ザ・グレート・展開予測ショー

ワショクヤの日々(四)後始末編<前半>


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 6/11)

 余りにも異質なー『トクイリョウリ』ー
 その凶悪なインパクトを目にし、半ば強制的に私の意識は飛んでいた。 視界が闇に閉ざされる。
 しかしそれもほんの一瞬。
 呪縛から解き放たれた私の脳が、今の状況を分析し始めた。
 私の数多い長所の中に、異常事態への素早い適応、その事態を打破する為なら迅速な対処が可能というものがある。 それはGSという職業に、霊力と共に必ず求められる能力だ。
 私はその能力を使い、まずは事態の鍵を握るであろう二つの存在への分析を始めた。

 ーギヤマンー
 余り詳しくは無いが、がラスの古い言い方だとは解っている。
 恐らく・・・いや間違い無く、食べ物等に用いられる名称では無い。 断じて無い。

ー坤鳴院小百合ー
 第一印象は和服の似合う清楚な感じのする美人。
 あの『店主』さんの奥さんとしてはまとも過ぎると思った。
 正直・・・今その印象を支える事が出来る筈の根拠は風穴だらけでスカスカだ。 というかこちらも断じて無い。

 判断する材料は少ない・・・が、それでも私は最良の答えを見つけた。 ・・・というより今はこれしか術は無い。

(・・・・・・逃げよう・・・・・・)



ーワショクヤの日々(災日)後始末編<前半>ー



 私はまず、疾風の如く更衣室へと向かった。
『美神さん!?』
 後ろで驚きの声が二つ。 しかし今それに応える余裕は無い。
 更衣室にたどり着いた私は中に入ってドアを閉める。 カギをかけると、瞬く間に着物を脱ぎ、来た時の衣服を身につけた。
「・・・よし!」
 必要最低限の荷物を手にし、問題が無いと判断した私は雷光の如く、『彼女』の元に向かった。
「おキヌちゃんーーー!!!」
「え・・・わっ! 美神さ・・・!?」
 私は有無を言わさずに、『ここに残しておきたく無いもの』の中でも一番大事な『彼女』の手を掴んだ。
 丁稚は元から『あれ』だし、シロはその弟子。 タマモは半分ここの関係者だ。
(てゆーか・・・もう少しここの事詳しく聞いとくべきだったわね・・・)
 そんな僅かな後悔を昨日の・・・過ぎ去りし日の過去のものとすべく、私は戸を開いた。 そこには大きく広がる自由で正常な世界がある。
(よし! このまま・・・)
 私はその世界へ還るべく一歩踏み出す。 しかし二歩進む事は出来なかった。
「どこに行くんです!?」
 ラグビーの経験でもあるのかと思うくらい、見事なタックルで彼女に捕まった。
「もう開店したんです! 朝説明したとおり、私とタマモさん、それにおキヌさんの三人が調理しますから美神さんには接客とレジをお願いしたいと・・・」
「離せっ! 離して!」
「そんな! 困ります! 美神さんがそろばんなんか嫌だとおっしゃるから倉庫からわざわざレジを出したんですよ!?」
 私は答えずに、しがみつく彼女を懸命にひきはがそうとする。
「・・・分かりました! でもせめてどこに行くのかおっしゃって下さいっ!」
 本音を込めてー、言った。
「事務所! その後は保健所に決まってるでしょーが!」
 小百合の眼が驚愕一色に染まる。
「そんな! うちに保健所のお世話になる様なやましい事なんてありませんっ!」
「ガラスを得意料理! なんつー店のどこに・・・」
「誤解です!!」
 小百合が真摯な眼差しで強く言い放った。 
「・・・・・・」
 私は暴れるのを止めた。 話を聞く事にする。
「ギヤマンは中に砕いたガラスを模した秘伝の具を入れた、れっきとしたおまんじゅうです!」
 小百合の迫力に、一瞬呑まれる。
「もっとも・・・時折本物の砕いたガラスを混ぜちゃう時もありますが・・・」
 頭を掻きむしった。 
「はーなーせー!」
 全力を出して振りほどこうとする。 それでも小百合は離れない。 吸い付いているかの様だ。
(一向に離れない! すっぽんかこの女は!?) 
 もがく私に意を決したかの様に彼女は・・・
『報酬割り増しにします!』
『オッケー!』
 反射的に・・・そう答えていた・・・おキヌちゃんの眼差しが痛い・・・
「良かった! あ、ギヤマンは海外の支店ではガラスは使いませんから安心して下さい! 向こうでは自動車の・・・」

(・・・選択ミスだ・・・)

 私は頭を抱えた。

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