ザ・グレート・展開予測ショー

黒い呪いと天使の笛の音(32)ー改ー


投稿者名:AS
投稿日時:(01/ 5/24)

 事件発生から二時間・・・陽が傾きはじめた頃に、人気の無い道に数名の男女がたたずんでいた。 (一人は何やらいたる所を焦がして倒れているが)
 その一行の内二人は・・・遠目からは何の(焦げている者を除いて)変哲も無いが、近寄ってみればそのいでたちに誰もが不自然さを感じる・・・そんな姿形をしていた。 その内の一人、シッポつきの少女が率先して声を上げる。
「さて、早速この笛を届けなきゃ」
 そう言うや否や・・・彼女は駆け出した。
「あ、待つでござるよっ」
 もう一人の尻尾つきの少女が、駆け出した方の後を追う。
「・・・・・・」
 それに続き一人の少年も後を追い、やがてその場には誰もいなくなった。
 黒焦げのまま身を起こした『彼』を残して・・・

「・・・どうあっても・・・こんな扱いかい・・・」

 その怨念混じりの声を聞く者は誰も居なかった。



ー黒い呪いと天使の笛の音(32)改ー



 追跡隊が責務を終え、会場へ辿りついたその頃・・・会場での様子は一変していた。
「しつっ・・・こいんだよ!」
 悪態混じりに男が繰り出した一撃が『影』を吹き飛ばす。
(あんな姿してっし・・・うかつに殴れやしねぇ・・・)
 早速復元を始めた影を見据えながら・・・男はかなりの苛立ちを覚えていた。 ぶつぶつと呻く。
「また復元しやがった・・・いつまでこんな事やってなきゃいけねーんだ!?」
 ビュン!
「!?」
 振り返って、怒鳴り散らした男の目に何かが飛び込んで来る。
 スコーン!
 やたらと気持ちのいい音と共に、男の顔面に『何か』が命中した。 ふいをつかれた一撃に、鎧を纏った男がよろめく。
「な・・・何しやがる!?」
 驚きはしたものの、さしてダメージは受けなかった様子で立ち上がると・・・男は『拡声器』を投げつけた色黒の女性に詰めよった。 文句を言おうと口を開いたその時。
 ガシィッ!
「・・・へ?」
 横から伸びて来た手に右腕を掴まれ、一瞬呆然となる。
「ごちゃごちゃ言う暇があったら・・・」
 やがて聞こえてきたその声に、本能的に危険を察知する。
 が・・・遅すぎた。
「・・・とっとと足止めして来んかーーーーーー!!!!」
 その怒号が辺りに響くのを、男は宙を舞いながら耳にした。
 そして・・・とある疑問を浮かべる。
(いつも思うんだが・・・あの細い身体のどこにこんな力があるってん・・・)
 グシャアッ!
 その疑問に対する答えを見つける前に、男は『墜落』した。
 その様子を見て、代わりに影を押さえつけていた金髪の青年が一言。 『師』譲りの渋面で呟く。

「触らぬ美『神』さんにたたりなし・・・」

 金髪の青年の呟きは・・・とある地獄耳の女性以外には届かなかった。 その女性は僅かに口もとをひくつかせたが、そのまま床に座りこんだ。 隣にいる商売仇に話かける。
「苦・・・この霊薬ほんとに効くんでしょーね?」
「さあ」
 にべもない答えが返る。
 その答えにユラリ・・・と、美神が立ち上がった。 それを見た二人の女学生が息を呑む。
「さあ・・・? そんなわけのわからないモン飲ませたっての・・・?」
 美神の全身から、先ほどまでより緩やかながらも・・・殺気が放たれる。 周囲の気温が下がっていく。
「・・・おたくのヘマをフォロー出来る様、人がわざわざ苦労したってのに・・・何か文句があるワケ・・・?」
 ちなみに実際に苦労して、短時間で薬珍堂から会場まで往復したのは別の人物なのだが・・・あっさりとその功績は横取りされた。 少し離れた場所から虎の慟哭が聞こえた様な気がする。
『・・・・・・』
 睨みあう二人からの、凄まじいプレッシャーが周囲にいる全員を脅かす。 神父が静かひ十字を切り、二人の女学生が震えだす。 

 一触即発の、まさにその時。

「ただいまでござるーーー!!!」
「ただいまー」
 帰還を知らせる快活な声と、静かな声が響いた。 その場の全員の視線が集まる。
 そして・・・
「!」
 続いて姿を現したその人物に、一部の者の時間が止まった。
 そして、次の瞬間。
 
 姿を現した『少年』に、怒り心頭の『豹』も・・・再び姿を現した。

 なお・・・

「や、やっとここまで・・・」
『どの面下げて来た! この野郎ーーーーー!!!!』

 もう一人の少年が姿を現した事には・・・

「ーーー!!! すっ! すいませんっ! もう山彦で悪さしようなんて・・・」

(・・・・・・ぅぅ・・・)

 更に苦しそうになった少女を除いて、誰も気がつかなかった。



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