黒い呪いと天使の笛の音(33)
投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 5/25)
己が僅かでも罪悪と感じる事は、根が正直な人間程、周囲に気取られやすい。 大抵ささいなきっかけから。 しかし・・・激しく動揺した為とはいえ・・・こんな例は稀である。
「すっ! すいません! もう美神さんひ山彦の文珠で悪さしようなんてしませんから・・・あれ?」
こうして自分の口から口走る・・・しかもここまで解りやすい説明をつけて吐露する者に待つのは・・・とりあえず。
(・・・後でたっぷり聞かせてもらうわ、拷問つきで・・・)
ーーーと、『彼女』はかすかに残った理性でもって、後にやるべき事を思い浮かべた。 しかし今やるべき事は別にある。
「極楽・・・」
彼女は友達を苦しめている『元凶』に向かい、吠えた。
「・・・いや! 地獄に叩き落としてあげる!!!」
ー黒い呪いと天使の笛の音(33)ー
次の瞬間からーーー連鎖して、いくつかの出来事が起こった。
「うおおぉっ!!」
まずは・・・完全に理性の鎖を断ち切った彼女が、商売仇から手渡された使い慣れた武器を掴むわ否や、姿を見せた『少年』へと突進・・・しかけた事。 ちなみにその場の彼女以外の他の面々は、たった一人を除いて全員おののいている。
ともかく次に起こった事・・・突進しかけた彼女の耳に、そっと何かが触れた。 壊れものを扱うかのごとく、そっと触れた何かに、彼女が気づいた次の瞬間。
『わ!!!!!!!!!』
ゆっくりと・・・彼女は崩れおちた。
「まったく・・・人が『苦労して』手渡したもので殺人なんてやられちゃたまんないワケ!」
ため息ひとつ洩らして、色黒の女性、小笠原エミはは携えていた拡声器を床に置き、自分が追跡に出した連中の所へ向かう。
「やれやれ・・・で・・・ブツは?」
「はい」
狐の少女、タマモが『笛』を差し出す。 エミは満足げにそれを受け取った。
「ご苦労さん・・・さて、そろそろあの『影』には退場してもらいますか」
今も苦しむ、呪いをうけた少女の元へと・・・エミは駆け寄った。 そっと・・・その手に『笛』を握らす。
「・・・・・・」
そんな様子を・・・少年は複雑な思いで見つめていた。
『なるほどねー、恨むのも無理ないわね・・・』
『お前なんかに! ・・・あいつらと仲よしの奴に何が・・・』
『分かるわよ。 ・・・あたしなんか金目当てに除霊されかかったもの』
「・・・・・・」
廃ビルでのその会話。 自分の過ちに気づかせてくれた狐の少女との会話の一部を思い浮かべて・・・自分が呪った少女の苦しげな顔をじっと見つめていると、変化が起こった。
シュウゥゥ・・・
「か、影が消える・・・?」
誰かが呟いたその一言を裏付けるかの様に、影がゆっくりと溶けていく。 漆黒が薄れていく。
「ふぅ・・・」
少女、おキヌを看護していた、彼女の姉が額の汗を拭い・・・
その場の全員が安堵の表情を浮かべる。 今だ伏せっている『彼女』が気がついた時に起こるであろう騒動に、神父だけは渋面のままだったが・・・とりあえず収拾はついた。
・・・かに見えた。
『ふふふ・・・』
遠く離れた場所・・・としか分からない禍禍しい妖気に満ち溢れた部屋で・・・『彼』は水晶に語りかけた。 邪悪な笑みを浮かべて。 やがて水晶に何かが映しだされていく。
『さあ・・・見せてもらいましょう・・・現代のGS達の実力を・・・あれからどれ程進歩したのか・・・たっぷりとね・・・』
ズウン!
その言葉と共にー・・・水晶が影で埋めつくされた。
今までの
コメント:
- 「続きです・・・再開しても同じですが、楽しんでもらえたら嬉しいです」 (AS)
- 美神さん、本気で怒ってます。はっきり恐いです。本当に恐いです。
その後の御仕置きで横島クンが生きている事を願います。 (トンプソン)
- トンプさん、感想有難うございます。 30を越えたこの話も次で一段落・・・出来上がった時に読んでもらえたら嬉しいです。(・・・はじめての長期のお話・・・破綻させずに続けられて良かった・・・次はこっちもはじめてですが、短めの笑える話をやってみようと思います) (AS)
- 考えてみれば、タマモも、殺されかけたのですよね。 (トビ)
- いよいよ親玉始動の予感! 横島の安否はその後と云う事で(笑)。 (Iholi)
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