黒い呪いと天使の笛の音(35)
投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 5/29)
サアァァ・・・
ゆっくりとー美神の髪が広がっていく。
ビュンッー!!
「・・・・・・」
愛用の武器・・・『神通鞭』をその手にした美神は、全身から霊力の光を放ちながら、一歩踏み出した。
『ウゥゥゥ・・・』
光に包まれた彼女が一歩、こちらへ近づいたのに対し、彼女の姿を模した『影』も同じく一歩、後ずさる。
『ウ・・・! ゥゥ・・・』
動物が危険を本能的に察知するかの如く、影は自分と同じ姿の目の前の女性からじりじり距離をとっていく。 そんな中、『彼女』は名を呼ばれた。
「令子!」
やや強ばった感のある、その声に名を呼ばれた『彼女』が同時にふりかえった。
ー黒い呪いと天使の笛の音(35)ー
「・・・・・・」
『・・・・・・』
光と影の美神に同時に注視された彼女はほんの僅か後退すると咳払いをし・・・ややかすれた声を出す。
「奥の手があるってのは予想つくけど、あんた一人で・・・こら!」
全てを聞かぬ内に美神が前へと進む。 キレてはいないがもはや今の美神を止められる術は無いとエミは判断した。
「フゥ・・・これで何だかんだ言って美味しいとこ取りか・・・
こっちは損するばっかなワケね・・・」
その事については彼女以上に割にあわない思いをしている『弟子』が二名ほどいるのだが・・・『師』にそれらを考慮する様な考えがあろう筈も無かった。 またも床に赤い文字が刻まれ、虎が慟哭する。 ついでに神父がやりきれない思いを抱きながらも十字を切る。
「お、小笠原さんっ!!」
突如、エミの耳に大音量の声が飛ぶ。 声の方へと振り向く間も無く誰かに腕を取られて揺さぶられる。
「ち・・・ちょっ・・・!」
「い、いくら美神さんでもあんなの一気に消滅させるなんて! どう見たって10メートルはあるよ!」
一息に言った『誰か』はそこで言葉を止めた。 そこでエミは声をかけたのが六道女学院の一文字魔理だと気づく。 一文字の後ろには弓、少し離れて雪之丞もいた。 後ろの二人も同じ様な疑問を持っているらしく、じっとこちらを見ている。 恐らく美神の気に圧倒されて下がったのだろう。 そんな事をしばらく考えていると・・・乱暴な感じの声が飛んできた。
「おい! 人の話聞いてんのか!?」
「ちょっと雪之丞さんっ!」
何やら後ろで二人がもめそうな所に、エミが口を開いた。
「聞いてるわよ・・・仕方無いでしょ。 あたし達はまた突っ走っちゃった誰かさんが失敗した時のフォローを考えなきゃいけないワケ」
「で、でも・・・」
雪之丞と弓はそれで納得した様だが・・・一文字はくいさがった。 一文字の話を聞きながらも、エミは気がかりな事を考えはじめた。 この呪いをかけた者の事・・・それに対して感じたいくつかの疑問を。
(・・・まずこの呪いをかけた奴があの・・・)
エミはチラリと、美神の暴走を防ぐ為に身をひそませた少年が居る方を向く。
(あの子に接点を持った事からして・・・この試験を昨日から見てたのは確か・・・呪いの手ほどきもその時ね)
更にエミは考える。
(目的は不明・・・あの子にただ味方しただけ・・・ってわけ無いし・・・保留ね・・・それより問題はー・・・)
そこでエミは息をつき、美神のいる方へ目を向けた。
「・・・そろそろクライマックスね」
そこには退路を壁に遮られ追い詰められた影と、更に霊力を強く放ちはじめた美神がいる。 場はまさに一触即発・・・という雰囲気だった。 皆固唾をのんで見守っている。 エミは美神に目を向けた。
「どうやら霊薬は効果ばっちりだったみたいねー・・・ちゃんと霊力も一時増加しているし、何とかなるかもね」
そこで今度は影の美神に目を向ける。
(術を破られたらそれまで抵抗していた相手の霊力を元に再起動・・・あの大きさは令子がぶちのめしまくったからなワケね・・・そして術を二段構えに改良するにはよほど精通してるか、あるいは・・・)
『ククク・・・この術は元々私の作品ですからねぇ・・・さて』
水晶に映る美神の姿に、『彼』は邪悪な笑みを浮かべながら視線を注ぐ。
『いよいよですね・・・』
水晶の中の美神が、鞭をふるった。
今までの
コメント:
- 「また一話追加・・・言い訳しようも無いです・・・」 (AS)
- おもいろいから、追加うれしいです (とび)
- とびさん、コメント有難うございます。 (AS)
- 僕も追加は大歓迎ですよ。
冷静な分析を怠らないエミ。「紫外線バカ女」の汚名(言い掛かり)返上ですね。うーん、イカす。 (Iholi)
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