ザ・グレート・展開予測ショー

ミットナイト・ダンディ(その18)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 5/30)

『笑止也!矮小な存在が群れ集ったところで我にはかなわず!』
悪霊が、全身から触手を出してのたうたせながら、美神たちを怒鳴りつける。
「矮小だって?冗談じゃないわよ!あんたみたいなくそ悪霊は私一人で十分!」
卑下されてプライドが傷ついたのか、神通棍を構え言い返す美神。
『ほざくな!』
悪霊がそう言葉を吐き返すと同時に数十の黒色の触手が美神を襲う。
美神は神通棍に霊気を通わすと、鞭状に変化したそれで触手を叩き落すがいきなり追いつかない。
「きゃぁぁ!!」
七本目を叩き落したところで足元から来た触手に足を絡め取られた。
 悪霊がにやりと笑い、そのまま宙高く持ち上げる。
『弱すぎるぞ、女』
「叩き付けるつもり?冗談じゃないわよ!」
胸元の聖霊石を掴み投げつけようと振りかぶると別の触手に腕をつかまれる。
わずか数秒で美神は一気に追い詰められてしまった。
(ちょっと、並の魔族より全然強いじゃない)
内心冷や汗ものである。
『我となれ』
悪霊の暗く沈んだ最終宣告。
 更に高く振り上げ、一気に叩きつけんとした、
「ざけんな、これは俺のもんだ!」
と、同時に横島が美神を捕らえていた触手をたたき切り、そのまま悪霊に斬撃を見舞わせる。
 不意を付かれた為か、あっさりと真っ二つに切り裂かれた。
「きゃぁぁぁ!」
「あ、美神さんが!」
触手から解放されたはいいが自由落下の最中になってしまったのだ。

どさぁ。

たたきつけられる、と思った瞬間美神の体を何か暖かいものが抱えている。
「大丈夫ですか、美神さん」
「助かったわ、ピート」
『おのれ!また貴様か・・・』
「ぐぅ・・」
悪霊の怨言がそれだけで横島を半歩退かせた。
 それだけまだ悪霊の霊力は高いということか。
「横島君」
「油断しすぎっすよ!」
後ろからの声にやや声を荒げて答える横島。 
「令子、横島、、ピートも退くわけ!!!」
そこにエミから怒鳴り声が飛ぶ。
「美神さん」
ややほうけた感じの美神の腕を横島が引いて、悪霊の前から退いた。
「霊体撃滅破!」
瞬間エミの手からすさまじい霊波が発せられ、悪霊を包み込む。
 そこに更に西条が銀の散弾を込めたショットガンを乱打し、唐巣が聖水を投げつけた。
「こいつはおまけよ!」
更に美神がとどめとばかりに聖霊石を投げつける。
『ぐぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
再生しきれない内に攻撃を受けてしまったせいか、予想以上の大ダメージを受けているようだった。
 悪霊の体からまるでガスが抜けるように雑霊が噴出していく。
「皆、帰っていくんですね」
水野が、その光景を眺めながらつぶやいた。

「一人一人の力ではかなわなくとも仲間が集まればこれだけの力が発揮できるのだ」
唐巣のつぶやきが、みんなの耳にも届く。
「これでようやく終わりか」
横島がペタンのしりもちをついた。おそらく霊力を使い果たしてしまったんだろう。
 額から出る脂汗がその疲労度を物語っていた。
「皆、ご苦労だったね」
唐巣が今度はちゃんと聞こえるように声をかける。
「こんなにしんどいんなら断るんだった」
「まぁまぁ横島さん。かっこよかったですよ」
「そおか?」
「ダメよおキヌちゃん、横島君にそんなこと言っちゃ、間に受けちゃうじゃない」
美神が茶化すように言うと、おキヌちゃんは本気ですよ、と笑って答えた。
 と。
  
『よくも・・・我を・・・おのれ・・・・』
身を凍らすような冷たい言葉が、そこにいた全員の背筋を凍らせた。
「まだ居やがったのか・・」
西条がジャスティスを構える。
 そこには、先の5分の1にも満たない黒い塊があった。確かに恐ろしいほどの霊威を放っているが、そこにはもう悪意はほとんど感じられなかった。
「いや、その必要は無い」
その西条を遮って、唐巣が悪霊に近づいてく。
「・・・父と子と聖霊の名のもとに、この哀れなる魂の真の姿を表したまえ・・・」
唐巣が呪文を唱えると、悪霊の体を淡い光が包み込んだ。
「汝の名を明かせ。すべてを父なる神にあかし、懺悔するのだ」
『・・・我の名は幸村。豊臣に仕え、あまたの戦を戦い抜き、主君亡き後もその子に仕え仇なすものを悉く(ことごとく)屠ってきた。
 しかし敵将家康のかん計にはまり主君を失った我はそれでもむざむざと生き残り、この血に逃げ延び機をうかがっておった・・・しかし裏切りと再びのかん計のため、家来を失い、命も失ってもうた。
 しかし、我が主君の仇を打ち、恨みを晴らすまでは天に帰すもままならん・・・』 
その言葉はどこまでも済んで、、人間臭く、それでいてあまりにむなしかった。 

 続く。
もうちょいです。



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