ザ・グレート・展開予測ショー

ワシュクヤの日々(四)後編


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 6/10)

 カッ!
『ひゃっ! もうっ! 最悪!』
 突然の雷雨に、傘を持たずにいた買い物袋を提げた女性が慌てて雨宿り出来る場所を求め、駆けて行く。
 ・・・ゴロゴロゴロ・・・
 既にずぶ濡れになりながらも、懸命に走る女性はとある事務所の前を横切って、そのまま駆け去る。
「・・・はぁー」
 その事務所の一室に居る、何故かひびの入ったペンを握る一人の女性がやたらと疲れたようなため息をついた。
(・・・こうもりじゃあるまいし・・・)
 まだ午後三時過ぎとはいえ、厚い雲に太陽の光が完全に遮られている為・・・辺りは薄暗くなっていて、明かり無しでは文字を書くのが辛くなっている。
「やれやれ・・・」
 嘆息しつつ、女性が椅子から立ち上がろうとすると、それに合わせるかの様に部屋に明かりが灯された。
「・・・サンキュ! 今度いろいろ補修したげるからね!」
 明かりを灯してくれた『事務所の番人』に礼を言い、彼女は改めて椅子に座り、早速ペンを走らせる。

「・・・そこで彼女が壁に掛けた『モノ』・・・それは・・・」

 そこで・・・何故かペンが止まる。

「・・・・・・」

 ー『彼女』はため息をついたー



ーワショクヤの日々(災日)後編ー



 この店の主の妻であり、今回の依頼人でもある彼女ー・・・小百合はやたらと張り切っていた。
「よーし・・・私もタマモさんに負けない様、頑張りますね!」
 先程までと比べ、やたらと元気な小百合に美神が素朴な疑問をぶつける。
「たいした自信だけど・・・何を・・・」
「あ、いけない!」
 突然、何かに気づいた様子で、厨房の方へと駆け出す。
「・・・・・・?」
「? どうしたんでしょう?」
「さあ・・・あ!」
 美神がやや離れた場所にいるアシスタントの少年に向かい、声をかける。
「横島君、あんたここにいるといろんな意味でやばいから宣伝に行ってきて。 シロ連れて」
 ぶすっとしながら、横島が頷く。
「・・・吹っ飛ばされるのも嫌ですし・・・分かりました」
 シロが尻尾を振って、横島に飛びつく。
「先生っ! そうと決まれば早速行くでござるっ!」
「お、おい、引っ張る・・・だああぁぁぁ・・・」
 爆走するシロに引きずられ、横島は姿を消した。
「やれやれ・・・」
「ふふ・・・」

 呆れ顔の美神とクスクスと微笑むおキヌ。 やがて息をきらせて、小百合が戻って来た。

「はぁ・・・はぁ・・・お待たせしました!」
「あ・・・うん・・・」
 適当に返事を返し、何やら携えている小百合の右手に視線を注ぐ。 それに気づいた小百合がニコッと微笑んだ。
「ふふ、この板にこの店で働く皆の得意料理の名前が彫っててあるんです」
「へぇー(・・・あの親父ならキツネうどんね・・・)」
 小百合がお品書きが並ぶ壁際へと向かう。
「よっと・・・ふぅ・・・」
 背伸びして、お品書きに『得意料理』を加える。
(どれど・・・れーーーー!!!?)
 好奇心から『ソレ』をのぞき込んだ美神が硬直した。
『ーーーーーーー!!?』
 後ろで眺めていたおキヌも凍りつく。
『な、な・・・!』
 小百合が振り返って微笑んだ。

『私・・・おまんじゅうが得意料理なんです!』 
 ニコニコと微笑む小百合。 しかし美神とおキヌの視線はある一点に注がれていた。

 その一点とは・・・


 ー坤鳴院小百合ー

 ー得意料理・ギヤマンー


「? どうしたんです?」

『・・・・・・』

「あ! ・・・意地悪して、それは和菓子! って言うのは無しですよ」 

『そーいう問題じゃなーーーーーーーいっっっ!!!!!』


 その頃店主は・・・
「っかしーなぁ・・・どこやった?」
 宣伝のチラシに紛れて、一緒にばらまいてしまったとも知らずに・・・
「あれー?」
『・・・コン?』
・・・探し続けていた。

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