ザ・グレート・展開予測ショー

ワショクヤの日々(二)


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 6/ 2)

「い・や!」
 はっきりと、私はそう拒絶した。
「・・・そ、そんなっー!?」
 大きく目を見開いた彼女の手から来客用のカップがゆっくりと離れていく。 やがてカップは床に引き寄せられ、いくつかに散らばった。
「そんな・・・そんな・・・」
「美神さん・・・」
 断られた事で『ショック』を受け、くずれおちた彼女を有能なアシスタントにして今年のGS試験の数少ない合格者でもある氷室キヌー・・・おキヌちゃんが優しく支える。

 そんな『彼女』を見つめながらー・・・私はついこの前に知らされた、GS試験で起きた騒動に対する後始末・・・その顛末を思い出した。



ーワショクヤの日々(当日)ー



 前回のGS試験は大混乱のまま幕を閉じ、後日、改めて試験を行うにもパニックになった観客達によって悪評が流れた為ー・・・それまでに合格を決めた者のみ資格を取得する事となった。 そして付け加えて・・・おキヌちゃんよりも先に資格を取得した二人ー・・・タイガーと雪之丞は合格を取り消された。 雪之丞の方は何か逃げまどう一般人に、暴行を加えたという事実が浮上したらしく、以前のブラックリストの事もあわせて今回の合格は見送られた。
 タイガーに関しては・・・まあちらりとお偉いさんにニューヨークの件を小耳に挟む様仕向けたりはしたがー・・・それだけである。 
 他の合格者は皆、僅差ながらも彼女より遅れて合格したらしく・・・何はともあれ数々の幸運と、偶然。 彼女の実力。 それらによってこの事務所に二人目の主席が誕生したわけだ。
 
 どーでもいい事だが・・・少年についても一つ。
 幸いにも実際少年を目にしたのが顔見知りの連中ばかりだった為・・・そして観客に直接的な悲劇が出なかった事もあって、当事者のおキヌちゃんの懇願が通り、ブラックリストは免れ三年間の試験資格剥奪、に落ち着いた。
 アイテムの類は全部私が押収・・・もとい、私に譲渡された。
 使えるアイテムは二、三品程だが、使い勝手の良いものもあり、おキヌちゃんも無事に合格。 主席も取れて万事めでたし。

 エミが恩知らずなどとわめいていたり、ここの丁稚が生傷が絶えない日々を送ってたりするのはー・・・些細な問題である。

 そんな事を考えていると、彼女が声をかけてきた。
「美神さん・・・何とか力になってあげられませんか?」
 こちらが回想している間、おキヌちゃんはずっとー・・・二十歳前後と思える和服姿の女性を励ましていたらしく、その間に彼女の事情を把握した様だ。
 しかし・・・
「駄目! 仕事の依頼って事で話聞いたら仕事は仕事でも彼女の店・・・しかもあの和食屋の手伝いっつーじゃない! うちは何でも屋じゃ無いの!!」
 バン!
 勢い良く扉を開け、獣(一人はケダモノ)三人組が飛び込んで来た。
「美神さん! それは犯罪っすよ! 折角こんな美人・・・しかも和服姿のねーちゃんが来てくれたのに仕事を引き受けないんすか!? そんなの例え神が許してもー・・・」
「学校はどうした貴様ーーーーー!!!!」
 トガシャーン!
「ぉ・・・おキヌちゃんだって・・・休んでるじゃ・・・」
「おキヌちゃんは大事を取っての自宅療養! あんたはさぼりでしょーが!」
「美神さん!」
 いつもと違い聞き慣れぬ強い口調でー・・・おキヌちゃんが話しかけて来た。 
「な、何?」
「今小百合さん本当に大変らしいんです! 旦那さんがここのところキツネうどんにばかり取り組んで他の料理をないがしろにした所為で他のお料理つくる人がみんな店を出てっちゃって・・・旦那さんもキツネうどんを追求する為に・・・」
 横で話を聞いていた少女、タマモが顔をしかめた。
「だ、旦那ーーーーーー!!!?」
 煩悩男が絶叫したが、それはさておき。 和服の女性、小百合が口を開いた。
「いえ・・・やはり急なうえ、身勝手ですね・・・断られて当然です」
 顔を上げ、弱々しく微笑む。
「申し訳ありません・・・では・・・」
「・・・待って!」
 小百合が静かに退室しようとするのを、美神が引き留めた。
「あー・・・特別に! この時期暇なのよね・・・一週間程度なら・・・」
「美神さん・・・!」
「では・・・!」
 そっぽを向いて、答える。
「勘違いしないでよ! 料金は・・・」
「はい! ちゃんとお支払します!」
 そう言って、小百合は帰っていった。
「あーまったく! 面倒な事引き受けちゃった!」
「ふふ・・・」

 悪びれる美神と微笑むおキヌ。 何やら腕まくりしているタマモとため息をつく相棒のシロ。 燃え尽きた煩悩男。

(ま、たまにはこーいうのも悪くないかもね・・・)

 この選択を死ぬ程悔いる事になるとも知らずー・・・美神は微笑んだ。

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