ザ・グレート・展開予測ショー

小竜姫


投稿者名:NT【C】
投稿日時:(01/ 6/24)

不意に聞こえた小竜姫の声に辺りをきょろきょろ見渡す鬼門。
だが、どこにもそれらしい人影は見当たらない。
「小竜姫様、何処に!?」
『テレパシーで話しかけてるのよ』
「あ!『・・・・・なーるほど!』
『さっきはあんな事言ってごめんなさいね』
「・・・・・・!」
『い、いえ本当の事ですから我らは別に・・・・』
小竜姫に二人の様子は見えなかったが、沈んだ声調から二人の落胆ぶりが容易に想像できた。
『くす・・・』
小竜姫は微笑すると、
『実はね、あれは敵を欺く作戦だったのよ。本当は重要な任務があなた達にあります』
『重要な任務!?』
テレパシーにも拘わらず鬼門の声が上ずる。
よっぽど【重要】と【任務】という単語に期するものがあったのだろう。
『ええ。これから戦う敵は私と同等以上の力を持っているわ。おそらく私は勝てないと思う』
『ほうほう。・・・・・・・・え”!?な、何を言ってるのです!?』
平然と戦う前から敗北宣言してみせる小竜姫に疑問を隠せない鬼門。
だが、テレパシーで伝わってくる声は、いつもの穏やかな小竜姫の口調そのものであった。
『言った通りよ。そして分かってると思うけど、敵は殿下を狙っているわ。そこであなた達にお願いしたいの』
『ま、まさか・・・殿下を連れて逃げろ・・・・・・と?』
『・・・・その通り』
『そんなっ!!』
『大丈夫。やられそうになったらドラゴンに変化してでも時間は稼ぐわ。・・・その間に天界へ逃げて。敵もそこまでは追って来れないはずだから』
『何をバカな事をっ!!我らは小竜姫様の・・・!!』
『殿下は絶対に守らなければならないの!あなた達だって分かってるでしょう?』
『・・・・・・・・・・』
『殿下をお願いね』
『・・・・・・・・御意』
『ふふ・・・・・・・ありがとう。殿下はまだ入浴中だから、後のことは頼むわね』
そこでテレパシーは途切れた。
「小竜姫様・・・・・・・」
鬼門の二人には小竜姫の最後の言葉がひどく遠くに聞こえた気がした。
そう、一瞬ではあるが小竜姫に2度と会えなくなるのではないかという錯覚に陥ったのである。
「何やらたいへんな事になってきたな、左の」
「そうじゃな。でも、わしらに今できることは殿下の身をお守りすることだけじゃ!ゆくぞ、右の!」
「何じゃ左の、五日振りの便通はもういいのか?」
「おぬしこそ、さっきの腹痛はどこへ行ったのじゃ?」
「ふふ・・・・・・ふはははははっ!!」
お互いの顔を見合ってどちらともなく笑い出した。
「ゆくぞっ!!」×2
ぼん・・・
こうして駕籠担ぎの足軽に変装した二人は槍を片手にえっさほいさと一目散に大浴場へ駆け出していった。

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