ザ・グレート・展開予測ショー

ワショクヤの日々


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 5/31)

 
 そこは『和食屋』だった。

 外も古風、中に至っては機械に一切頼らず、支払い時の計算も『そろばん』を使い、店員は原則として和服着用。 
 
 一見して何の変哲も無い、正当派の日本料理専門店。

 その店を一人の男が後にする。

「あなた待って! 待って下さいっ!」

 一人の女が男の後を追う。 

「・・・・・・」
 
 男の足が止まった。

「どうしても、ですか? 私を一人にして・・・」
 
 男は悲しげに目を伏せる女に、振り向きもせずに答えた。

「すまねぇな・・・俺は自分の可能性を信じてぇんだ・・・」
「そんな・・・私一人でどうしろと・・・」

 男はうなだれる女に一枚の紙きれを差し出した。

「そこに今の俺よりもはるかに凄腕の・・・俺が目指す『職人』が居る・・・そいつに力を貸してもらえ」
「・・・・・・」

「じゃあな!」

 男は最後まで振り替えらずに駆け去った。

「あなた・・・」

 女はしばらくの間、男の姿が見えなくなっても同じ場所にたたずんでいた。 しばらくして男から手渡された紙きれをに目を通す。 そこには粗野な文体で、こう書きなぐられていた。

「美神令子除霊事務所・・・」



ーワショクヤの日々(前日)ー



 その日、彼女はマンションの自室で朝食をとり、身支度を整えると余った時間を潰す為にテレビに目を向けた。
 電源を入れると映ったのは朝の占いだった。 今日一日の運勢を星座別に水晶で占うものである。
「・・・・・・」
 オカルトの本家である彼女には、正直子供の遊び程度のものなのだが・・・元々暇潰し。 チャンネルを替えるのも面倒なので、彼女はぼんやりとそれを眺めていた。
 やがて彼女の星座の番。 運勢を占う為に画面の中の女性が水晶玉に手をかざした。 しばらくそうして水晶を覗きこむ。
「あら大変! 今日の貴方・・・女性の方で髪が長くてハイヒールを履いた方・・・それと露出の高い服を着たマンションに一人暮らしの方! 最っっっ悪です!! 特に仕事運! 悪い事は申しませんから今日のところは仕事を休んで下さい! でないと・・・」
 プチ!
 朝から気分を害された彼女は、うさ晴らしにアシスタントの青年をぶん殴ろうなどと、不穏な考えを巡らしながら愛車の待つ駐車場へと向かった。

「おはよーっす・・・」
 事務所に来てみると、何故か既にずたぼろの姿の、バンダナを巻いた青年の出迎えが待っていた。
「どーしたのそれ!?」
 バキィ!
 もんどりうって、『青年』が倒れる。
「な・・・何するんすかーーーーーーーーー!!!!?」
 すかさず起き上がった『彼』が(当たり前だが)文句をつけてくる。 既に殴ったところも、その前の傷も塞がっていた。
「何って・・・朝ちょこっと嫌な事があってね。 ムカムカして事務所に来たらー・・・学校行ってる筈の的がいたから」
「グレますよ・・・」
 目が本気だった。
「や、やーねー! いつもの事じゃない! それよりあんた学校は・・・?」
 ごまかす為、話題を逸らした彼女をしばし不機嫌な眼差しで見据え、一つため息をついて青年が口を開いた。
「忘れ物を取りに来たんすよ・・・そしたら早起きして掃除してるおキヌちゃんと、手伝ってるタマモに・・・」
「・・・会ったとこを吹っ飛ばされたのね・・・」
「死ぬかと思いましたよ・・・二人いたからいつもの二倍の火力で攻撃を・・・ちくしょーーーー!! あのガ・・・!」

『あの・・・』

 静かで、落ち着いた声が割り込んできた。

「? 何・・・」
「何でしょうか!? お美しい方!」

 突然迫って来た煩悩男にしばらく目を白黒させ、和服姿の女性はゆっくりと口を開いた。

『美神令子除霊事務所は・・・どちらでしょうか?』

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