味にうつる彼女だったので、幸いにもタマモに遭遇接近(ナンパ)をはかる男はいなかった。
「へ。へぇ。それは大変な助平な男の子なんですねぇ」
「そうなのよ。でもね。イイトコロもあるのよぉ」
この時は横島をけなしたり、褒めたりの差が大きかった。
「やれやれ。どうやら思い入れのある男の子なんですね。彼に悪いことしたな?」
「と、とんでもないわよ。まだ子供なんだからぁ」
「そうですかな。私から見れば貴方もまだ可愛い子供ですよ」
「まぁ、失礼な」
でも怒るでもなかった。
さて、店内の照明が少し暗くなった後、店長魔鈴めぐみのマイク音が流れる。
『本日は当店を御利用頂き、有難う御座います。本日は生バンドの音楽を御届します』
名の有る有名なビックバンド楽団が拍手と共に迎えられると、挨拶代わりの軽い演奏が始まる。
「良い曲ですね、たしかサウンド・オブ・ミュージックの『勇気を持って』ですか」
「そうなの?たしかに聞いた事あるような」
「えぇ、とても良い曲ですよ。若し、チャンスが有れば見てくださいよ」
昔、中学は音楽の授業で聞いた曲であるのが幸いしたか。もっとも横島、同映画見てはいる。
演奏が終わると、バンマスの挨拶がある。
「暗くなったから、隣にいっていいですか?」
と美神、ええ喜んでと答えるは
オールドラブソング時には真っ暗に近い状態になりそこかしこからキスの音が聞こえた。
そして、バンマス(ポップスの指揮者)がマイクを握る。
「次の曲はチークを使った新曲です。どうぞ皆様ステージの前で思い思いに」
つまりはダンスでもという事である。
「若し、足がよかったら、踊りませんか?」
「えっ?私踊りなんか」
「私がリードします、足の御様子は?」
「えぇほとんど戻ってます」
じゃあ、と有無を言わさず手を取る。
「御願い・・しますね」
「お任せ下さい」
このカップルにつられて、手を取り合う二人は10以上出た。
こうなると、新曲を披露する演奏側にも力がはいるという奴でとても良い出来であった。
曲が終わった。
バンドの連中が放つ拍手は美神と横島に向けられた物は明らかだった。
『最初に来ていただいた、カップルに皆様、拍手を』
この対応もとても利に叶い、優雅なものであった。
ちなみに、タマモはじっとふたりを見ていた。
「・・ちょっと羨ましいかな?」
《タマモ様、少々不味く御座います》
「え?」
《時間が、ご覧下さい。あと5分もありませんよ》
いつそんな時間がながれたのであろうか。だが時間を遅らせるのは神の域である。
「ど、どうしょう?」
もう生バンドがアンコールの流れる最中である。
《無粋ですが、いたしかたありません》
店にある大時計に憑依する。バンドを考慮して停めてあったのだが、
【GONE GONE・・・・】
皆が腕時計を見た瞬間であった。
品川銀一の時間がもうない。慌てた。
「あっ、ま、不味い!」
「え?どうなさったの?」
「す、すいません、美神さん、私はもう時間が・・」
そういうと、支払いをいそいで済ますと、タイムリミットだった。
「品川さん・・?」
荒々しい扉のベル音が最後であった。
美神が扉をあけた時、最後の音楽が終わったという。
外に出ると、姿がなかったが、足元に何かがおちていた。
「品川さんの忘れ物?」
それをひろうや、すべてを悟った美神。
「まさか・・・」
怒りを通り越す感情と言う奴を初めて感じたと後に回述する。
「や、やばかったぁ〜」
もう高校生の品川銀一、もとい横島が息を荒げていた。
「どうだった?横島」
何処から現われたのか、タマモである。
「あぁ、・・なんか、なんだな。有難うなタマモ」
「うん」
そして二人は分かれた。
《タマモ様、どうやらオーナーは御理解したようです。どうなるのでしょうか?》
バンダナを拾った美神を確認した人工幽霊壱号である。
「さぁ、明日わかるさ」
では、次の日。
「お、おはよう御座います・・・」
横島のびびる挨拶の返答はバンダナを見せた事であった。
「げっ!・・か、堪忍や美神さん。もうしないさかいに・・・」
おおいに泡を食う横島に美神は鬼のような形相で大平手をぶちかます。
「堪忍やァ〜!」
今にも殺されそうな危機感が急に和らいだあと、ぽんと横島の頭をたたいて、
「ま、これだけで許してあげる、バンダナは反すわ。急な仕事がはいったわよ、ほら早く準備して!」
「は、はい」
二人は即、現場へと向かったと言う。
美神は誰にも聞こえない声でいったと言う。もっとも人工幽霊壱号は耳にした。
「はやくああなってね」
でも、その頃には美神もきっと素敵な女性になっているだろう、と人工幽霊壱号は1人思っている。
「私もそう思うわ」
タマモも同感であり、
「オキヌちゃんにはわるけど、似合いすぎる二人よね」
《それには御答えできませんが、否定はいたしません》
「あんたもやさしいね」
タマモ、心からの言葉であろう。

-FIN-

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