ザ・グレート・展開予測ショー

帰り道


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 6/ 9)

 それは何時のことだったろう。
 私が学校に行き始めてしばらくした頃だったと思う。
 クラスメートとも仲良くなり、学校が楽しみになってきたあの頃。
 
 それは一文字さんに付き合ってその頃話題だったアイスクリーム(いたりあんじぇえらーと、とか言うらしい)のお店にいった日のこと。
 
 それから一文字さんとわかれて、うちに帰るはずだったんだけど、その頃の私はまだあまり道を知らなくてよく分からない路地に入ってしまって。
 
 携帯とかもっていればよかったんだけど、ああいうものは苦手で、あまり持ち歩いてなかったのね。で、その日も携帯もピッチも持ってなくて、途方に暮れてた。
 で、くよくよしてても仕方ないからある程度当たりをつけて歩き出したんだけど、そのとき、その日の朝見た天気予報では快晴だったはずなのに、なぜか突然のにわか雨にみまわれてね。
 で、とりあえず雨宿りできそうなところを探してたら、丁度人気の無い洋館があってそこの玄関で雨宿りをさせてもらうことにしたのよ。

 最初はドアの前にいたんだけど、雨足が強くなってきてもうこのままじゃ塗れちゃうな、て思ったとき。
 そうしたらね なぜかドアが開いたのよ、ぎぎぃって。
 最初は先客がいたのかと思ったけど中にはには誰もいないの。でもそんなことより目を引いたのは玄関フロアの広さ。たぶん100畳以上あったと思う。映画でみた事あるような立派な佇まいでね。ほこりとかは結構すごかったけど。

 今になって思えばあれはたぶん呼ばれたんだと思う。だってどう考えても不自然だもの。
 
 で、わたしはちょこっと好奇心って言うのかな、沸いちゃって、少し中を探検してみようと思ったのよ。まるで子供みたいよね。
 で、中に入ってまず真正面に見えたのが、たぶん明治ぐらいの人なんだろうけど、古風な感じの貴婦人画。
 古家のはずなのにやけに色あせてなくて、というよりかなり生々しい魅力があったの。
 いつの間にか私は雨のこともすっかり忘れてその絵に見入ってたわ。
 そうしたらね。

「その絵がお気に入りですかな、お嬢さん」
「きゃぁ」
いきなり後ろから声かけられて、思わず立ちすくんじゃったのよ。
 ほんと、全然気配が無かったのよ。
 で、おそるおそる振り返ってみると、そこには40代後半ぐらいの黒のスーツに蝶ネクタイ姿の男の人が立ってるのよ。
「いやぁ、驚かせてしまったようで。すいません」
普通、勝手に家に上がりこまれたら怒ったりするもんでしょ、でもその人全然怒らないで
それどころか笑顔で話し掛けてくるのよ。
 まるで私がここにいるのがさも当然のようにね。
 
「すいません、雨宿りをさせてもらおうかとおもって、つい・・・」
「いや良いんですよ。女の子が雨に濡れて風邪を引いたら大変だ。・・・しかし本格的に降り始めたみたいですね。まぁよろしかったら雨が落ち着くまでゆっくりしていきなさい、正直なはなし、ちょっと汚いですがね」
「・・・いえ、お構いなく」
「ははは、正直なお嬢さんだ」  
 
それからその男の人に案内されて一階の応接間らしいところに通してもらってね。そこは結構片付けられれて、結構きれいになってた。窓にオカーテンがかかっててちょっと薄暗い感じだったけど、まぁ雨宿りさせてもらってるんだから、と思って気にしないようにしたの。
 
「ここは一応掃除してありますから、雨が止むまでソファーに腰をかけてゆっくりしてるといい。そうだ、紅茶でも入れましょうか。オレンジペコがまだ残っていたはずだから」

男の人はそういって部屋からでていったのよ。するとそこに今度はね。

「おねぇちゃん、だれ?」

今度は小袖姿の女の子が部屋に入ってきたのよ。たぶん10歳ぐらいかな。かわいらしい女の子だった。

「あ、ちょっと雨宿りさせてもらってるのよ。雨が止んだらかえるから」
「ふぅん」
「お嬢ちゃんは、ここのお家の子?」
「うーん、まぁそんなところかな。ねぇ、あそぼーよ。私一人で退屈なんだ」
「お友達いないの?」
「いないよ、私ずぅーと一人だったから。でももう一人じゃないのよ。お母様が帰ってくるんだって」
「へェ。良かったわね」
「うん」

そのあと、女の子が持ってた毛糸を使ってしばらく綾取りをして遊んでであげてたのよ。
 で、20分ぐらいしたところかな。おじさん遅いなぁ、なんてちょっと心配になってきた頃だったかしら。丁度雨が止み始めてね。
「あめ、止んできたね」
丁度カーテンの隙間から空模様が見えたのよ。女の子が寂しそうに私の顔を見てた。
「じゃぁ、もう行かなくちゃ。ごめんね、あんまり遊んであげられなくって。おとうさんかな、遅いねぇ。御礼言わなくっちゃなんだけど」
「あぁ、おじさんには私から言っておくから。ありがとぉおねぇちゃん、遊んでくれて」
「いいの?分かったわ。じゃあわたし帰るね」
「うん・・・ねぇ、また今度遊んでくれる?」
「・・・ええ、またね」
私も大人になった、って思ったわ。こうやって子供を騙すのかなって。又なんて、あるか分からないにね。

 私はそのまま応接間をでて玄関ホールのほうへ戻っていったの。結局おじさんには会わないまま、悪いなぁと思ったけどそのまま玄関のドアを開けたのよ。

 でね、ふともう一度貴婦人画を見たらね。
 私には笑みをたたえているように見えたのよ。まるで子供に会えた母親のような喜び満ちた笑みをね。それと女の子の声。おかぁ様って言ってたと思う。
 
 女の子の姿はなかったのよ。でも声はしたのよたしかにね。
 不思議に思いながらも玄関を出た瞬間。その場の空気ががらっと変わったのよ。
 雨上がりとは思えないほどからっとした空気にね。
 で、振り返ってみたら・・・そこに洋館なんて無かったの。いやあるにはあるけどもう壊されたあとだったの。あれは何だったのか、今でも分からない。
 だって幽霊とかの仕業なら、分かるはずでしょ・・・。
 まるでそこだけ別の時間枠の世界だったような感じ、っていえば分かるかな。
 なにシロちゃん、その信じられないって顔は。あなたが何か面白い話ないって聞いたんでしょ。
 でもあの女の子とおかあさんはきっとあの日会うことが出来たんだと思う。
 なんかそう思わない?
  

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