ザ・グレート・展開予測ショー

The Ballade of Tadao & Meiko (エピローグ4)


投稿者名:ギャグレキスト後藤
投稿日時:(01/ 5/31)

『なぁーんちゃって!』

・・・・と、折りたたまれていた手紙の2枚目にいきなりこう書かれていた。

シビビン、シビビン、シビビンビィーーン!
と、おキヌは思わずシビビンをする。
その態度に、美神は思わず驚いてたずねる。
その場に、ちょうど帰ってきたおキヌの旦那さんの輝彦も突っ込むのであった。

「・・・どうしたの、おキヌちゃんてば。」
「パンツ見えるぞ!」

と。

「いえ、横島さん・・・いや六道忠夫さんが、相変わらずのたち悪い文面で。」
「どこどこ?」

美神は、一応の旦那様である雪之丞と一緒に手紙に見入る。
まじまじと見ると、冒頭にある
『なぁーんちゃって!』
の言葉だけが、冥子の字でデカデカと書かれていた。
前回、「エピローグ3」の分のシャレのつもりか・・・・!??!!?!

その枚数目だけの用紙を手にやると、雪之丞はクシャクシャと丸めようとした。
だが、令子がそれを止める。

「雪之丞、アンタ人からの手紙をそうやって丸めようとするの?」

意外な令子の冷静ぶりである。
実際に、例の「名刺折り曲げ事件」のことをループ装置で覗き、良く承知したのだろう。
そのため、雪之丞は逆らおうとはしなかった。
いや、令子には、一応は不届きな理由で籍を入れたことに後ろめたさを感じていたのである。

「キヌ、とりあえず続きを読んでくれるかい?」

と、私の旦那の声。
その声のあまりに、以前婚約を認めてしまったキヌの表情。
うれしさの顔が満ちている。

あたしは、取り敢えず3枚目から続きを読む。
三枚目は、冥子と結婚した元・横島忠夫からのお手紙である。



『西條キヌ & 輝彦  さま
  美神令子 & 雪之丞  さま

   拝啓、春寒しだいに緩むころ、貴店ますますご発展のこととお慶び申し上げます。
  毎々格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。

  と、堅苦しいことは無しにしたいのですが、定義に従いまして、書かせていただきます。
  私・六道忠夫はイギリスのロンドン、リヴァプールはストロベリーフィールズに新居の豪邸を建てました。
  そこの地に、生涯生きて遺骨を埋めたいと思うのです。
  冥子のことが、手離せなくなってしまったのです。
  離せば、此方では即犯罪でつかまりかねませんので。

   今回、筆をとりましたのはそのようなことではありません。
  私は此方のイギリスはロンドンにあります、伍道大学という大学の叙霊科の設立にとどまらず、
  教授推薦も受け、遠慮なく其方へ進むことになりました。
  実はそこで、私に提案する旨を協会を通して申し出られました。
  イギリスのGS協会では、被害が大きすぎて大幅な責任と修正を受けねばならなかったからです。
  話によりますと、イギリスのGS協会でもインターンシップ制を導入し始め、留学生という形で処遇を決める方針のようです。
  ですので、私のほうで何方かをまずは紹介していきたいのですが、あなた方も来る気はございませんでしょうか。
  お在りのようでしたら、唐巣和宏 様 から詳しいお話を伺えますように、お伝えしておきます。
  詳しい伍道大学の資料も、彼の手元にありますので。
  ・・・・・・・・・・・』



ここまで読んで、美神にはハッと気が付いて、おキヌに手紙を読むのをやめさせる。
唐巣神父。
ついこの前、お会いしたばかりである。
しかも、美神の父親・公彦とのことで。
彼が、伍道大学の教授に誘われて、娘を置いて外国へ行けるかということだ。
当然、母親の美知恵は父親の行動に賛成していたが、令子にしては、日本を完全に離れることが嫌だった。
エミとは、いつかは決着をつけたい。
そんな思いが、令子にはある。
でも他にも、高嶋と離れ離れになってむずがゆくなる事とかも極たまにある。
忠夫とも、時々は会いたいが、彼は向こうで遺骨を埋めると・・・・

唐巣は、行けるなら行った方がいいとやさしく甘い言葉を投げかける。
前世・メフィストのことで、相談を唐巣にぶちまけたこともある。
このときは、唐巣も苦笑いしていたが、そんなことは忘れたまえとやさしく令子を愛弟子として抱いた。

