ザ・グレート・展開予測ショー

逆シンデレラ物語前半 (魔法使いタマモ編)


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 6/10)

梅雨が去り、本格的な夏が来た。夕日もあかあかと燃えているように見える。
「はぁ〜、折角の二人きりだっつーのに、金だって少しは有るのによ」
窓辺に肘を付き、大きなため息を付く横島である。
休日改正法により3日間の休日が出来たのに加え、六道女学校の休校日を加え、オキヌちゃんは4日間の休みとなり、
「じゃあ、義父さんのところへちょっともどりますね〜」
意気揚揚として、地元へ戻っていった。
「じゃあ、ついでという訳では御座らぬが、拙者も村へ顔を出すで御座る」
と、上野駅で二人を見送った美神と横島である。
「ちょっと、二人っきりって私をわすれてんじゃないの?」
怒るでもなく、丁度通りかかったタマモだ。
「あぁ、お前かぁ・・はぁあぁ」
別段、横島なんぞに興味の無いタマモだが、元気の塊のような奴が元気がないとない光景は見ていて良い物でないらしい。
「お前に言ってもしょうがないけどさ、美神さんとなーんの進展も無いじゃん」
「ふーん」
「今日は冥子さんに強引につれられて映画鑑賞だと」
つれてってくれてもいいのに、と聞こえない声で呟く。
相変わらずだなと、表情のタマモである。暇だったので話でもすっかと、口を開く。
「あのさぁ、美神さんってどっちかって言えば、甘えさせてくれるような年上の方が似合ってると思うけど」
「あん?」
くってかかるとは思ってもみなかったタマモの反応である。
「彼女っていっつもつっかかってくるけど、本性は寂しがりやだとおもうけどなぁ」
「ふーん、お前も女を見る目はあるんだな」
「女としては、万年ロンリーボーイの横島に言われたくないけどなぁ」
「余計な御世話じゃ」
再度外に向かって大きなため息を付てから、
「いやさ、あの美神さんが俺の親父にだけはたった一回みただけでデートOKしたんだ」
「へぇ、そんな事があったんだ」
はて、と少し考える素振りをしてから、
「そういや横島、あんた金が少しあるって言ってたな」
「あぁ、前の仕事では俺とオキヌちゃんだけでいってな。依頼主さんが太っ腹で特別ボーナスもらったんだ」
「そか・・物は相談だけどさ。キツネうどん奢ってくれたら、協力してもいいぞ」
「協力って?」
「私はキツネの眷属、で横島だって少なからず霊力はあるんだから・・・」
ひそひそと耳打をするタマモで、
「おぉ、ナイスなアイディア!奢ったる、奢ったる!・・あ、でもあの店は高すぎるぜ」
なんでも殺生石に祈りを捧げている店でべらぼうに高いキツネうどんを出す店があるのだそうだ。
「あそこじゃなくてもいいわよ、近くに讃岐うどんメインでやる店がオープンしたんだ」
「OK!んじゃ行こうか」
そこで、タマモと横島はその店に向かう。中々繁盛を見せていたが、二人分の席が丁度あった。
「らっしゃい!おやボウズ彼女連れかい?」
威勢の良い店員の第一声に、
「ううん、ちがうわよ」
「あぁ、彼女じゃなくて、仕事の仲間さ」
横島もタマモにだけは、煩悩を見せない。万一そんな事をしたら、美神以上の恐い思いをするであろうと本能的に悟っているのだ。
「そぉかい。でも若い子が来てくれると、ウチも華やかになるねぇ、何たのむ?」
「きつねうどん!」
「んー、んじゃつきみうどん」
すぐに注文の品はやってきて、二人は会話するでもない。
「あら、美味しい」
タマモがもっとも輝いた瞬間かもしれない。
込み合いそうな気配を察知した二人は一服といっても高校生とキツネでは煙草は吸わぬだろうが、するでもなく御勘定を済ます。
「またどうぞ」
「えぇ、是非、美味しかったわ」
一旦、事務所に戻る。
「さて、とまだ美神さんは戻ってないようね。じゃあやるわよ」
「でもよぉ大丈夫なのかよ、あとでへんな傷とかは・・」
「問題無いわ。最も霊力は使うから、そっちの疲労はあるけど、霊刃刀をめいっぱい使い続けた程度ね」
「解った。じゃあ頼むよ」
「えぇ、じゃあこれを頭にのせて」
横島に葉っぱを頭に乗せるように指示すると、呪詛を唱え始める。
『#$%&%*-+?@l・・・大人になぁれ!』
ぼんと、爆発音の後、煙につつまれた横島である。
「ケホケホ、おいおい、本当に大丈夫・・!!」
「そのぐらいの煙で情けない事言わないの。ほら自分の姿、鏡で見てみな」
「おぉお!」
どうみても高校生でない容姿の自分だ。
「当然たけど成功ね。あら、あんたなかなかな中年振りじゃないの」
タマモ、変化の応用で横島に歳を取らした格好に替えたのだ。スーツ姿が良く似合う年齢だ。
「そうそう、その歳で車を持ってないってのも変だから・・」
今度はミニカーに呪詛をふきかける。タマモ自身車はどれも一緒に思うだろうが、
選んだ車がフランスのプジョー、オールドスタイルである。
「何処と無く、かぼちゃに似てたからね。あと免許書だっけ、これもオマケ」
「でもよぉ、俺運転なんて・・」
「大丈夫よ。姿形だけじゃなくて能力も平均的な中年男性クラスにしといたわ」
「そうか!ありがとう、タマモ君、ほぉ洒落た車だな」
物腰が落ちついている。これがあの横島かと思うぐらいにである。
「ふむ、人工幽霊1号。美神さんは今何処にいるのだね?」
突然呼ばれた人工幽霊1号も驚きを隠せなかったのか、
《は、はい・・えと、現在は映画館の近くのの、きっ喫茶店にいらっしゃる御様子です》
呂律がしっかりしていない。
「有難う1号、じゃあタマモ君、行って来るよ」
「ちょっと、まちなって、先ずバンダナは取らないと」
「そうだったな。忠告感謝するよ」
おいおい、そこまでかわるのかよ、というのは喉で止めて、
「あとな、大人になれる時間は亥刻(いのこく)末までだからな」
「亥の刻?」
《現在の夜9時から11時までで御座います、末と言う事ですので10:30までが限界かと》
「ふむ。普通は12時になる鐘の音というのが常套文句だが」
「私は日本の妖怪よ、欧州の御伽噺じゃないんだから」
「それもそうだ。では時間にだけは気を付けよう。有難う」
そういってミニカーを改良した車を走らせていった。
「タマモ君・・だって、あいつ中年のほうが絶対モテルな。そう思うだろ?」
《はい、正直私もそう感じます》
「気になるわね。面白そうだから、影からみていこうかな?」
飛行を始め様とした時に、
《タマモ様。御二方の御様子を見に行かれるのですね》
「うん!こんな面白そうな事、滅多にないからね」
《あの・・その・・》
「あんたも来る?でもどうやって」
《私は機械になら憑依出来ます故、御手数ですが、何か機械でも携帯頂けたらと》
「じゃあね。ウォークマンを持ってくわ」
《有難う御座います》
そんなふたりの企みも知らず、横島は上手に車を運転していた。
「しかし、どうやって美神さんと接触しようか」
現在は夜7:00を過ぎようとしている時間、所謂『大人の時間』という帯に入っていた。

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