ザ・グレート・展開予測ショー

極楽大作戦 de 時代劇 第弐幕  巻之六


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 5/25)

最初に現れたのは小姓の真友康則である。
序でに、小姓の由来は戦国期に武将に付き従う男の色子であるが、江戸時代に下ると、純に殿様の御傍使えの仕事をこなす。
もっとも、戦国期と同じ仕事に従事する事もしばしばあったであろうが、少なくとも美神藩、藩主美神公彦にはそっちのケは無い。
「真友康則、参上致しました」
それから直ぐに、
「武芸指南方、恐山同じく、して何か御用ですかな?毒田薫栖(Drカオス)様」
家老職の薫栖と直に話すような機会もなかった二人だ。致し方無い事ではあるが。
「まずはこちらの二人を紹介しよう。我が藩の御用達蝋燭問屋の茂留田に、鑑定人の須狩じゃ」
二人に対して、丁寧に挨拶する真友に対して、恐山は己の地位、武士としての最低限の礼を持った。
「へぇ、実は次席家老様の借約金の御返済で伺いまして。なんでもおなくなりになったとかで、惜しい方を」
見え透いた御世辞である。
「で、こちらに有る努留(ヌル)様の遺留品を頂戴する確約が御座いまして」
「それでワシ等に品定めの手伝いとな?まぁ構わぬがな、しかし、こちらにいる真友殿に
力仕事は」
侮蔑した眼差しで真友を睨むが、当の本人はしれっとした顔だ。
「それで。品定めの鑑定人にはこちらの」
須狩を手で指して、
「この須狩、女だてらに目利きは群を抜いております。よって失礼では御座いますが、御力添えを」
そんなの俺一人で十分だと恐山は言うが、
「力だけではありまぬ、人を二人欲しいと言う訳で」
須狩が口を出す。
「二人で仲良くやれば良い。良い機会じゃ、二人とも眼福を養うが良い。済まぬが茂留田とやら、ワシは仕事があるのでこれで」
謁見の間を出て行く毒田薫栖にはいと、真友康則、恐山の二人は言うが、反発しあっているのが毒田薫栖にも見て取れた。
(これは、人選をあやまったかのぉ?)
さもありなん。
「では申し訳ございませぬが、次席家老様の御部屋に御案内を」
道案内なども、小姓の仕事である。
「此方へどうぞ」
と真友が率先して案内を始める。廊下を出た時に」
「お、真友殿では御座らぬか。御久しぶりで御座る」
ご城代に戻ってきたおしろ(シロ)におたま(タマモ)にばったりと出くわした。
「これはおたまさん、実はしかじかで・・」
事の起こりを説明する。
「そうですか。折角ですので私も御一緒しましょう」
「よいので御座るか?おたま」
「まぁ、いいんじゃん?今帰っても仕事は無さそうだし、よろしいですかな?須狩様」
正直、迷惑そうな顔を見せたが、
「まぁ、いいかと思います、是非腰元の御二方にも」
と出た。
おたまと真友は以前から息が合っている。おそらくはおたまの目に恐山は映っていない。
「おろ?恐山殿。これは珍しい光景でござるな」
後にひかえたおしろが恐山に気付く。
「まぁ。御家老様に頼まれた・・仕事・・故でござる」
この男、少々女に弱いと見た。
「こちらで御座います」
と中を見ると、目に付くのは、そこかしこにおいてある壷である。
「これは、伊万里の、こっちは萩のです。渋皮の文様が良い。いや〜良い仕事してますなぁ」
ぱちぱちと算盤(そろばん)を弾く。
「努留はタコの化け物だった故、壷が好きなので御座ろうか?」
おしろが小声でおたまに囁くが、
「こんな壷を集めて何がたのしいのでしょうね?真友様」
「そうですよねぇ。こんなに多くあっても」
と、二人の世界に、という所か。
「そうかのぉ、俺には次席様はなかなかの眼力をお持ちだったと思うがな」
真友への反発心か。
熱心に鑑定する須狩に茂留田が近付いて、小声で話しかける。
「おい、そんな物より、あの品は無いのか?」
「壷の中になにか有るかと思いましたが、ないようね。でもアレを見て」
床の間をあごでしゃくって茂留田の視線をしむける。
「ほほぉ、アレがあったか。何は言っても風炉努留(プロフェッサー・ヌル)抜かりはないようだな」
と、いう会話のあった後、
「恐山様、あちらにある剣を拝見したいのですが、ご覧になっては如何かと?」
恐山も武芸指南方である。剣鑑定には少々の自信が有る。
「それでは、御言葉に甘えて」
大きな体を床の間まで持っていくと、すいと鯉口を切る。(刀を抜くって事)
すると、
「うがっ!」
大きな叫び声を出し、みなの注目を集める。その次の声は恐山のそれではなかった。
『がはは!馬鹿めこの我を抜くとはな!』
「ど。どうなってるので御座るか?」
『ほぉ。この男の体、我が暴れるに申し分無い。冥土の土産、我は刃にとりつく悪鬼しめさば丸と心得よ!』
ぶんとたったの一振りが凄まじい風音を聞かせる。それに驚いた真友が尻餅を付く。
「痛っ」
と、何処から出たのか、剃刀の刃で手を切る。
「大丈夫ですか?真友様・・真友様?」
おたまが覗きこむと、真友の目も尋常ではない。
『く、くくくく!またしても私を握る物がいたかぁ!』
これも真友の声とは別物である。
「ははぁ!流石は努留様、しめさば丸だけでなく、殺人の剃刀まで御用意なさっていたとは」
「な、何といったでござる!茂留田」
「そういえば、お前等腰元も努留様を殺めた連中だったな。丁度良い。しめさば丸、剃刀こいつ等から始末しろ」
「そう。我々は努留様に魔界の秘儀を教えてもらった同士。だからこんなのも呼べるのよ」
須狩が犬笛に似た物に息を通すと、地面からなにやらが床を壊して姿を現す。
『アチョオォ!』
「これは、蛾硫羽唾(ガルーダ)といってね。努留様が考案なさった魔物よ」
「さぁ!しめさば丸、殺人の剃刀、蛾硫羽唾おおいに暴れろ!」
口上が長かったのか、それとも油断があったのか、おしろとおたまは無我夢中ではあったが、廊下に出る事に成功していた。

ご城代での異変は町には轟いていない。当然、普請の寅吉も例外でない。
「さぁ〜、あと少しじゃけ〜、みんながんばるじゃぁ〜」
『へい!』
副棟梁の寅吉。案外と左官やら大工と言った連中には尊敬されているようだ。
と、其処へ。
「よくやってるな。みんな」
「これはこれは棟梁、御視察ですかいノー?」
「うん、よくやってるな。これで『机組』も鼻がたかいよ」
この棟梁と呼ばれた人物、なんと女である。
「そういっていただけると、こっちも気合がはいりますけん。愛子様」
通称、机の愛子、机組の大工連中を束ねる長である。
「そうそう。こちらに納める予定の手机、今日持ってきたよ」
この愛子、とんかちを持って櫓に立つ事もあるが、机細工は美神藩きっての腕前である。

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