「先生・・・!」
そう呟いて、唐巣に泣きついたこともあった。
令子だって、本心では横島のことを好きだと言えずに照れ隠しにとにかくぶっ放すのだが・・・。
あの頃、突如、横島が冥子を連れて来て真剣な顔で、

 
『俺、冥子の事・・・・改めて、本心を知りました。
  冥子さんは、美神さんのこと、口で「好き」とは言っていても、式神のように扱うばかりでしたよね。
  でもね、それはただの憧れだったんです。
  俺は、文殊で冥子の純な優しさの部分に触れてみたんですが・・・・美神さんは、誤解しているだけだと。
  それも、「本当に頼れるのか」と冥子は疑って、「令子ちゃんにただ助けてほしい」とばかりに、近寄るだけでした。
  冥子の本心は、「追いて来れる人がほしい」という言葉です。
  それを、言葉を知らないがため、言えないだけです。
  だから、この俺が追いて行って教えてあげねばならないのです。
  わかって貰えますか?
  美神さんはそういう態度から、逃げているだけなんだ!』


といっていたのを思い出したのだ。
あの時は、私は訳のわからないこと言う横島を思いっきり殴り飛ばし、蹴り飛ばし、神通昆で張り飛ばしたけど、
冥子も、泣きついて横島のことをかばったのである。

   『 あたしの〜〜事〜〜〜〜、姫だって〜〜〜ぇ、ヒック。
     言ってくれた〜〜〜人を〜〜〜〜〜!!!』

   そう言いいながら、冥子は影からプスン・・・と、おぞましい霊気を放出し始めた。
   それは、式神を大放出させる瞬間!!!
   でも、美神も引こうとはしなかった。

   「一応は、あたしの友達なのよっ。そんな人に手を出した横島なんか・・・」

   と言いながら、思いっきり尚も横島をはたく。
   その光景を見た冥子は、『姫』と言ってくれていた横島に対して、好きになっていたのに気が付かず、

   「あたしの〜〜〜・・・・大事な人ぉ〜〜〜・・・・いじめて〜〜〜〜!!!!」

   と言ってあまりに単純な怒りのあまり、全12匹の式神をいっせいに放出した。
   その怒りは、すさまじいものであった。
   人口幽霊一号すらも倒されかけていたぐらいだった。
   またも、メドーサ編に続けて家を破壊されては住む家どころじゃなくなると感じた美神は、負けを認めたのである。


唐巣本人も、もとは悪魔のような人物だったので、前世のことを持ちかけられたときには、何ともいえなかった。
苦しみは、弟子にも伝染するものなのか・・・・
そんなことを思い出していたが、ころあいを見計らって、続きを読むキヌ。



『  私は、とにかく今は冥子の本心がつかめます。
    何が言いたいのか、そこまで言えて、冷静に行動ができるようにした。
    それは、私の文殊や、冥子の母親、ましては12神将のためではないのです。
    私自身の本来の資質が、その精神を鍛えるのに糧になったのです。
    なんと言っても、冥子との初仕事は、貴女、美神さんがナイトメアに取り付かれたとき。
    おキヌも気が付きませんでしたでしょうが、あの時鋭く「コケ」という突っ込みをしてくれたのも冥子なんです。
    6巻をよく見てください。
    自分自身の「なんとなく」という意思が「本能」として動くように捕らえられて初めて成長するものなのです。

    ですが、やはり貴女方、キヌたちと離れるのは辛いことなんです。
    忘れられません。
    せめて、この近所に留学という形で来てくれるだけでもいいですので、ぜひあってお話しましょう。
酒やウィスキーを交えて。
西條 様 とも、数十年前は良くもめましたけど、今となってはいい思い出ですんで、是非とも
皆さんも此方へ来て見ませんでしょうか。
    
    それではお待ちしております。

                                    かしこ

   2020年2月18日』


おキヌは読み終わると、ホッと表情を元に戻す。
もう一度会いたい。
そんな気持ちがおキヌの心に優しく伝わる。
嬉しい。
あまりに嬉しかった。

しかも、伍道大学は、六道女学園の姉妹校として向こうにある。
久しぶりに、弓さんたちとも会える。
こんなに嬉しくなるのは、忠夫がこの美神叙霊事務所を去る前のこと以来なのだ。

そんなとき、人口幽霊壱号が意外な言葉を発する。
『美神オーナー、早く手紙の続きを読んでください!』
・・・・と。

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