ザ・グレート・展開予測ショー

囚われの


投稿者名:NT【C】
投稿日時:(01/ 6/24)

「またデジャブーランドに行けるとは・・・余もツイておるのう♪」
少し熱めの湯の中で満面の笑みで天井を見上げる童子の姿があった。
「ふふふっ♪明日はどの服着ていこうかな〜♪」
一方、小竜姫も満更でもない様子で鼻歌混じりにダヴを片手に明日の計画を頭の中で綿密にシミュレートさせていた。
(美神さん達は、あの格好で似合うって言ってくれたけど・・・・・・・・どうしようかな・・・・・)
カラン
「あっ・・・」
思わず手からダヴが滑り落ちた。
「・・・・・・・ダヴ、買い溜めしておこうかしら・・・・・・」
小判1枚でダヴが何個買えるのか、途方も無い計算をしつつ床に転がったダヴに腕をのばす。
「よっ・・・・・・と・・・・・・」
ゾクッ!!
「えっ!!?」
不意に小竜姫が顔を上げた。
その表情が一変みるみる険しくなっていく。
「な・・・何て霊圧なのっ!?」
青ざめた顔で立ち尽くす小竜姫の体が本人の意志に相反して小刻みに震え出す。
「ん?・・・どうかしたか、小竜姫?」
立ち昇る湯気の奥から童子の弾んだ声が響いてくる。
「あ・・・・」
小竜姫は言いかけて思わず口を噤んだ。
(・・・・・まさか殿下を狙う魔物!?)
「い、いえ、あの・・・・・・私、先に上がって夕飯の仕度してきますので・・・・殿下はもうしばらく湯に浸かっていてください・・・・・」
小竜姫はなるたけ平静を装ったつもりだったが、誰が聞いてもその声はいつもの彼女のものではなかった。
だが、明日のことで舞い上がっている童子がその変化に気づくはずも無い。
「ん?ああ、分かった。明日までにちゃんと疲れを取っておくのだな!」
気が利く家臣じゃ、と感心しながら童子は再び湯の中に潜ってしまった。
「・・・・ええ、明日に備えて体を休めてください」
湯気越しの童子の満面の笑顔を想像しながら小竜姫は強張った表情で浴室のドアに手を掛けた。
そして、直に稽古着に着替えた小竜姫は、装具をはめ神剣を腰に装着すると厳しい顔つきで浴場を後にした。
「強力な霊気・・・・・・・メドーサの比じゃないわ・・・・・・!」
額の汗が頬を伝い床に滴り落ちてゆく。
「厄介ね・・・・・・・・」
武闘場へ歩き出す自分の足が鉛のように重く感じられる小竜姫であった。


『門をくぐる者 汝一切の望みを捨てよ     管理人』
「・・・何だこれ?」
「む!?」×2
すたっ!
頭上からの声に鬼門'sが見上げる前に声の主は着地して翼を畳みながらこちらに歩み寄っていた。
「・・・・何ヤツじゃ?」
体中から膨大な霊気を発するこの男に鬼門が恐る恐る尋ねる。
「よう、俺っちは霧生。遥々南から用があってやってきた。」
まるで知り合いのように気さくに話し掛けてくる霧生。
「・・・修行者ではないな!?」
「まあな。・・・・・ここに、竜王の子供がいるんだろ?会わせてくれ。」
霧生の瞳に僅かな殺気が宿る。
「・・・・・だ、駄目じゃ!お主からは何やら憎しみの念が感じられる。・・・・・即刻立ち去れい・・・・・!」
いつものように威勢良く言い放っているつもりの鬼門だったが、額からは止めど無く冷や汗が流れていた。
「・・・・・死にたくねーだろ?言うこと聞いとけよ・・・・・・」
静かにそう語る霧生の両腕が背中に取り付けられた2本の長剣へ伸びていく。
「くっ!!・・・・ワシらをなめおって!!」
ぐぉおおっ!!
鬼門の雄たけびに呼応するように側に置かれている二つの胴体が轟音を上げて動き出した、が・・・・・次の瞬間、ニ体とも腹を抑えながらガクリと膝をついた。
「ぐ・・・す、すまん。左の、突然腹が下ったようだ。あ・・・あとはおぬしにまかせるっ!」
「なんのっ!わしも五日ぶりに便意をも要したところじゃ。この若造とはおぬしが相手してやってくれいっ!」
「いや、おぬしこそ・・・」
「いやいやいや・・・・」
「ったく・・・・・・」
そんな二人の珍問答を見ていた霧生が呆れ顔で口を開いた。
「お前ら俺っちと戦う気あんのか?」
「バ、バカにするな・・・!貴様など、この腹痛が無ければ・・・・イタタタッ!!」
「そうじゃ!わしだって便所に行ってスッキリすれば貴様など!!しかし、背を向けたらやられる故それもかなわんっ!む、無念なりっ!!」
「あのなあ・・・・・・・んじゃ、黙って門開けろよ?」
「い、いや。それもかなわんから困っているのだ・・・・・」
「ぁああっ!?」
ギンッ!!
「びくうっ!!??」
ぎらつかせた眼で迫ってくる霧生に鬼門'sは己の最後を悟らざるを得なかった。
と、その時―――
「鬼門、その者を中に通してあげなさい」
少女の溌剌とした声が三人の頭上に響き渡った。
「ん?」
つられるように霧生の視線が声のした門の中へ向けられる。
「小竜姫さまっ!!(ほっ・・)」×2
鬼門はと言えば苦痛に歪んでいた顔色がみるみる晴れやかになっていく。
「鬼門、聞こえなかったの?その者を通しなさい」
「し、しかし小竜姫様!我らの任務はここを死守すること・・・・」
「あなた達じゃ歯が立ちません。あとは、私にまかせて」
「申し訳ありませんっ!!く・・・なんと我らの不甲斐ないことか・・・!」
さも口惜しそうに嘆く鬼門だったが、内心胸を撫で下ろしていたことは言うまでもない。
「気にしなくていいわ。・・・初めから当てにしてないから」
ガーン!!!!!
「・・・・・・・・・わ、わしらって一体・・・・・」
そんな深く落ち込む鬼門の二人を敵である霧生が哀れんだ瞳で慰める。
「・・・・・・・挫けるなよ」
「黙れっ!!敵に同情されとうないわっ!!」
ギギギ・・・・
その鬼門の悲痛な叫びに呼応するように軋んだ門が音を立てて開かれていった。
「ふん、貴様なんぞ我らが小竜姫様の前では赤子同然じゃ!さっさとやられてこいっ!グス・・・」
「へ〜、いい勝負ができそうだな・・・・・・」
霧生は不適な笑いを浮かべながらゆっくりと門の中へ消えていった。


「く、わしらなんて・・・わしらなんて・・・・!!」
門外では、依然鬼門が悲しみにうちひしがれていた。
『鬼門、聞こえる?』
「・・・・・小竜姫様?」

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